こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

妖怪noことほぎ★今日と明日の30文字なるもの【the 37-38th】

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzuです。急遽思い立ち、見に行った人形劇、パペット・アニメーション。何十年ぶりかしら。すごく、よかった。人形の息吹に触れて、魂が宿っているかのような微細な動き、固定されているはずの人形の表情が、クルクルと変わってみえてくるのだから、とても不思議。創作の過程は、根気強く、辛抱強く、それはそれは繊細に…大変なご苦労があったと思うのです。芸術家の表現に対する飽くなき探求と精神の洞察の力強さには、敬意を超えて、畏怖さえも感じてしまいます。

同時上映されていた東京芸術大学大学院制作のパペット・アニメーションも、社会風刺がきいていて、わかりやすく、考えさせられる作品でした。何年か前に学会で、チェコプラハを訪れたとき、絵本やパペットがたくさん展示されていて、その場を立ち去りがたかった気持ちを思い出しました。絵本は、チェコ語で、もちろん理解できないのだけど、なんだか胸が締め付けられるほどの切なさと、同時に、温かさも感じたのです。現実と理想、アトランティスの世界は、それは豊かな創造と想像、破壊と再生を繰り返す躍動に満ちた世界だと思うのです。

思い立ったが吉日!こういった時間を、少しばかり、積極的にとるようにしてもよいかも…と思った、昼のひとときでした。人の世話ばかり焼いていると、自分の世話をなおざりにしてしまって、自分がなにを表現し、実現したいのか、分からなくなってきてしまう。心が洗われたような時間を過ごすことができました。ありがたいことです。

 

それでは、今日も妖怪がおくる【今日と明日の30文字なるもの】へ、いってみよー!

 

【0613】今日の妖怪365

札返し:因果因縁
《はじめの一歩》行いは全て自分に返ってきます。信頼も裏切りも同時に存在することを覚えておきましょう

 

【0614】明日の妖怪365

管狐:濡れ手で粟
《はじめの一歩》今は、結果に囚われず、プライドをもってやり続けましょう。努力は必ず報われます

 

f:id:hirameki_99:20190614001815j:image  

 

今日の妖怪は【札返し】でした。札返しは、江戸時代1853年刊行の『狂歌百物語』に記されています。妖怪をテーマにした狂歌に絵が添えられた絵本のようなものであったようです。陰陽師を題材にした小説や映画で出てきそうな【護符】は、幽霊や悪霊に憑かれないように、【結界】のような役目を果たします。経文や神仏が描かれた護符が貼られている場所に、異形のもの(霊)は入ることができません。もちろん護符そのものに触れることもできないため、自ら剥がすこともできません。

そこで、入りたい場所の扉を開いてもらうために、霊は、生きている人間の力を使って、護符を剥がそうとたくらむのです。この現象を、【札返し】と呼んでいます。護符を剥がそうとする場面を描いた作品で有名な物語が、怪談『牡丹灯籠』に出てくる〈お札はがし〉です。明治時代に活躍した落語家初代三遊亭圓朝氏の十八番だそう。また、幽霊が下駄をはいて〈カラン♬コロン〉と鳴らしながら歩くという、斬新なアイデア。幽霊に足をつけたのも、この作品特有の発想のひとつであったようです。

『牡丹灯籠』は、中国・明の時代の怪奇小説『剪灯新話』に収録されている小説『牡丹燈記』を基にして、創作されたといいます。添い遂げることの叶わなかった男女の悲恋の物語。人である男と幽霊である女が逢瀬を重ねて、将来を共にすることを誓うも、男は女の正体を知り、幽霊封じをしようと試みます。恨んだ女は、札返しによって、男を亡きものにしてしまう…というのが、物語のあらすじです。

日本版の怪談の舞台は、現在の〈本郷三丁目〉から始まります。そうして、【お札はがし】の怪談のなかで、幽霊を封じるための護符をもらいに行った場所は〈新幡随院〉といって、現、谷中2丁目にあたるようです。今でも、石碑が並び、創作当時の情景を思い描くことができます。主人公の幽霊たち(お露さんとお米さん)が眠っているのが〈谷中霊園〉。主人公の男(新三郎)が住んでいたのが、根津1丁目、現、根津神社付近。いわゆる通称〈谷根千〉といわれている文京区・台東区周辺が舞台です。

谷根千〉は、歴史ある風情がたまらなくホッとする街並みで、谷中霊園には、数多くの著名人・文豪の墓があります。路地裏からは、風鈴の音が聞こえてきたり、猫が涼んでいたり、祭囃子の音が聞こえてきたり。少しずつ観光地化されてはいますが、昔ながらの商店が、いまなお、色濃く残っていて、生粋の江戸っ子らしさも残されています(あくまで、個人的なイメージです。ご了承ください)。お江戸を彷彿とさせる下町の風景が、海外の人たちにも人気らしく、粋な計らいをする民宿も、みてとることができます。

のんびり歩いていると、何度訪れても、新たな発見に出会える場所。こういった場所は東京23区内で、とても少なくなりました。最近は、駅周辺の開発がドンドン進んでいて、どの街も、四角四面の風景になってしまい、とても残念です。私が東京に出てきた20年前と比べても、ずいぶんと街の印象が変わりました。

【札返し】の怪談のように、時代が移り変わろうとも、当時の面影に思いを馳せつつ、探索できる場所というのは、貴重です。変わるものと変わらないもの、その両方を融合して、自分なりの物語の世界をつくりあげることができる。そこに、妖怪との対話を楽しむ醍醐味があるような気がします。

余談ですが、怪談『牡丹灯籠』は、令和元年版と称して、尾野真千子さん主演で、NHKがドラマ化するそうです。『怪談・牡丹灯籠』は、20年にもわたる仇討ちが根底にある物語。あくまで【札返し】の場面が出てくるのは、その物語に収録されたひとつの物語ということになります。

新三郎役に中村七之助さん、お露役に上白石萌音さん、お米訳に戸田菜穂さん、お札剥がしに加勢した悪者として描かれている伴蔵役に段田康則さん。なんだか、ワクワクするような芸達者な俳優さんの顔ぶれ。

2019年10月6日(日)BSプレミアム夜10時スタートです。ご興味ある方は、ぜひ、ご覧ください。当方は、決してNHKの回し者ではございません。ハイ。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)