こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

LUPIN THE THIRD FIRST TV『012:誰が最後に笑ったか』黄金の姉妹像は誰の手に?

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzuです。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くというだけの試みの12回目。10作目より、Secondシーズンに向けて〈徐々にテコ入れがはじまったよ…〉というエピソードが登場。第12話は、緑ジャケのFIRSTシーズンを手掛けた【大隅正秋監督の世界観】が色濃く残る最後の作品ともいわれています。名残惜しさを味わい尽くして、楽しんでくださいませ。それでは、ルパンの元へいってみよ~!

 

第十ニ話『誰が最後に笑ったか』(1972年1月9日放映 / 脚本:鶴見 和一)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子・ハヤテ・クマゾウ・スミト 

冒頭、荒れ狂う風、吹雪舞う白銀のとある集落。爺さんが柱に括りつけられている。シンジケートの一味である【ハヤテ】は〈早い者勝ちとはよくいったもんだ。悪いがタダでもらっていく〉と、村の唯一の財産である【姉妹像】を爺さんから略奪する。

  1. 〈そろそろ、ひきあげるか…〉と、そのときハヤテの背中越しでカタッと音がする。そこには【峰不二子】の後ろ姿があった。〈追え!追うんだ。〉とばかりに、追っ手は、スノーモービルで逃走する不二子を包囲するが、一瞬のスキをつかれて、対になっている姉妹像の片方をまんまと持ち去られてしまう。〈失敗だと?スミト、女を取り逃がしたというのか。ちきしょう。あの女さえいなければルパンを出し抜けたのに。〉と、悔しがるハヤト。爺さんこと【長老】は、その様子をみて大笑い、ハヤテにパコッと殴られる。雪原を踏みしめ歩く不二子。コンパスを頼りになんとか塒の洞窟へ到着する。そこには、温かい焚き火とルパンが待っていた。〈こんなところで会うなんて、ついてるよな不二子。〉と迎えるルパン。
  2. その頃、像の1つを奪われたハヤテは組織に指示を仰いでいた。今回の仕事の目的は、組織の財政難を解消すること。本部から〈君を選んだのは、実力ナンバーワンと思えばこそ、その期待を裏切らんでくれ。〉と言われ〈よくわかっています。しかし、現実の問題として作戦実行上、人数が足りません〉と増員を依頼するハヤテ。連絡を終えると、振り向きざまに斧を投げて〈失敗したものは自分の死をもって償う。それが組織の掟なんだ。〉と、敵を取り逃がしたスミトを殺す。フハハハハと笑う長老。ハヤテは〈それほど、おれの失敗が面白いか〉と、再び長老を殴る。そして〈像の1つや2つををめぐって殺し合うのがくだらん…〉と笑った長老に、作戦に協力するよう迫る。像を狙ってやってくるルパンたちを待ち伏せする作戦だ。部下のクマゾウに〈周囲に罠をかけて、やつらの動きをみはる。失敗は許さんぞ。いいな。〉と指示する。
  3. 吹雪の中、双眼鏡を片手に敵陣を偵察する次元。増員がやってきたのを見届けると〈あー、奴らが絡んできたとなると、今度の仕事も面倒くせぇことになるな。ハヤテは、直情型のバカだから。なにをしでかすかやら。〉と敵を撒きつつ、洞窟へ戻る。洞窟では、ルパンが横たわっていた。その姿をみて〈やれやれ。不二子、貴様やったな。〉と次元。〈冗談じゃないわ。勝手に寝てるだけよ。大事なパートナーをやるわけないじゃない。〉と不二子。訝し気に〈パートナー?おいっ、ルパン、起きるんだ。おいっ、ルパン。〉と、ルパンの頬をペチペチ叩く。次元は、ルパンの目くばせに気づき、ニヤリと笑うと、不二子の銃をけ飛ばす。〈悪く思うなよ。〉と不二子を縄で縛り、裏口から出ようと歩き始めたところに〈あらっ?〉と、そこには手榴弾が…。〈ヒェ〜、逃げろ!〉と駆けだす。〈あいつらをイぶりだすんだ!〉と、息巻くクマゾウは、次々と手榴弾を投げ込む。
  4. 翌朝、ルパンは1人、村へと向かう。次元は、敵の見張を倒しながら〈言わんこっちゃない。おいおいと1人でヤツのところに行こうなんて。自信過剰だよ、ルパン。〉と呟く。なおも、袋を背負ってゆるゆる歩くルパンを眺めて〈おい、完全に包囲されちまってるぜ、ルパン。なにをグズグズしてるんだ。早いとこ、盗めばよかったのに。〉と独りごちながら、ツッコミを入れる次元。

    ーーー次元の脳内回想シーンーーー『ルパンともあろう大泥棒がいつも盗んでばかりいちゃつまんねぇ。相手は売りたいって言ってるんだ。ご期待にこたえて、買ってやろうじゃねぇか。』〈イイ格好のしすぎだぜ、ルパン。〉と呟きつつ、言葉とは裏腹に楽し気な表情で、木の上からルパンを見守る次元。
  5. 長老の家に辿り着いたルパン。キセルをふかしている長老を前にして、札束を積み、交渉していく。だが、長老は、なかなか首を縦に振らない。ルパンは、〈これ以上、びた一文も出せない〉というところまで追いつめられたうえ、身ぐるみも剥がれる。ーーーそうだ、もっとルパンの奴からはぎとってやれ…と、扉越しに様子をうかがうハヤテ。部下は、なにやらルパンのスノーモービルに細工をしている。交渉成立し、とうとう姉妹像を手にしたルパン。長老が〈あぁ、これが姉妹像でな。後の一対は…〉と言ったところで、ルパンが袋から取り出したのは、不二子と対の姉妹像。〈これで揃ったわけだ。〉とルパン。不二子は、縄をほどいて〈騙したのねぇ私を。悔しい〉と外に駆け出すが、ジタバタしても外は大雪。〈そういうこと。洞窟で待っていたのも、すべて計算済み。最初から立てた計画だったのだ。フハハハハハ。〉とルパン。調子に乗って不二子を寝間に誘うが、いつものパターンでフラれる。
  6. 翌朝、寝過ごしたルパン。小屋には、柱にくくられた長老の姿があった。〈女は逃げおった。ワシをこんなにしおって。〉〈じいさん、すまんが、この服は返してもらうぜ。〉〈あぁ、いいとも。スノーモビルは物置じゃ。〉スノーモービルで立ち去るルパン。ここまでは全てハヤテの作戦通り。ハヤテに〈あの男にこんな小細工はきかんぞ。〉と長老。〈おまえには関係のないことさ。これは全て計算してあるんだ。こいつらを縛りつけろ〉と、再び、柱に括りつけられる長老と不二子。〈上手くいきました。ルパンは足跡を追って、天国へと直行ですよ。〉と報告するクマゾウ。〈よーし。これでルパンは確実に死ぬ。像二つ揃って組織のモノになる。ルパンの持ってきた大金となぁ。オレは組織の英雄になるという訳だ。フフフフ、ハハハハ。〉と、ご機嫌のハヤテ。一方のルパンは…爆破現場にいた。〈やることは派手だよな。なるほど、華麗なるルパン三世。〉と次元。〈メタボロ。〉と、ルパン。華麗なるルパンは、スノーモビルごと吹っ飛ばされても、木の枝にひっかかった洗濯物の程度の手負いで済むのである。
  7. 爆発を見届けたハヤテは〈ルパンは仕掛けといた爆弾で、木っ端みじんさ。なにかご不満でもあるのかい、不二子さんよ。〉と言い、不二子は〈気にならない?ルパンがそんなにあっさりやられるかしら。〉と応える。そのとき、外で爆発音が!ルパンの反撃の狼煙があがった。

    • 次元:(双眼鏡を覗きながら)ハヤテめぇ、だいぶ慌ててるぜ。
    • ルパン:不二子と長老は大丈夫だろうな。
    • 次元:いやー、心配ないって。ちゃんと外して攻撃してるんだ。ルパン、次はどういく?
    • ルパン:先の御礼をこってりと返してやらなきゃ。
    • 次元:よーし、集中砲火といこう!
      ♬ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパンルパンルパン♬

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • クマゾウ:やられた、こいつは全滅だ、全滅ですよ。
    • ハヤテ:こうなったら、こちらにも考えがある。
    • クマゾウ:ヘンッ。あんたの計画どおりやったら、このザマだ。一体どうするってんです。
    • ハヤテ:いいか、ルパンたちはせいぜい2、3人だ。こっちは残った連中集めて、スノーモービルや雪上車で、別々の方向に脱出するんだ。ルパンは手出しできないこと、間違いはねぇ。
    • クマゾウ:出来ますかい?
    • ハヤテ:できるとも、できるとも!出来なきゃ…責任をとるぜ。

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • 不二子:ルパンったら、長老さんがここにいるから狙いを外しているらしいわ。おかげで命拾いしたようね。
    • 長老:すまんが、ワシの縄もほどいてもらえんかな、お嬢さん。
    • 不二子:あらー、ごめんなさい。(と、縄をほどく。)
    • 長老:あんたの狙う像は、ハヤテがもっておるんじゃが、どうやってとるんじゃい。
    • 不二子:別にあの像は必要ないの。私の欲しいものはちゃんと抜き取ってあるから。(と、2枚の紙切れみせる。)
    • 長老:手早いのぅ。

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • 次元:どうやら、やつら強行突破の構えだぜぇ、ルパン。
    • ルパン:あぁー、違えねぇな、次元。それじゃ、徹底的に村からいぶりだしてやるか。出やすいようにな。
    • 次元:やー、そりゃいい。
      ♬ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパンルパン・ルパンルパンルパンルパン・ルンルンルンルパン♬

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • ハヤテ:地雷まであるとは…。
    • クマゾウ:ハヤテ、作戦は失敗したぜ。どう責任をとるんだい。スミトみたいに死ぬかい。
    • ハヤテ:ルパン、出てこい。俺と勝負しろ。この像は、絶対お前たちには渡さん。ちきしょう。最後の最後までオレをバカにしやがって。出てこい。
    • ルパン:ここにいるぜぃ。
    • ハヤテ:はっ…ルパン。
    • 次元:よさねぇか、ハヤテ。(背後で銃を構えて)なにも、そういきり立つことはねぇだろう。逃がしてやるぜ、ハヤテ。どこなりと行きな。
    • ハヤテ:クソ~~!!!!!
    • クマゾウ:失敗したものは、どうするんだい。えぇ?
    • ハヤテ:失敗したものは、自分の死をもって償う。それが掟だ。(と、姉妹像を持って、自ら炎の中に身を投じる。)

  8. 渋面でポケットに手を突っ込み、肩を落として雪原を歩くルパンと次元。〈いやぁ、ついてねぇな。とうとう黄金の像はバラバラ。隠し金山の場所も永遠に行方不明になっちまった。〉と次元。〈全くムダ骨な。〉とルパン。〈ちげぇねえ。〉そこへ、峰不二子スノーモービルが近づいてくる。〈不二子!そうだ、あいつがいたんだ。〉とルパン。〈ご苦労さまでした、ルパン。やはり、持つべきものは良きパートナーですね。おかげで金山の地図が手に入って私は大金持ちだわ。じゃーね!〉と不二子。〈このやろう!〉と次元。〈まった、だましやがって!〉とルパン。走り去る不二子のスノーモービルにロープををひっかけ、〈俺は決してこの手を放さんぞ。〉〈そうだとも!〉とルパンと次元。〈いつまでもつか試してあげる〉と、速度をあげる不二子。〈もう、やめろ。やめてくれ、不二子ちゃーん。あらぁ、あれぇー〉と、ロープごと宙に舞うルパンと次元。-----その様子を、一部始終眺めていた長老の手には、金山の【地図】と【大枚の入った袋】が…。地図は、あらかじめ本物とすり替えてあったというオチ。長老の乗ったソリから、〈リンリンリン♬〉と軽やかな鈴の音が響いてくるのでありました。おしまい。

  

f:id:hirameki_99:20191129172129j:image

 

◆こうゆづ的*第十ニ話の№1シーン

一部始終を眺めていた長老の最後の一言に決めました。〈やっぱり、最後に笑うのはワシじゃったな。金山の地図は、前もって偽物とすり替えていたし、金もそっくり手に入って。まぁ、これからは、老後をのんびりと暮らすか。それっ〉と、ソリを走らせる。【すべてお見通し】と言わんばかりの長老がまとう飄々とした雰囲気が、なんともいえないイイ味を出している!〈おぬし、策士じゃな…〉と思わずツッコミたくなる。私は、年の功の【知恵】と手堅い【狡猾さ】が冴えるこの作品のオチが好きです。

冒頭から、長老には【タダ者ではない】雰囲気が漂っています。物語は〈ルパンたちVSハヤテ率いる組織〉という構図で【姉妹像と金山の夢】を追いかけ進んでいきます。ところが実際には、若者たちが知恵をひねって、くりだす作戦は、おしなべて長老の手のひらにヒョヒョイと吸収されて、ただ、転がされているような感じにみえてきます。

『あれれ?結局は、長老が仕掛けた罠だったのか!』という具合に、いつの間にか、目の前の景色が変わっていくのです。この路線は、やはり高畑&宮崎コンビのコミカルタッチが細部にひかる演出のなせる業だといえるでしょう。バックコーラスのようなルパンルパンルパン♬の挿入も、テンポよく楽しい。

一方で、敵対役のハヤテの生き様は、とても対照的です。命をかけて組織に尽くし、散っていくという【神風特攻隊】のような最期。この辺りは、大隅監督の芯を貫く【男たるもの!】という、ハードボイルド的な演出がみえてきます。まさに、大隅監督自身の境遇を投影したような渾身の演出ではないでしょうか。なぜなら、テレビアニメのスタートから、自分が手掛けてきた我が子のような『ルパン三世』を、高畑&宮崎コンビに引き継ぐという現実が目の前にあるからです。ハヤテの最期と大隅監督の心中が重なって、なんとも複雑な感情が溢れだす。心にグッと迫りくるものがあります。

この作品を最後に、大隅監督らしい演出は徐々に影を潜めていきます。私は、大隅監督の演出の切れ味は、特に【次元大介】というキャラクターを通じて、体現されていたように感じます。お人好しで、器用貧乏で、笑いを忘れないユーモアを併せ持つ次元という男。もちろん、原作はモンキー・パンチ先生ですし、テレビアニメのための脚本家がいます。ですから、監督は、ある程度決められた枠の中で自分の色を打ち出す演出を出掛けていくことになります。

2019年の今もなお、次元というキャラクターの雰囲気が、少しもブレずに確立されていることに、ルパン三世というアニメーションのスタートを手掛けた大隅監督の【情熱と志】を強く感じて、温かい気持ちになるのです。声優の【小林清志さん】が次元に惚れ込んで、86歳の今も現役で演じていることにも、なにかとても運命めいた絆を感じます。考えすぎでしょうかね。ウフッ。妄想は自由ですものン。

それでは、最後に、大隅監督と高畑監督、新旧の対比が鮮烈な【ハヤテVS長老】の台詞をいくつか記してみます。

◆不二子を取り逃がしたスミトを殺すシーン

  • 長老:(ハハハ…と大笑い)

    別に面白いわけじゃないが、くだらんことだと思っておるよ。たかが、像の1つや2つをめぐって殺し合うとわな。

  • ハヤテ:そういうお前はなんだ。像を買いたいという俺たちの足元をみやがって、2倍3倍と値を吊り上げやがった。
  • 長老:姉妹像は、この村に残ったたった一つの財産じゃ。できるだけ高く買ってもらわんと、割りにあわん。それがこうして盗られたんじゃ、元も子もなくなるでな。
  • ハヤテ:ケッ。口のへらねぇ、じじいだぜ。いいか、クマゾウ。像はふたつないと意味をなさん。長老さんよ、芝居は、まだこれからだな。えー?【最後に笑うのは誰かな。】
  • 長老:【ワシじゃないかな。】(と笑い、またもハヤテに殴られ)いてっ。

 

◆ルパンを待ち伏せ、罠にかける作戦に協力したシーン

  • 長老:約束が違う!
  • ハヤテ:手伝えといったが、助けてやるとは言ってねぇんだ。あいにくとな。

◆作戦通りにルパンをやったと喜ぶハヤテに、不二子が異を唱えるシーン

  • 不二子:気にならない?ルパンがそんなに、あっさりやられるかしら。
  • ハヤテ:このオレのやり方にケチをつけるのか。
  • 長老:別にそういうわけじゃないじゃろう。(助け舟をだすと)
  • ハヤテ:やかましいやい、長老さんよ。あんたは口数が多いんだ。(と三度、殴られる長老。)いいかい。姉妹像も金も全部もっていくから、そのつもりでな。
  • 長老:そ、そんな。話が違う。ワシにも協力したら【分け前をくれる】といったじゃないか。
  • ハヤテ:それがダメになったのさ。俺はバカにされるのが一番気に入らねぇんだ。
  • 長老:年寄りを騙すとロクなことはないぞ。


 【長老とハヤテ】、二人の男の生き様を対比させることで、登場人物たちの個性はイキイキと輝きを増しています。キャラクターの持ち味を生かしつつ、諸行無常的な人生の末路、一獲千金的なロマンの希望と儚さをしっかりと描きだし、そのどちらもが狙い通りに成功しているように感じるのです。

そして、タイトルになっている台詞【最後に笑うのは誰かな】は、ハヤテが長老に投げかけ、最終的なオチで長老が見事に回収していきます。作品の裏側にあるメッセージ性を読み手に意識させるような演出の仕掛けが効いていて、味わい深い作品だと思います。妄想は尽きることがありませんが、本日はこの辺で。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 

Kohyuzu(こうゆづ☆)