こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

LUPIN THE THIRD FIRST TV『013:タイムマシンに気をつけろ!』ルパンが消えるってよ!

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzu(こうゆづ☆)です。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くという試みの13回目。Secondシーズンに向け、テコ入れがはじまった10作目。そうして、クレジット表記はそのままに…13作目より、大隅・大塚コンビから高畑・宮崎コンビ(Aプロダクション)のディレクションが主流になっていきます。演出の違いをぜひ、お楽しみください。

個人的には、ハードボイルド小説のような渋い味わいの大隅正秋監督の創作は、大好物なのだけど、世間はユニークで痛快なアイデアがひかるコミカル路線を望んだようです。アニメーションには、世相を色濃く反映する作品がたくさん並んでいますね。ルパン三世がアニメになって登場した1970年代…高度経済の成長期のピークを抜けたとはいえ、まだまだ日本が明るい世相を求め、一丸となって盛り上がることを潔しとした時代なのでしょう。

今回のあらすじ…というより、もはやテープ起こし…過去最長です。見どころシーンに重要な会話が多いので、できるだけ忠実に書き起こしています。それでは、本日もルパンとその仲間たちに会いにいってみよ~!

 

第十三話『タイムマシンに気をつけろ!』(1972年1月16日放映 / 脚本:宮田 雪)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子・銭形警部・魔毛狂介 

 

あらすじ(書き起こし・1~13) 

冒頭、赤い車(№.P38-X974)で、山中を1人走行中のルパン。運転の最中、煙草に火をつけたそのとき【キーン】という音が鳴り響き、ルパンの目にライトが飛び込んでくる。思わず、ハンドルをとられるルパン。危機一髪、事故を回避し車をとめる。すると、光の中心にマントを着た人影が。「えぇ?」すぐに車を出て、銃を構えるルパン。「誰だ、お前は!」『魔毛狂介。』「マモウキョウスケ?」『そう。お前に予言を与えにやってきたのだ。』「予言だ?」『ルパン三世、おまえは【4日後】にこの世から消える運命にある。』「あぁ?」『ンフフフフ…忘れるな、あと4日だ。あと4日で、お前の前から森羅万象、ありとあらゆるものが忽然と消え失せる。ウアハハハハ』と笑い、姿を消す。「あぁー?」と、狐につままれた表情のルパン。

  1. とある街の橋で時計を眺め、ため息をつく次元。〈おい遅いぞ、ルパン。予定より10分オーバーだ。何かあったのか?〉車の中でルパンは、次元に【予言】のことを話す。〈なに?4日後にお前が消されるって。〉と次元。〈まったく、よくある話さ。また、どこぞのどっかのシンジケートが、殺し屋を雇ったっていうお粗末よ。全く俺はどうしてこうモテんのかねぇ。ンフフフ…ところで、次元よ。今日の手筈は間違いねぇだろうな。〉〈あぁ、完全だ、間違いねぇ。〉と次元。
    ーーーーー♬ルパンルパンルパンルパンルパンルパン!ーーーーー
  2. 白髪の初老の男が椅子に座っている。その前をせわし気に歩く銭形警部。〈来やせん!〉と、痺れをきらしたように男が叫ぶと〈失礼ですが、ヤツを知らんようですな。ヤツは来ると言ったら必ず来る。一度狙った獲物を途中であきらめたことは絶対にない!〉と銭形。【カランコロン】と時計の振り子が音をたてている。突如、【カシャン!】と音が響きわたる。〈みんな、持ち場を離れるな〉と指示して、銃を片手に駆け出していく銭形警部。そこには、お茶をこぼした女中の姿が。なんだ…という表情をして〈5分すぎた。遅いな、あの野郎…ひょっとして。いやー、そんなはずはない。〉と持ち場に戻る銭形。その後ろ姿を女中が〈ルパンなら、もうとっくにお前さんの前に現れているのよ…〉と見送る。再び、初老の男の前を行ったり来たり落ち着かない銭形警部〈予告しておいて、現れないなんて、そんな馬鹿なことはない。〉と、ブツブツ呟いている。
    • 初老の男:少しは落ち着いたらどうかね、警部。
    • 銭形警部:こいつが落ち着いていられるか!ルパンの野郎、勝手に約束を破りやがって。
    • 初老の男:そんなに残念かね、ルパンが現れないことが。
    • 銭形警部:当たり前だ!俺とルパンは宿命のライバルだ。そいつを忘れてルパンのやつ、オレをコケにしやがった。許せん!絶対にゆるせーん!
    • 初老の男:フン。ではもし、このワシがルパンだったら満足かな。
    • 銭形警部:あ?フヒャヒャヒャヒャヒャヒャアハハハハ。(と、あり得ないといった表情で大笑い。)
    • 初老の男:さっき君が廊下に出たスキに本当の【黄金像】と入れ替わっていたとしたら?ここにいる警官も、全員オレの手下だとしたら?(と、男の声色がルパンの声と変わっていく)
    • 銭形警部:ルパーン!(と同時に、煙幕に包まれる)ルパン、ルパン!
  3. 古城の前に車をとめたルパン。次元と大笑いしながら、黄金像を手に歓喜する。
    • ルパン:ヨォーホホホホ、ウハハハハ。愉快だったな、次元。あの銭形のびっくりした面。お前の【女中姿】も、なかなかイカしたぜぃ。
    • 次元:あぁー、案外べっぴんさんだぜ、この黄金像はよぅ。フハハハハ。(すると、ケースに入った黄金像が目の前から忽然と消える。)おっ、おいルパン!き・き、消えた、消えたよ。
    • ルパン:(ゆっくりと振り返り)えぇっ?なに?消えるなんて、そんな馬鹿なことがあるかい。よく探せぇ次元、きっと、転がったんだよ。(と、車の下をのぞきこむ)
    • 次元:でも、ないぜ。
    • ルパン:ないってことはない。あるよ、あるよ。探せよ、探せぃ。

    そこへ【キーン】という音が響き、例の男〈マモウキョウスケ〉が、光とともに、古城の塔に現れる。同時に、男を振り仰ぐ〈ルパンと次元〉。

    • 魔毛:みたか、ルパン!あらゆるものがお前の目の前から消えてゆく。
    • ルパン:マモウキョウスケ…。
    • 魔毛:これは、ほんの小手調べ。摩毛一族のルパン一族に対する復讐の前奏曲だ。
    • ルパン:復讐?
    • 魔毛:そう、我が魔毛一族が【ルパン13世】によって、滅ぼされたことに対する復讐だよ。
    • ルパン:あぁ、うちの13世がお前さんの一族をね。(と、指折り数える。)13世、13世、13世。なんだ、13世?
    • 魔毛:【2874年3月31日】のことだ。
    • ルパン:【2874年…?】バカ・マヌケ・キチガイウヒョヒョヒョ。おい、次元、ひきあげよう!オレたちはキチガイに構っているほど、ヒマじゃねぇんだよなっ。ウヒョヒョヒョ。
    • 魔毛:信じられんようだな、ルパン。
    • ルパン:当たり前だぃ。ルパン家はな、13代はおろかどころか、4代目だってこのオレが種も仕込んじゃいねぇんだよ。イイ加減にしやがれ。
    • 魔毛:フンッ。魔毛一族の恨み…そのうち、否が応でも知らせてやるぞ。さて、また時間の旅を続けるか。

    しばらく、車を走らせて、ルパンは〈いけねぇ、黄金像のことすっかり忘れてたぜぇ。おい、どうした次元。〉次元は顔をあげて記憶を辿るように〈マモウ、マモウ…。どっかで聞いたことがあるぜぃ。〉と呟く。

  4. アジトに戻ると、片っ端から本をひっくり返す次元。そんな次元にルパンは〈おい、次元、イイ加減にしねぇか。あんなキチガイのことは忘れて、えぇ?〉と言うが、次元は探すのをやめない。〈チェッ、しかたねぇや。今度の仕事はな、お前を外して五ヱ門と二人でやるぜ。おい、五ヱ門、五ヱ門!〉と、部屋をでていく。〈なんだ?〉と返事が聞こえてきたのは書斎。五ヱ門も本を片手に調べている。〈あら、五ヱ門…〉とルパン。〈俺も、確か…マモウキョウスケというのは聞いたことがある。〉と五ヱ門。再び、書斎を出たルパン。〈冗談じゃねぇ。マモウ、マモウって。〉と、リビングの椅子にふんぞり返り〈ルパン13世だの、2千何百年だの、けっ。平成の漫画じゃあるまいし。〉と、眠り込んでしまう。

    『お答えしよう、ルパン。わたしはね、四次元を征服した男なんだよ。見たまえ。このタイムマシンで、過去でも未来でも、わたしは旅行することができるんだ。ンハハハハハハハ。そして見たんだよ。わたしの子孫が君の子孫に殺されるのをね。約900年先の未来だな。信じられんかね。ついでだが言っておこう。わたしの生年月日は、【1932年11月18日】…。』

    〈あぁ…〉と眠りから覚め【1932年11月18日】と、立ち上がったルパン。〈けっ、嫌な夢みたもんだぜ。〉そのとき次元が〈おい、ルパン。みつけたぞ。いいか、よく聞けよ。あぁ魔毛狂介。科学者、集合賞受賞、SF作家、四次元。特に時間と空間の研究に熱中し、1966年発狂。その後を五ヱ門が引き継ぎ〈その後、向精神病院において、地球壊滅の危機を唱え、ノアの方舟のつもりで【タイムマシン】を制作。現在、過去および未来を旅行中。〉と伝える。

    〈で、やつの生年月日は?〉と、ルパン。〈生年月日?うん。出ている。【1932年11月18日】だ。〉と五ヱ門。〈味わいあるじゃねぇか、魔毛狂介さんよ。〉と、ニヤリと笑うルパン。

  5. ルパンは部屋を飛び出し、愛車を走らせ黄金像が消えた【古城】の前で停車する。 

    • ルパン:魔毛狂介、出てこい。ルパン三世がたった今、相手をしてやる。こい!オレは、逃げも隠れもしねぇぜ。出てこい、魔毛!出てこーい!
    • 摩毛:ウアハハハハハハ。なにを焦っているのかね、ルパン君。
    • ルパン:へぇ?オレは別に焦っちゃいないよ。ただな、せっかく挑戦してきたあんたを待たしちゃ悪いと思ってよ。
    • 魔毛:わたしは、君と闘うつもりはない。そんなことは無駄なことだ。考えても見たまえ。わたしが過去へ旅をし君の【祖先を殺す】だけで、君も、君の子孫も、全てがこの地球上から完全に消えるんだ。ウハハッハハハハッ
    • ルパン:オレの【祖先を殺る】だと?
    • 魔毛:そうだ。気の毒だが、君も【3日後】には跡形もなく消える。ンフフフフハハハ(と、タイムマシンへ乗り込む。)

    ルパンは懐から銃を取り出し、タイムマシンに向け発砲するが、無論、あたらない。消えるマシン、魔毛狂介の声だけが響く。

    ンフフ、ンハハハハハ。消えるのだ、ルパン。消えるのだ。この古城のようにな。ンハハハハハ。(すると、目の前の古城が消える。)なぜ、消えたか分かるかね、ルパン。簡単さ。ちょっと過去へ戻ってこの城を作った男を殺したからだよ。フハハハハハ。あと、3日だ。あと、3日だよ。ンハハハ、フハハハハハ。

  6. 再び、アジトのリビングへ。【水槽】の魚がノンビリと泳いでいる。その奥に、五ヱ門、次元、ルパン3人の姿。〈ンフフフフ、ンハハハ。ンフフフ。それでオレの目の前からな、ドロンパーッと、古城が消えちゃったってわけだよ。ギャハハハハ。昔に戻ってな、その城を作ったやつを殺してきたからだとよ。ンフフフフフ。それでね、貴様の祖先を殺してくる。そうすればルパン、貴様はもうこの世に存在しないのだ。グハハハハ。俺の命あと3日だと。ヨホホホホ。まったく、とんだでたらめ野郎だぜ。あの魔毛狂介って野郎は。アハハアヒヒッ。全く昼寝でもしてた方がマシよ。ンフフ…〉と、扉から出ていく。 〈あぁ、だいぶ深刻だな、ルパンのヤツは。〉〈いかんな。〉と次元と五ヱ門。冷や汗を浮かべて、1人、ベッドに手をつきうなだれるルパン。ベットに横たわり、頭を抱える。〈冗談じゃねぇ。アハ、アハハハ。〉と、寝室の扉がふいに開く。すかさず、ナイフを投げるルパン。不二子は、ハッと息をのみ、いつもと様子の違うルパンに気づく。次元と五ヱ門が、魔毛狂介の出現で、ルパンが参っているのだと伝えると、ルパンは怖がってなんかいない!と拗ねる。そうして、不二子を連れて出かけてしまう。

  7. 不二子とやってきたのは競馬場。〈よーし、いいぞ!一気に出ろ!〉すると、ルパンが応援していた6番の馬が、視界から消える。振り向くと、一番後ろの列に魔毛狂介の姿が!冷や汗を浮かべ、恐怖の面持ちのルパン。〈ねぇ、一体どうしたの!さっきまであんなにはしゃいでたクセに。なんかあった?〉と訝しがる不二子。ルパンは、アクセルを踏み込み【スピード100㎞超】で走行する。

    そこへ、前方からトラックが突っ込んでくる。〈あっ!〉と急ぎハンドルを切るルパン。危機一髪、衝突を逃れるが、トラックはガードレールにぶつかり破損。車をとめたルパンは、〈このやろう!なんだって、反対車線に突っ込んできやがったんだ!〉と、トラックに駆け寄る。すると、頭をぶつけ怪我をした男が〈やぁ、知らねぇんですよ。運転してたの、相棒の方なんで。〉と運転席をみる。〈相棒だとふざけるな!この車にはおめぇしか乗っていないじゃないかよ〉とルパン。〈それが、あんたの車と出会うちょっと前に、急に消えちまった。〉という。【キーン】という音と魔毛狂介の笑い声がルパンの脳裏をよぎる。

  8. 教会の前に広がる墓地の横で、膝を抱え込んで座るルパン。木陰から不二子が、心配そうに声をかける。ルパンは〈今度ばかりは、どうしようもないらしい…命は後3日。不二子、結婚してくれ!〉と懇願する。不二子は驚くが、必死のルパンをみて【OK】する。大喜びするルパン。〈このまま教会の牧師に話をつけて、結婚してしまおう〉と、手筈を調える。互いに誓いの言葉をかわし、口づけしようとルパンが不二子を引き寄せた瞬間、ルパンの目の前から不二子が消える。そこには、魔毛狂介の姿が!『甘いぞ、ルパン。峰不二子はうまく騙せても私はそうはいかん。不二子と式をあげれば、なんとかルパンの名前はあの女が継いでくれると考えたんだろうがな。甘い、甘い。』〈クソゥ、もう少しだったのにな。〉と悔しがるルパン。『あの女(コ)は、しばらく過去の世界にいってもらうよ。あと3日、おまえたちルパン一族がこの地上の歴史から消え失せるときまでな。』と魔毛。
  9. 再び、アジトのリビング。【水槽】の魚は、相変わらず元気に泳いでいる。ルパンは、次元と五ヱ門を前に、愛用の【ワルサーP38】を差し出し、形見として託す。顔を見合わせる次元と五ヱ門。〈今頃、魔毛は、タイムマシンで過去に遡り、祖先を殺しに現れる頃だ、もうオレもおしまいだ〉と、水槽の前まで歩いていく。と、突如、ルパンの姿が消える。驚愕する次元と五ヱ門。そして、悲しみにくれる次元。五ヱ門は〈泣くな、次元、俺が必ず敵をとる〉と励ます。すると、消えたはずのルパンが再び次元と五ヱ門の前に現れる。誰が悲しんでくれるか試したくて、隠れてみたという。そして〈二人の会話にヒントを得て、名案を思いついた〉と、ニヤリと笑う。
  10. 教会の鐘ふたたび。リンゴンリンゴン。

    「主よ、私の願いを聞いてください、私はまもなく主のもとにいかねばならぬ身でございます。その前にどうか、魔毛狂介めに今一度会わせてくださいませ。主よ…」と、周りの気配を伺いながら、十字架に向かって祈りを捧げるルパン。すると背後から、魔毛狂介が現れる。

    『おぅ、ルパン。お前がこれほど真面目なクリスチャンとは知らなかったぜ。』ペロリと舌を出すルパン。祈りの姿勢はまだ崩さずに、願いを二つだけ聞いてくれと頼む。そうして、①自分と顔立ちが似てたという祖先【川向こうの治郎吉(アルセーヌルパンの爺さんだった人)】と一緒に消えたい、②もう一度、不二子と会いたいと、懇願する。ルパンが観念したと気をよくした魔毛は『わかったよ。未練な野郎だ。待ってろ、いま連れてくる。』と、タイムマシンに乗り込む。「ンフフフ。バカなやつ。おいっ、次元、五ヱ門。早く!」

  11. 再び、タイムマシンで戻ってきた魔毛は『さぁ、ルパン。女を連れてきてやったぞ。アッ?』 と、目の前には、お城と畑が広がり、百姓が畑を耕している。(♬三味線の音)時代を間違えたと勘違いした魔毛は百姓に『おぅ、ちょっと尋ねたいが、今は一体いつ頃だろうか。』と聞く。百姓の答えは【寛永3年8月】とのこと。そのとき、別の百姓Jが〈おーい、川向こうの治郎吉よ!飯にしよう〉と声をかける。『お前が川向こうの治郎吉というのか?』と確かめる魔毛。百姓は〈オレのことだ。ミレイユ・ルパンって言うめんこい女(こ)と、祝言をあげるので忙しいのだ〉と応える。ルパン一族の祖先だと確信した魔毛は、『かわいそうだが、死んでもらう。』と銃を向ける。そこへ〈どうしたんだ?〉と百姓Jが近づき〈ほぉ、珍しい飛び道具でござるな。〉と、旅人が通りかかる。

  12. 右手に鎌を構えた【治郎吉】と鋤を構えた【百姓J】が、同時に襲い掛かる。そこに、旅人に扮した五ヱ門の【斬鉄剣】がひかり、すれ違いざま、魔毛の銃と衣服を切り裂く。『今は、本当に寛永3年か?』とたずねる魔毛。〈バカこくでねぇ。今は昭和47年でござる〉と、五ヱ門が笠を投げ、同時に変装していたルパンと次元も鬘を脱ぐ。『あぁ、お前たちは!』〈ンフフフ、お揃い。〉と、ルパンはニヤリと笑い、次元と共に、タイムマシンをめがけて走り出す。魔毛は『やめてくれぇ』と後ろから追うが、二人がタイムマシンに乗り込んだのを確認すると、五ヱ門は、外からタイムマシンに一太刀、グルリと一周して真っ二つにする。ルパンと五ヱ門は、鍬でタイムマシンを〈ソレソレ〉と、破壊する。『やめてくれ、やめてくれ、たのむよ。やめ、やめてぇ』と、耳をふさぎ怯える魔毛。その声に振り向き〈魔毛退治じゃ~〉とルパンが発し、一目散に逃げていく魔毛。その姿をルパン・次元・五ヱ門の3人は、肩を組んで笑いながら見送る。

  13. 〈あらー?〉と、目を覚ました不二子。教会の鐘の音が【カランコロン】と聞こえてくる。ウエディングドレスに身を包んだ不二子は〈あたしを愛してるっていったでしょうに〉と、ルパンを引っ張り教会の中へ。〈オイッ、勘弁してくれよ。あれ、冗談、冗談!〉次元は〈あきらめな、ルパン。こいつばかりは魔毛狂介より難しいぞ!〉とちゃかし、五ヱ門と一緒に教会に背を向け歩き出す。〈そんな冷たいこといわないでぇ~〉と、ルパンは、不二子の腕をはらって教会の扉から飛び出してくる。〈オレは、まだ一人でいたいんだ。魔毛狂介消してくれぇ!消して~〉というオチ。おしまい。

 

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◆こうゆづ的*第十三話の№1シーン

第十三話…【13】という数字は、タロットカードでいう死神(ななし)のカードに相当。13話に、ルパンが【消える】と予言するエピソードが登場するのは、偶然なのでしょうか。一族の血を守るために【タイムマシン】を開発し、時空間を自在に行き来するマシンを操る【狂気】を隠そうとしない魔毛という不気味な人物。

魔毛自身が、一族を死へと誘い破滅をもたらす死神なのか。それとも、見事に一族を救い再生を果たす救世主となるのか…果たして?制作側に【13】という数字に対する思い入れや意図がなかったとしても、なんて偶然にして贅沢な展開なのでしょう。冒頭から、一瞬にして様々な妄想を読み手に想起させる仕掛けは、見事!一気に物語の中に引きこまれていきます。

見どころ満載シーンの中で、№1に輝いたのは【次元の男泣き】の場面。それでは、そのシーンから、じっくりどうぞ!

ワルサーP38を形見分けするシーン

  • 五ヱ門:なに?おぬしの形見?
  • ルパン:(銃を差し出し)オレの愛用したワルサーP38 だ。どうか、オレが消えた後も、オレのことは忘れないでくれよな。(顔を見合わせる次元と五ヱ門)ヤツのタイムマシンは、今頃、オレの【ひいひいひいひいひいひい爺さま】のぐらいっとこに現れてるってよ。ンアー、今日で俺もおしまいか!(と、水槽の前まで歩いていくと、ルパンが忽然と消える。)
  • 次元&五ヱ門:あっ!消えた!
  • 次元:オイッ、五ヱ門。おめぇなんだって助けてやらなかったんだよ。(と、五ヱ門の胸ぐらを掴む。)
  • 五ヱ門:お前だって、一体何をしてやったというのだ。
  • 次元:あぁ、ルパン、ルパンよ。(と、テーブルを両手で叩き、突っ伏す。)
  • 五ヱ門:次元、泣くな。この敵はきっと俺がとってやる!
  • 次元:ばかやろう!相手は四次元だぞ!29世紀だぞ。せいぜい江戸時代のおめぇになにができるってんだ。江戸時代で始末がつくなら、ルパンだって自分でなんとかしてたよ。(と、泣く)
  • ルパン:なるほど江戸時代か…へぇ。(と、ルパンの姿が。)イイこと言ってくれるぜ、お二人さん。おかげでオレは名案を思いついちゃった。
  • (驚愕した表情を浮かべて)ルパン…。(次元の頬を涙が伝う。)
  • ルパン:エヘヘヘ。いや、なにね。オレが死んだら誰が悲しんでくれるか、心配だったもんでな。ちょっとそのぉ、隠れてみた。ンフフフフ。
  • 次元:(あっけにとられた表情から一転)このぉ、ルパン!

いかがでしょう。何度みても、次元と五ヱ門のルパンに対する友情に、ジーンと胸が熱くなります。特に、次元の感情表現は、実にストレートです。次元がこんなに泣くなんて、誰が予想したでしょう。ルパンとの相思相愛ぶりに気づいてはいたものの、次元が泣くとは驚きです。とっつぁんにも、引けをとらない男泣き。

さて、次元と五ヱ門、ルパンを失ってしまった直後の反応は【真逆】です。次元は【外から内】へ、五ヱ門は【内から外】へと感情が向かいます。

次元の行動は素直で〈ハチャメチャ〉です。やり場のない想いを、自分の行動棚上げで五ヱ門にぶつけていきます。そして、泣く。自分の感情に浸っていきます。一方、五ヱ門の心は静かです。しかし、悲しむ次元をみて、自分が敵をとる!と、ばかりに感情は比較的ゆっくりと動き出し、次のアクションでは、標的が魔毛という人物そのものに向かいます。とても興味深いシーンです。

ここで、注目したいのは2人の性質です。次元は、やはり風主体の性質をもつ人。今作では、黄金像を盗み出すための下調べを完全に行ったり、魔毛狂介の正体を調べたりするシーンに、次元の性質がわかりやすく現れている。そして、水の性質も併せ持つ。この感情豊かな部分も、今回の男泣きのシーンで再確認できたと思います。外(風)から内(水)へという表現は、納得です。

次は五ヱ門です。私は、以前、五ヱ門の性質を土がメインで水の性質を併せ持つ人と考えました。水も土も受容性が高いという特徴があります。五ヱ門の心の動きは、次元に比べると冷静で出遅れた感じがあります。もちろん、ルパンが消えて、驚愕、無念といった様々な感情が五ヱ門の中には交錯していることでしょう。ですが、次元の主体性に対して、受容の姿勢が顕著で、表現は慎重です。そして、次になにをなすべきか、自分が具体的にできるアクション、〈敵討ち〉という行動に気持ちが向かいます。土主体というのは変わらない。けれど、もしかしたら、水よりも火の性質が強いかなーと思うシーンも、無きにしも非ず。今のところ、保留中。要検討です。

次元は、他の作品で、眼に見える現物、〈形あるもの〉じゃないとしっくりこない…とか、目の前に積み上げられた〈お金〉に強い意識が向かうときがあり、土の資質を彷彿させるようなシーンもみられます。次元が執着するもの、頑なに守ろうとするものが、何なのか…この辺りを、今後も検証していこうと思います。

ルパンの〈誰が悲しんでくれるか、隠れてみた…〉という行動は、4元素全ての想いが表出された結果、実行されたアクションであると感じます。次元の理屈【江戸時代】が相手ならルパンも自分でどうにかできていた!という台詞も実に面白い。そして、まさかの【江戸時代】が決着の肝になっていくのですから、ワクワクします。自分の中の想いやアイデアを即実行できる人は、多くないと思うのですが、この辺りの〈茶目っ気〉たっぷりの行動力が【ルパン三世】の真骨頂を発揮する世界観に通じているのではないでしょうか。 

 

不二子と一緒に出かけるシーン

  • ルパン:なんだ、不二子ちゃんか。
  • 不二子:(ナイフを投げ返して)なんだとはご挨拶ね、ルパン。あたしがせっかく会いに来てあげたっていうのに。
  • ルパン:あんがと。
  • 不二子:なんか変ね、いつものルパンじゃないわ。
  • 次元:そっとしといてやんな、不二子。ルパンもな、今度ばかりは、ちっと真剣なんだ。
  • 五ヱ門:【四次元空間】を飛び回る男が相手ではな。魔毛狂介だ。俺たちだって怖い。

と、ルパンは、扉に立っている次元と五ヱ門に向かって、ナイフを投げつける。

  • ルパン:オレがいつ【怖がった】っていうんだ、冗談じゃねぇ。(と、次元と五ヱ門に近づき)あんなキチガイの脅しにのるとでも思ってんのかよ!と、地団駄を踏む。不二子ちゃんおいで!(と、愛車で出かける。)
  • 次元:どうするね、五ヱ門。
  • 五ヱ門:んー。

不二子は、さすがです。すぐにルパンの不調を見抜きます。そして、次元と五ヱ門の【ルパンの不調】を説明する言葉はユニークです。次元は、軽やかに。五ヱ門は、慎重に。ですが、慎重に発したはずの五ヱ門の言葉の【怖い】というワードに、ルパンは過剰に反応します。核心をつかれて、子どものようにダダをこねるルパン。次元や五ヱ門の前では、自分の感情を隠そうとしても隠しきれないことを知っているので、こういう態度がとれるのだと感じます。

人間臭さが全開のルパン。気晴らしには、デート一択。不二子に甘えて癒してもらうのか…と思ったのですが、ここには、ルパンの直観的ヒラメキと目的を達成するための意図がありました。こういうところにゾクッとします。目的を達成するためには、手段を択ばない姿勢、ルパンの怖さがよく表現されている。そして、そのルパンの【意図】は、教会前でのシーンにつながり、魔毛の言葉の中で明かされていきます。

 

教会の前で、不二子に求婚するシーン

  • 不二子:(いたわるように)ルパン…。
  • ルパン:悔しいけど、どうしようもないらしいや…ん。(と、うなだれて不二子の方に歩み寄る。)不二子よ~。(と、座り込んだまま、不二子の腰に手をまわして頭をうずめる。そのとき、教会の鐘がカラ―ンと鳴りだす。)不二子、オレと結婚してくれ。
  • 不二子:えぇ~!
  • ルパン:オレの命、あと3日しかない。最後の頼みだ。(と、不二子の二の腕を両手で掴む。)なぁ、たのむ。式だけ挙げてくれ。たのむよ、不二子。お願い。(と、不二子に向かって手を合わせる。)
  • 不二子:そんなに、私を愛してたの?
  • ルパン:(不二子の髪に触れながら)あぁ!
  • 不二子:わかったわ、OK!
  • ルパン:(ルパンは口角をあげて)イヨッ!ほんとか!(と、自信にあふれたいつものルパンの顔を取り戻す。)よーし!善は急げだ。そこの教会でやろうぜ!オレ、牧師に話しつけてくるわ。ウフフフ。(と、教会へと駆け出していく。)ヤッホー!(その後ろ姿を複雑な表情で見守る不二子。)よーぅ!不二子、話はつけたぜ!と、陽気に手をあげるルパン。
  • 不二子:あの人、本当に私を愛しているのかしら。(と、つぶやく。)

不二子はさすがです。ルパンの【結婚の意図】には気づいていませんが、ルパンの行動の違和を素早く察知しています。この辺りの敏感な反応に〈風〉の性質、自己を取り巻く環境の変化を直観的にキャッチする、という本質がみてとれると思います。

この後、不二子を連れ出した最終的な意図は、魔毛の台詞によって明かされます。『甘いぞ、ルパン。峰不二子はうまく騙せても私はそうはいかん。不二子と式をあげれば、なんとかルパンの名前はあの女が継いでくれると考えたんだろうがな。甘い、甘い。』まさか、こんなことまで考えていたとは…!〈名実両方〉手に入れたい欲張りなルパン。さすがです。自分の代でルパン一族の血筋が途絶えてしまうことも、プライドが許さないのでしょう。

ひとつひとつ順を追って、検証したい内容が満載の本作品。〈あらすじ2〉の場面では、銭形警部がルパンに対する熱い想いを詳細に明かしてくれます。今までの作品でも、ルパンを追うことが銭形の生きがいであることは見て取れましたが、宿敵(初老の男に変装したルパン)の前で、その本音が堂々と明かされる。こういう場面は、これまでの大隅作品では、みられなかったかもしれません。

ルパンが第4話で、銭形に捕まり刑務所に監獄されたとき、銭形のルパンに対する想いは明確に描かれていますが、あのときは、銭形警部がひとり苦悩する姿が印象的でした。ルパンと銭形警部の関係性を【宿敵】として描いた場合の例をひとつとってみても、これだけ表現は変わるのですよね。今作には、制作側の描き方の対比が見え隠れするシーンを探す面白さがあり、個人的に、非常に興味深い作品です。敵役として登場する魔毛狂介の自信に満ち溢れた登場シーンと、圧倒的にひと皮むけてかわいらしく逃げていく最後のシーンの対比も、痛快で楽しい。 

さらには、13話の特徴に【笑い】の効果が隅々まで行き届いている場面が顕著に登場するということがあると思います。これまでも、敵役がニヒルに笑うシーンは、たくさん登場していますが、〈あらすじ6〉のルパンの台詞に見られるように、1つのシーンでこれだけ笑いを演じ分けるという演出はなかったのではないでしょうか。ルパンの余裕のなさ、焦りを笑いによって表現する。ルパン三世というキャラクターが持つ明るさの本質を崩すことなく、笑いの変化によって、より切実な感情を表現する。素晴らしい演出だと思います。

私に語彙のセンスがないので、笑いのバリエーションが限られているように思えるかもしれませんが、実際に、今作で笑いがもたらす陰影の効果は、とても深いものがあります。ですから、笑いの表記をあえて残すことにしました。ご了承くださいませ。

というわけで、驚くほどに長くなってしまった第13話。次回からは、もっとサクサクとまとめて、進みたいと思います。14話も思いがけない演出が隠されています!お楽しみに。

 

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以前の記事で、火・風・水・土の4元素の特徴について、触れました。ザックリまとめると以下のとおり。今後も、登場人物の特徴をタロットカードに当てはめながら、遊んでみたいと思いますので、よかったら、参考にしてください。

 ◆4元素図(火・風・水・土)

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)