こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

平成から【令和】へ…時代の流れにのって、なんちゃって【32分の2首+α】の歌よみ

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzuです。元号が【平成⇒令和】になることについて、特別な感情を抱いているわけではないのです。が、万葉集の一節に、ヒントを得て元号を決定したというコメントに、少なからず、興味がわきました。何を隠そう!私は、文学部でした。万葉集も学んだはずですが、ほとんど覚えていない。というわけで、なんとなく思い返すタイミングが来ているのかも…と、忘備録をかねて、【なんちゃって歌よみ】を、やってみました。たった2首ですがねぇ…。解釈は自己流で、あくまで遊びの要素が大きいです。万葉集を、詳しく、正しく知りたい方は、他をあたってくださいませ (^^)/

 

万葉集巻五 天平二年正月、大伴旅人は管下の国司や高官を招き宴を開催した。その宴の、出席者たちが、【梅】をお題として、それぞれが思いのままに歌をよんだという。

太宰帥大伴の卿の宅に宴して《梅花の歌三十二首、并せて序》

天平二年正月の十三日、帥の老の宅に萃ひて、宴会を申ぶ。時に初春の月、気淑く風ぐ。梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす。加以(しかのみにあらず)曙は嶺に雲を移し、松は羅を掛けて盖を傾け、夕岫に霧を結び、鳥はうすものに封りて林に迷ふ。庭には舞ふ新蝶あり、空には帰る故雁あり。

是に天を盖にし地を坐にして、膝を促して觴を飛ばし、言を一室の裏に忘れ、衿を煙霞の外に開き、淡然として自放に、快然として自ら足れり。若し翰苑にあらずは、何を以てか情をのベむ。請ひて落梅の篇を紀さむと。古今それ何ぞ異ならむ。園梅を賦し、聊か短詠を成むベし。

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天平2年の正月の13日、師老・大伴旅人の邸宅(太宰府)に集まって宴会を行った。
折しも、初春の佳き月で、空気は清く澄みわたり、風はやわらかくそよいでいる。梅は佳人の鏡前の白粉のように咲いているし、蘭は貴人の飾り袋の香にように匂っている。そればかりか、明け方の山の峰には雲が行き来して、松は雲の薄絹をまとって蓋をさしかけたようであり、夕方の山洞には霧が湧き起こり、鳥は霧の帳に閉じこめられながら林に飛び交っている。庭には春に生まれた蝶がひらひら舞い、空には秋に来た雁が帰って行く。

そこで一同、天を屋根とし、地を座席とし、膝を近づけて盃をめぐらせる。一座の者みな恍惚として言を忘れ、雲霞の彼方に向かって、胸襟を開く。心は淡々としてただ自在、思いは快然としてただ満ち足りている。
ああ文筆によるのでなければ、どうしてこの心を述べ尽くすことができよう。漢詩にも落梅の作がある。昔も今も何の違いがあろうぞ。さあ、この園梅を題として、しばし倭の歌を詠むがよい。
《「新版 万葉集角川ソフィア文庫、現代語訳より転記》

 

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以下、宴でよまれた、〈三十二首〉を記す。

  • 正月立ち 春の来らば かくしこそ 梅を折りつつ 楽しき終へめ ***大弐紀卿
  • 梅の花 今咲けるごと 散り過ぎず 我が家の園に ありこせぬかも ***少弐小野大夫
  • 梅の花 咲きたる園の 青柳は 縵にすべく 成りにけらずや ***少弐粟田大夫
  • 春されば まづ咲く屋戸の 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ ***筑前守山上大夫☆
  • 世の中は 恋繁しゑや かくしあらば 梅の花にも 成らましものを ***豊後守大伴大夫
  • 梅の花 今盛りなり 思ふどち 挿頭にしてな 今盛りなり ***筑後守葛井大夫
  • 青柳梅 との花を折り 挿頭し 飲みての後は 散りぬともよし ***某官笠氏沙弥 
  • 我が園に 梅の花散る 久かたの 天より雪の 流れ来るかも ***主人★
  • 梅の花 散らくはいづく しかすがに この城の山に 雪は降りつつ ***大監大伴氏百代
  • 梅の花 散らまく惜しみ 我が園の 竹の林に 鴬鳴くも ***少監阿氏奥島
  • 梅の花 咲きたる園の 青柳を 縵にしつつ 遊び暮らさな ***少監土氏百村
  • 打ち靡く 春の柳と 我が屋戸の 梅の花とを いかにか分かむ ***大典史氏大原
  • 春されば 木末隠りて 鴬ぞ 鳴きて去ぬなる 梅が下枝に ***少典山氏若麻呂
  • 人ごとに 折り挿頭しつつ 遊べども いやめづらしき 梅の花かも ***大判事舟氏麻呂
  • 梅の花 咲きて散りなば 桜花 継ぎて咲くべく 成りにてあらずや ***薬師張氏福子
  • 万代に 年は来経とも 梅の花 絶ゆることなく 咲きわたるべし ***筑前介佐氏子首
  • 春なれば うべも咲きたる 梅の花 君を思ふと 夜寐も寝なくに ***壹岐守板氏安麻呂
  • 梅の花 折りて挿頭せる 諸人は 今日の間は 楽しくあるべし ***神司荒氏稲布
  • 年のはに春の来らばかくしこそ 梅を挿頭して楽しく飲まめ ***大令史野氏宿奈麻呂
  • 梅の花 今盛りなり 百鳥の 声の恋(こほ)しき 春来たるらし ***少令史田氏肥人
  • 春さらば 逢はむと思ひし 梅の花 今日の遊びに 相見つるかも ***薬師高氏義通
  • 梅の花 手折り挿頭して 遊べども 飽き足らぬ日は 今日にしありけり ***陰陽師
  • 春の野に 鳴くや鴬 なつけむと 我が家の園に 梅が花咲く ***算師志氏大道
  • 梅の花 散り乱ひたる 岡びには 鴬鳴くも 春かたまけて ***大隅目榎氏鉢麻呂
  • 春の野に 霧立ちわたり 降る雪と 人の見るまで 梅の花散る ***筑前目田氏眞人
  • 春柳 かづらに折りし 梅の花 誰か浮かべし 酒坏の上(へ)に ***壹岐目村氏彼方
  • 鴬の音 聞くなべに 梅の花 我ぎ家の園に 咲きて知る見ゆ ***對馬目高氏老
  • 我が屋戸の 梅の下枝に 遊びつつ 鴬鳴くも 散らまく惜しみ ***薩摩目高氏海人
  • 梅の花 折り挿頭しつつ 諸人の 遊ぶを見れば 都しぞ思ふ ***土師氏御通
  • 妹が家に 雪かも降ると 見るまでに ここだも乱ふ 梅の花かも ***小野氏国堅
  • 鴬の 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子が為 ***筑前拯門氏石足
  • 霞立つ 長き春日を 挿頭せれど いやなつかしき 梅の花かも ***小野氏淡理

こうして、32首が並ぶと壮観である。万葉の時代から、花見をして季節を愛でて、現在にまで通じる【ゆかしき精神】が、我々の中にも、確かに、息づいているのを感じる。〈梅の花〉から、はじまる歌が多いのは、いかにも納得です。

 

山上憶良の歌よみ

春になると梅の花がいち早く咲き、梅は、春の訪れを告げる役割を担っている。その梅の花を、独りで見るというのは、どうしたって寂しいものですね…。この憶良の歌は、妻を失って2年になる大伴旅人への心遣いが感じられる歌として、ひろく解釈されているようだ。個人的には、万葉集といえば、山上憶良!と言いたくなるほどに、象徴的な人物である。わかる人にはわかる!といった、静かな心配りに胸がジーンとくるな。

大伴旅人の歌よみ

我が園に梅の花が散りしきっている。あぁ、空から雪が降ってきたであろうかと、梅の花びらが散る様子を雪に例えた歌である。梅は春を告げる花であり、実際に宴が開催されたのは、新年早々の時期である。旧暦の正月には、雪が降り積もることもあったかもしれない。季節の移ろいを、〈雪の白さ〉と〈白梅の白さ〉の対比によって、美しく表した歌である。梅の香が、鼻腔をくすぐり、心が浮き立つさま、春を心待ちにする様子が、今にも伝わってくるようである。旅人の梅の花への特別な心情をも、くみ取ることができる歌であると、いえるのではないだろうか。

さらに、大伴旅人は、梅の花を好んでいたようで、都の屋敷の庭に、梅の木を植えていた。その梅の木について詠んだ歌(宴で詠まれた三十二首とは別)がある。

〇 吾妹子が 植ゑし梅の木 見るごとに  心むせつつ 涙し流る

大宰府の勤務を終え、故郷に帰って来たときに詠んだ歌だという。大宰府に発つ前に、妻と一緒に植えた梅の木を、今は、私独りだけが見ている。この梅の木をみるたびに、亡くなった妻を想い、自然と涙が流れてくるという、旅人の心情が胸にジワジワと響く歌だ。

旅人の優しさ、妻への愛情の深さを素直によんだ、とてもあたたかい作品だなと、思います。

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平成最後の日。令和ゆかりの地、坂本八幡宮にて。境内の歌碑〈万葉集巻八〉より…

わが岡に さ男鹿来鳴く 初萩の 花嬬問ひに 来鳴くさ男鹿  / 太宰帥 大伴旅人

私の住む岡に牡鹿が来て鳴いている。今年初めての萩の花が咲き、牡鹿がやってきて妻問い(求愛行動:雌鹿を求めて甲高い声で鳴く)している。その鳴き声にも、亡き妻を想わずにはいられないのだ。ここでも、妻への心情を歌っている。旅人は、愛妻家だったのですね。

【令(うる)わしく、和(なご)やかに】

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)