こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

記憶に残る、心を揺さぶる、わたしを鼓舞する!ことば集【小学校編】

Kohyuzuです。昨日は、すれ違いざま[宇宙人の解剖]…ふと、そんなワードが耳に入ってきて、思わず振り返ってしまいました。掃除機をかけ、夕飯をつくり、シャワーを浴びて、それでも、頭の中を[宇宙人の解剖]が駆け巡って離れず、リフレインするばかり。相方に「宇宙人の解剖って響き、おもしろいと思うんだけど。創作意欲を刺激する言葉だわ」と話すと、間髪置かず「そんな映画あったよね、あとムーに出てきそうなエリア51とかさ。」と言い始めたのです。

なんだか、一気に興奮が冷めて、我に返りました。相方を信用していないわけではないです。でも、念のため検索してみると、確かに映画の題名が出てきて、ちょっと、がっかり。単に、映画の会話で出てきたワードだったんだ…と、急速にワクワクが失われていきました。

すると、思わぬところから、ある記憶がよみがえってきたのです。というわけで、小学校時代にタイムスリップして、【わたくし語り】をしてみようと思います。おつき合いいただける方はご一緒にどうぞ。では、いってきまーす。

 

不思議なことに、思い出すのは、特別仲がよいわけではなかったクラスメートばかりだ。顔もフルネームも、当時のままにしっかりと覚えている。いつも一緒にいて、手紙を交換したり、お互いの家に遊びに行ったり、そのような友達との会話は、びっくりするほど記憶にない。[宇宙人の解剖]がよび覚ました記憶は、奇妙な偶然というニュアンスがぴったりだ。以下、人物名は仮称であり、地元の方言も、標準語に変えている。

 

Case1  ふとし(小4)

昼休みのことだ。遊びは思い出せないが、私とその男の子は、向き合って話をしていた。直前まではお互いに笑っていたのだ。それも、爆笑するほどに。それなのに、彼は突然、泣き出した。それもとても静かに…。色白で、二重のクリっとした丸い瞳が印象的なかわいい顔立ちの、その瞳から、涙の粒がポロポロとこぼれた。そうして、彼は言ったのだ。

【この涙は、こうゆづのせいじゃない。こうゆづに何か言われたからとかそんなんじゃない。これは、ボク自身の問題だ。ボクの尊厳を守るための涙だ。】

私は、「うん。」と一言、応えるだけで精いっぱいであった。だって【尊厳】という言葉の意味が分からなかったのだから。家に帰って、国語辞典を開いても、とどのつまり、なぜ彼が泣いたのか、分からなかった。でも、彼に直接、泣いた理由をたずねることもできなかった。彼の大事に守っているなにかが、壊れてしまいそうな気がしたからだ。「触れてはいけない。」そう思った。翌日、彼はいつもどおりに、笑っていた。なんだか、彼が急に大人びたような、手の届かないところへ行ってしまったような気がした。そうして、本当に彼は、遠くへ行ってしまった。「私が泣かせてしまったからかもしれない。」束の間、1人恐れていたのだけれど、全くの杞憂におわった。しばらくして、父親の仕事の都合で引っ越したのだと、知らされた。

 

Case2  マキ(小5)

その子はいつも、机にかぶりついて、鉛筆を動かしていた。授業中も昼休みも、ずっとなにかを書き続けていた。憂いを含んだ黒い目と、高くスッキリ整った鼻筋、色白の肌は、透き通るほどに美しかった。アンニュイで近寄りがたい雰囲気。それを、少しだけ、柔らかくキュートに感じさせてくれる、クルっとはねる無造作な髪が、私は大好きだった。中休み、いつものとおり、グラウンドに飛び出した私。そうして、何の気なしに校舎を振り仰いだ。そのとき、ふと、教室の窓にうつる彼女の姿がみえた。私は、なにかに突き動かされるように、突如、きびすを返していた。教室に戻ると、彼女は1人でいた。いつもの通り、机にむかって何かを一生懸命に書いていた。私は、ためらいながらも、彼女に近づき話しかけた。「外に行かないの?みんな外で遊んでるよ。」自分の出した声が、教室にそぐわない大きな声であることに気づいて、私はうつむいた。そして、ふいに、ほとんど、彼女と話しをしたことがなかったことに気づき、今にも、逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。すると、彼女は顔をあげ、真っすぐに私をみつめて言った。

【マンガを書いてるんだ。いまの私にしかできないことをやりたい。】

ハスキーな彼女の声は、クッキリと私の心に届いた。「すごい!どんなの書いてるの?みせて。」興奮した私は、そのような言葉を返したように思う。彼女の答えは「NO」だったけれど、すぐに、いたずらっぽい笑顔を浮かべて「完成したらね。」と言ってくれた。私は、彼女のマンガが完成するのを待っていた。私たちだけの秘密を守っているような気がして、嬉しかった。けれど、彼女のマンガを読んだかどうか、どうしても、思い出せない。

 

Case3  よう(小6)

坊主頭がまぶしい、とにかく元気な男の子だ。いつも冗談ばかりいって、注目を集めるのが得意な、少し、けんかっ早いけれど、総じて人気者であったように思う。彼はモテた。私は、彼の周りに集まるクラスメートから、大体いつも、少し離れたところにいて、耳だけは、彼の言葉を拾うよう努めていた。そうでなければ、突然、彼からツッコミが飛んでくるからだ。彼は、周囲に愛嬌をふりまきながらも、教室に1人でいる子を放っておけない、気遣いのヒトだ。けれども、はじめて会ったときから、私には、笑顔の下に隠された繊細さのようなものが透けて見えるような気がしていた。

ある日、私は彼と大喧嘩をした。クラスメイトは、私たちを取り囲み、いつもの冗談だと思って、囃したてた。ふっと、喧騒は途切れた。私が彼の顔をひっぱたいたのだ。呼吸をするのを忘れたかのように、教室は一瞬にして静まり返った。彼は、とても奇妙な顔をしていた。今、自分の身に起きたことを確かめるように、叩かれたひだりの頬に手をあてて、しきりに、なでていた。私は彼をたたいた右手がジンジンとしびれるのを感じながら、訳の分からないままに慟哭した。初めて、クラスメイトの前で泣いていた。そのあと、どのようにその場が決着したのか、記憶にない。

この一件以降、彼はなぜか、私を頼るようになった。彼の繊細さは、両親が離婚の危機にあることが多分に影響していたのだろう。彼との時間が増えるなか、別れは、突如、やってきた。両親の離婚が決まり、彼は母方の実家へ引っ越すことになったのだ。人気者の彼の周りには、クラスメイトがいつまでもどこまでも、別れを惜しんでいて、とても近づけそうにない。私は、彼に最後の挨拶をせずに、教室を離れた。それから1週間後、彼が引っ越すその日、彼は、いつも私が遊んでいた公園に現れ、こう言った。

【お前、冷たいな。なーんにも言わず、別れるのか。あのときのビンタは、きいた。おれ、めちゃ嬉しかった。親以外に殴られたの、はじめて。お前が、『あんたなら、どこにいってもやっていける』って言ってくれたから、どこにいてもおれは大丈夫だって思うことにした……。お前のこと結構、好きだったよ。じゃな。】

「私もあんたのこと、結構、好きだったよ。」と、素直に返せたら、どんなによかっただろう。彼に抱いていたおもいが、恋愛感情だったかどうかは分からない。それでも、私は、彼の人懐っこい笑顔を、時々思い出す。思春期を彼はどのように乗り越えたのだろうか。彼の痛みと叫びは、今もまだ、私の心の中にある。

 

Case4  あや(小5)

猫が大好きなおしゃまな女の子。少し吊り上がった聡明そうな瞳に、キュッと結ばれた口元は、いつも口角があがっていた。ポニーテールがよく似合い、いつも甘いストロベリーのような香りをまとっていた。なにがきっかけだったか、私は彼女の家に招かれた。ロシアンブルーに会いに行ったような気もするし、そうでなかった気もする。そうして、なぜか私は彼女と二人きりで、彼女の家にお邪魔していた。

清潔に整頓された部屋は、深いコバルトブルーの毛足の長いカーペットが敷いてあった。その柔らかさは、想像以上で、ふかふかした肌触りが面白くて、裸足になって何度も確かめるように、足踏みしていたことを覚えている。彼女と暮らしている猫たちの方が、私の暮らしより、「ず-っとゴージャスだ。」と言われているような気がして、落ち着かなくなった。たいして親しくなかった彼女とどのような話をして過ごしたのだろう。帰り際、玄関まで見送ってくれた彼女は、思いがけず、私にこう言った。

【こうゆづは、私のこと嫌いだよね…。それでも、いいんだ。今日は、楽しかった。こうゆづのこと、大好きだからさ。今日は、来てくれてありがとう。】

ふいうちの、衝撃がガツンときて、鼓動は疾走した。彼女がなんと言ったのか、瞬時には理解できなかった。「ワタシノコト、キライダヨネ。」なぜに分かったのだ?言葉の意味をかみしめたとき、私は彼女の鋭い問いかけに戦慄した。そう、私は、彼女のことが苦手だった。嫌いというよりは、一緒にはいられない女の子。彼女がまとう、ふんわりとした空気が、別次元に存在しているような感じがして、確かに苦手だったのだ。彼女は、気づいていた。とても敏感に、私の悪意をかぎとっていた。そして、その思いを私に、平然とぶつけてくる強かさがあった。その彼女のしなやかな言葉の選択を、私は、ただただ「あっぱれだ。」と思った。私と彼女の隔たりは、彼女の言葉によって融解し、いつまでも、どこまでも、ただひたすらに、流れていった。

 

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最後に…言葉のちから

こうして、言葉をならべてみると、はるか遠いはずの過去…【小学校の私】が、すぐそこに在って、いつも寄り添ってくれているような、そんな心持ちがしてくるのだから、不思議だ。4人から届いた言葉は、すべて、私の核となり、育んでくれた記憶に留まる【ストレートな言葉のかけら】だ。人の本気が伝わる言葉は、決して忘れないのだ。【4人の気高い志】を想うとき、私は、なんて贅沢な時間を過ごしていたのだろうと気づく。

4人が今、どこでなにをしているのか、私は知らない。このまま、二度と会うこともないだろう。それでも、いい。そのほうが、いい。時の流れとともに、言葉が放つ煌めきと本質は、洗練されていく。私の意識にある限り、未来へ続く架け橋となっていく。

それにしても、小学生の言葉には、ものすごい引力があるんだなぁと、ビックリした。文字にして視覚化すると、今まで気づかなかった心の動きがみえてくる。子どもが親を育てるというのは、真理なのかもしれない。言葉のちからを信じる。一見、隠れているようにみえる【裏側の意図をすくいとる】感性を大切にしたいと思う。

[宇宙人の解剖]に捧げます…。心新たに、わが身に喝をいれた休日なのでした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

Kohyuzu(こうゆづ☆)