こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

【体験記】ICL(眼内レンズ)術、〈眼鏡〉よ、さらば。ありがとう。

kohyuzuです。なかなか着手できずにいたICL術(後房型フェイキックIOL)の体験記。ご検討中の方の参考になれば幸いです。前置き不要な方は、目次からどうぞ!ちなみに、〈さいごに…〉は、長文です。

ICL術の施行を決意するまで

私が初めて近視の矯正で、眼鏡をつくったのは、小学2年生の頃。そして、コンタクトレンズを使い始めたのは、小学6年生の頃。それから、云十年たった今日、私の眼には、眼内レンズが納まっている。眼内レンズ術を受けた人物に、出会ったのは7年前のこと。このとき初めて、近視の矯正にレーシック手術以外の選択の可能性があることを、強く意識した。

眼鏡やコンタクトレンズを介さずに、裸眼で見えるということ。それは、物心ついたときには、すでに強度の近視で、裸眼でクッキリと鮮明に像を結んだものをみたという記憶がない私にとっては、とてもエキサイティングな、夢のようなお話。

ところが、看護学生時代に、私が唯一直視できない手術が【眼】の手術であった。解剖学が大好きで、眼以外の臓器や体液を、直接、目にしても、全く恐怖を感じることなく、観察し続けることができる私。けれど、眼球だけは、別次元だった。目にメスが入る瞬間を、どうしても注視することができなかったのである。

よって、眼内レンズは、ひとつの可能性として、かなり魅力的な手術法であったが、直接体験談を耳にしても、私にとっては、現実的な治療法ではないと断念したのである。ところが不思議なもので、昨年2019年の夏、眼内レンズという文字が、突然、頭に浮かんだ。なぜだか、分からないけど、不意に、気になったのだ。

何かに突き動かされ、レンズについての情報を集めてみると、な、なんと、眼内レンズ術が可能な年齢域の当落線上、崖っぷちの年齢に達しているではありませんか!そこで、即行動。年内で決着をつけてしまおうと、適応検査の予約を入れ、トントン拍子に手術を受けることを決めたのである。

手術を決断した理由

  • ドライアイが進行し、コンタクトレンズを半日以上装着するのが困難。
  • 強度の近視と乱視で、眼鏡のレンズは薄型のガラス性の一択。レンズの重みでパッドの痕が鼻筋に残る上に、テンプルのアタリが強く、耳の炎症が絶えない。
  • 突発的な事故、災害時など不衛生な環境下で、見えないことの不自由と不安。

ICL手術の適応(2019年ICL適応ガイドライン

  • 21歳以上、45歳頃までが目安。老視(老眼)の年齢域以降の患者は、慎重に施術
  • 等価球面屈折度で6.0D以上の近視とする。3D以上6D未満の中等度近視、および15Dを超える強度近視には、慎重に対応。
  • 術前乱視強度1.0D~4.0D
  • 前房深度:2.8㎜以上
  • 角膜内皮細胞密度(施行時の年齢に準拠)

ICL手術の実施に慎重を要するもの(日本眼科学会認定専門医のもと施行)
  • 緑内障
  • 全身性の結合組織疾患
  • ドライアイ
  • 矯正視力が比較的良好で、かつ、非進行性の軽度円錐角膜症例
  • 円錐角膜疑い症例
ICL手術の禁忌
  • 進行性円錐角膜
  • 活動性の外眼部炎症
  • 白内障(水晶体の混濁、亜脱臼などの異常がある場合も含む)
  • ぶどう膜炎、強膜炎に伴う活動性の内眼部炎症
  • 重症の糖尿病、アトピー性疾患など創傷治癒過程に影響を与える可能性の高い全身性あるいは免疫不全疾患
  • 妊娠中または授乳中の女性
  • 浅前房および角膜内皮障害
  • コラーゲンに対する過敏症(アレルギー)

 眼球の構造(ざっくりと)

  1. 角膜:カメラのレンズに相当。眼球の一番外側、黒目の表面を覆う膜で、眼球を保護している。光を集め像を結ぶ〈屈折力〉の3分の2相当を担う。
  2. 水晶体:カメラのオートフォーカス機能に相当。凸型レンズに相当する器官。網膜にみえる映像のピントを調節する働きをもつ。
    〈老視〉水晶体の弾力性の低下、毛様体筋の脆弱性により、ピントの調節力が低下することで起こる。40代以降、高年齢化に伴い起こる自然な現象。
  3. 網膜:カメラのフィルムに相当。目の一番内側の透明な薄い膜で、目にみえる映像を結ぶ場所。視神経を介して、脳に伝達する機能をもつ。
    • 正視:角膜と水晶体で屈折して、網膜上でピタッと焦点があう正常な状態。
    • 近視:網膜より前方で焦点が結ばれるため、遠くのものがぼやける。屈折力は大きい。
    • 遠視:網膜より後方で焦点が結ばれるため、近くのものがぼやける。屈折力は小さい
    • 乱視:網膜の前または後方で、2つ以上焦点が結ばれる。二重、三重にだぶって像がみえる。
  4. 硝子体:眼球の大部分を形成する透明なゲル状の組織で、99%は水分。眼球の形を保ち眼圧を維持する。また、角膜で屈折された光を網膜上に送る役目を担う。
  5. 眼房:角膜と水晶体および毛様体との間の器官。虹彩を境にして〈前房〉と〈後房〉に分けられる。絶えず眼房水で満たされ、循環し、角膜や水晶体に栄養を供給する役目を行う。眼房水は、瞳孔を通り、最終的にシュレム管で吸収される(下図、赤矢印の流れ)。
    • 緑内障は【眼房水の吸収が阻害⇒眼圧亢進⇒視神経障害】により起きる。

 

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ICL手術とは

  • 眼球内に、ハードコンタクトレンズくらいの小さなレンズを挿入する手術のこと。適応検査により、個々に見合ったレンズを虹彩(黒目)と水晶体の間の【後房】の位置に固定する手術。 
  • レンズの素材は、Collamer(コラマー)という。ハードコンタクトレンズより柔らかく、ソフトコンタクトレンズより弾力があり【含水性】に富んで柔らかい。
  • 従来よりコンタクトレンズの素材として使われてきたHEMA(Hydroxyethyl Methacrylate)とコラーゲンを合わせたもので、眼球内でコラーゲンが糖タンパクと結合し、レンズの表面にスムーズに膜を形成する性質をもつ。
  • 日本国内では、2010年2月厚生労働省認可⇒2014年ホールICL承認。近年、EVOの開発により、さらにレンズの質が向上している。世界では、1986年~施行。1997年ヨーロッパCEマーク取得。2005年米国FDAより認可。
手術の前日までの流れ

*病院によって、スケジュールは異なると存じますので、ご参考までに。
〈1回目:初診〉

  • 適応検査・診察・医療スタッフによるカウンセリング
    • ハード・乱視用コンタクトレンズは、適応検査日の2週間前より中止。
    • ソフトコンタクトレンズは、適応検査日の1週間前より中止。
    • 検査当日は、眼鏡で受診する。
    • 散瞳薬を使用するため、検査後4-5時間は、バイク・車の運転を控える。

〈2回目:残検査〉

  • レンズの度数を決定するための検査、レンズの発注(前金支払い)
    • 2回目の検査が終わるまで、コンタクトレンズの使用は、引き続き中止。
    • レンズ発注後のキャンセルは、基本的に不可で、返金には応じず。
    • レンズの準備期間は、約2週間~2ヶ月程度。トーリックレンズ(乱視用)は、在庫がない場合には時間がかかることも。

〈手術日の決定〉レンズ発注後、病院に届き次第、電話連絡。手術日の予約を行う。

〈手術3日前〉感染予防のための抗菌薬点眼(1日4回、就寝前30分以上あけて)開始。

〈手術前日〉

  • 飲酒(アルコール)禁止。
  • まつげのエクステンション禁止。
  • コンタクトレンズの使用制限はないので、前日まで使用可能だが、点眼薬開始日である手術3日前より、眼鏡で過ごすのが好ましい。
手術の当日の流れ

【自宅】での注意事項(術前)

  • 抗菌薬を朝・昼分の2回点眼(午後の手術の場合)
  • コンタクトレンズ使用中止
  • 車・バイクの運転禁止、自転車も控えたほうが好ましい。
  • 全てのメイク禁止(化粧水のみ目の周りを避けて可。)

【病院】手術予定時刻の約1時間前に受付

  1. 散瞳薬・消毒薬の点眼【約40分】
    • 5分間隔で6回程度点眼。点眼の順番は、指示に従う。
    • 30分後に看護師が散瞳(瞳孔の開き具合)を確認。散瞳が不十分であれば、点眼を継続。
    • 貴重品・装飾品などの荷物をロッカーに預け、手術時間まで、ボーッと待機。ちなみに、眼鏡とスマートフォンは、直前まで使用することができる。
  2. 手術室の前室
    • 【氏名・生年月日・手術する箇所(右目・左目・両眼)】を伝える。
    • 散瞳薬を最後1回、手術部位に点眼し、手術帽を装着する。
  3. 手術室【所要時間:約15分】
    ほぼ見えないため、手引きしていただきながら、手術椅子へ。
    • 医師と【氏名・手術する箇所】を確認。
    • リクライニング後、すぐに術野の確保。目の固定のためテープを貼付、これ以降、まばたきはできない。消毒、麻酔薬の点眼が手際よく行われる。
    • 目の洗浄(大量の液体で、絶えず洗浄されます)後、2-3㎜目尻を切開。
    • 右目レンズ挿入(かなりの圧で、グイグイ眼球を押されます。未体験ゾーン。違和感はありますが、痛くはないです。ぼやけていた視界がだんだん、ハッキリ見えてきます。深呼吸してリラックス。
    • 乱視の場合は、軸の調整(この間も、絶えず洗浄液が流れています。)
    • 左目も同様に実施。(私は、手術の要領が分かったぶん、左目の方が少し緊張し、途中まで、深呼吸するのを忘れていました。手術そのものに意識を向けるより、自分の呼吸に集中する方がイイ感じです。
    • 目の固定テープ、術野の滅菌シーツを外し、終了。
      *前室入室から、わずか【13分】で終わりました。手術そのものは、片目5分もかかっていないはず。レンズが入ると、手術室から前室、待合室へ戻るときには、誘導がなくても、よくみえます。術直後は、両目とも重だるい感じがあり、まばたきを繰り返したくなりました。でも、痛みはない。本当にないです。びっくらぽん!
  4. 待合室【所要時間:約30分】
    預けた荷物を回収して、抗菌薬を指示通りの順番と間隔で点眼しながら、基本的には目を閉じて、術後検査に呼ばれるのを待ちます。
  5. 術後検査【所要時間:10分】
    視力検査、眼圧検査が主です。
    *私の場合、眼圧は問題なく、視力は両目ともに【0.7程度】(術前に説明されていたとおり)みえました。手術当日の回復の状態には、個人差があるらしく、この時点で1.2まで回復している脅威の若者、あるいは、回復がもっと緩やかな方もいらっしゃいました。緩やかな場合は、経過観察を続け、時間をおいて再検査をしているようでした。
  6. 医師による診察
    術後の眼球の状態の説明、感染予防についての確認、質問があるか?など
  7. 次回(翌日)の予約
    • 点眼薬(4種類)の処方、効能効果、使用時の注意事項などの説明。
    • 保護用メガネを装着し、帰路へ

術後【自宅】での注意事項

〈当日禁止〉

  • 洗顔・洗髪
  • シャワー・入浴
  • メイク
  • 保護用メガネは、自宅でも装着する方が好ましい。外出時は、必須。
  • 飲酒(アルコール)
  • 車・バイクの運転
  • 仕事
  • 力仕事(重いものを持たない。グッと力を入れる瞬間の負荷により、眼球の毛細血管に影響する可能性があるため。)
  • パソコン・読書・テレビなど目を刺激すること
  • 目の周りを触れたり、抑えたりすること

〈術翌日に可能となること〉

  • 首から下のシャワー
  • 美容室での洗髪
  • パソコン・読書・テレビなど、短時間より可
  • 車・バイクの運転(日没後、夜の運転は、慎重に。)

〈3日目以降に可能〉

  • 入浴
  • 自宅での洗顔・洗髪(目の中に水がかからないよう、慎重に。)
  • 仕事(デスクワークはOK。汗をかくような仕事は、5日目より可)
  • メイク(目の周りを避け可。)
  • 飲酒(アルコール)

〈1週間後から可能〉

  • アイメイク(まつげのエクステンションは、1ヶ月禁止)
  • 汗ばむ程度の軽いスポーツ(ウォーキング、ストレッチなど)
  • 保護用メガネなしでの外出 

ICL術後に想定される合併症

  1. 感染症:6000分の1の確率(海外の報告)で、みられる場合がある。術後、指示通りに、適切な点眼を行い、定期検診を継続することで、発生は抑えられる可能性が高いが、稀に、強い炎症反応が見られる場合がある。
  2. 緑内障:術直後に、若干の眼圧上昇はみられるが、通常は正常範囲を超えることはない。稀に、レンズの大きさが合わない(大きすぎる)ことで、眼圧が上昇しやすくなることがある。速やかに、適切なサイズのレンズに入れ替えることで対応。ICL術が原因で、失明に至った例は、国内外で報告されていない。
  3. 白内障:レンズの大きさが合わない(小さすぎる)ことで眼内レンズと水晶体が接触したり、加齢による経年変化により、水晶体の混濁を、来すことがある。有水晶体眼内レンズ(ホールICL)の開発により、リスクは軽減している。新たに白内障手術用眼内レンズの挿入術を行うことで、視力は維持することができる。
  4. ハロー・グレア現象
    手術後1週間程度は、特に夜間の見にくさが生じることがある。光の周りに複数の輪が見えるようなハロー現象、光のまぶしさやにじみが見られるグレア現象、他、光の輪が見える場合がある。時間の経過とともに、減少する傾向。
  5. その他、レンズの位置・度数のずれ・サイズ
    乱視用のレンズの場合、固定軸(向き)がズレることで、予定通りの視力が得られない場合があるが、再手術による固定調整で修正可能。度数のズレは、眼内レンズの入れ替え、追加のレーザー角膜屈折矯正術(レーシック)などで、視力の矯正が可能となる。

手術によるデメリット

  • 感染症のリスクを伴うこと。
  • 今後、眼に新たな病変が見つかり、手術を受ける必要がある場合に、ICL術が施行できる専門医にかからなければならないということ。
  • 日本での先行症例が少ないため、眼内レンズを挿入し続けた先に起こり得る、リスクの検証が、不透明であること。〈*私が説明を聞いて感じたデメリットを、3つに絞っています。〉

術後経過(Kohyuzu の身に起きたこと)

  1. 術直後~帰宅するまで
    帰路は、非常にしんどかった。何がしんどいって、ものすごく眩しい。病院にいるときは、あまり感じなかったが、街中には、こんなにも、目を刺激する光があふれているのかと、愕然とする。人の往来が多い駅構内を通過するときが、もっとも大変。とてつもなく眩しい中、人とぶつからないように進むのはなかなかの恐怖。料理以外は何もせずに、就寝。
  2. 翌日
    術後検診の日。視力は、両目ともに〈0.7⇒1.2〉まで回復。術後経過は順調。自宅の中では、快適そのもの。ただ、屋外に出たときの自然光の眩しさ、気圧が瞼の上だけに、ズーンとのしかかっているような圧迫感が不快で、駅までの道のりが、かなり長く感じる。駅構内や商業施設の中の光は、前日に比べると、眩しいとはいえ、だいぶ楽に。自然光の眩しさに適応するには、1週間かかった。
  3. 1週間
    検診の日。術後の炎症・充血はあるが、経過は順調。視力も、左目は1.5まで見える。感染予防で処方されている目薬以外の点眼液(涙の成分だけのもの)の使用可。屋外に出た瞬間の自然光の眩しさは残るものの、気圧の重みのような不快感は消失。夜間の街灯は、相変わらず眩しい。軽度のグレア現象は残る。手術当日から感じていた、目尻の切開部分に、膜が張っているような違和感は、1週間後も残る。痛くはない。ちょっとした違和感。アイメイクは、今日より可能になるが、個人的には、1ヶ月後検診が終了するまで控えることにした。意外と、1日4回の点眼薬が厄介だが、感染予防のためと、自分を律して守る。
  4. 1ヶ月
    検診の日。軽微の炎症は残っているが、経過は順調。相変わらず、夜間、照明をみると光の輪のようなものが見えるが、特に、不都合はない。だが、引き続き、夜の車の運転は控えたほうがよさそうだと、個人的に判断する。切開部の違和感、日中の自然光の過度な眩しさは、完全に消失。アイメイクも開始。メイク落としの際に、目の周りに触れたり、軽く圧迫したりしても、全く違和感がない。日常生活の制限は、すべて解除。激しいスポーツや海・プールも可。 

手術に対する個人的な見解

手術をしてよかったか?と聞かれたなら、即答で〈よかった!〉と答えます。眼鏡やコンタクトレンズなしでは、日常生活がままならない強度の近視、乱視の方は、検討する余地はあると思います。目を開けば、鮮明に像が結ばれる世界は、快適そのものです。

近視と共存している期間が長い程に、手元のものを見るとき、至近距離まで、ものを近づけて見る癖が染みついていきます。コンタクトレンズを装着している状態でも、文庫本や新聞、スマホを見るとき、目から10㎝も離れていない距離で、つい見てしまうのです。ですから、ICL術施行後は、この習慣と決別することが必須でした。手元から30㎝のところで、焦点が合うように調整しているため、これ以上近い距離になると、像はボヤけてきます。

私の場合、老視の影響が、既に出ている可能性があるため、全ての方に当てはまるかどうかは分かりません。いずれにしても、近くのものを見るときの距離感には、慣れが必要です。

私は、矯正視力を大よそ1.2程度にあわせていたので、眼内レンズも同じくらいの視力で作ってもらいました。それでも、調子がよいときは、1.5まで見えます。矯正が困難な右眼は、左眼に比べるとだいぶボヤけますが、両目で見るときには、脳が勝手に修正してくれるので、基本的に不都合を感じることはありません。

アラフィフの私が、80歳まで生きると仮定してコンタクトレンズの買い換え、保存液代、眼鏡のメンテナンスなど、諸々換算してみると、ICL術にかかる費用と、トントンくらい。もし、数年来に寿命が尽きることになったなら、完全に元はとれない計算になります。それでも、日常の快適さ、満足度に変えることはできません。

判断に迷っている方は、まずは、適応検査だけでも受けてみることをオススメします。なぜなら、混み合っている病院では、この検査だけに3ヶ月近く待つこともあるからです。実際、私は2ヶ所に問い合わせて、年内の手術が可能な方に決めました。

手術の判断は、生物学的な目の状態を見極めてから、納得いくまで検討しても遅くはないと思います。

眼球にレンズという異物を挿入するのですから、施術時間が短いからといって、身体に侵襲がないわけではありません。また、痛みが少ないからといって、恐怖がないわけでもありません。感染というリスクは、最も避けるべき合併症の1つですが、自分の身に起きないという保証はありません。バカバカしいと思いつつも、私は、手術の前に、パートナーと兄弟宛に手紙を書きました。両親には、どうしても書けませんでした。

手術により、眼の光を失ってしまう可能性はゼロではありません。限りなくゼロに近くても、ゼロではない。どのような手術であっても、これだけは、肝に銘じておく必要があると思います。手紙は…術後1週間が無事に経過したとき、ヒッソリ処分しました。

病院の選び方
  • 交通の利便性(自宅から近い方が、定期検診や治療の際の負担が少ない。)
  • 執刀医(Dr.)の実績
  • スタッフの質(質問、相談しやすい雰囲気か)
  • 病院の混雑の程度(予約の取りやすさ)

*私が調べた範囲内では、費用は、50万程度~80万円くらいまで、自由診療であるが故に差があります。私の場合は、費用より担当医の手術数など実績を重視しました。上記は、個人的に決め手になったポイントです。ご参考までに。

 

さいごに

近視の原因は、遺伝ではなさそうだ…と、子どもの頃は、ボンヤリと思っていた。両親ともども、老眼鏡にお世話になるまでは、眼鏡知らずである。両親が、私の眼の治療のために費やしてくれた労力、費用などを考えると、感謝してもしきれない。治療の効果は得られなかったけれど、両親なりにとても心配して、気にかけてくれているということは、刺さるほどに伝わっていた。

はじめて、牛乳瓶の底のように厚い眼鏡から、コンタクトレンズに変えたときの驚きといったらなかった。世の中は、こんなにも鮮やかで美しかったのかと。新緑の若葉が目に飛び込んできて、私は瞬間、眼をとじた。光がまぶしすぎて、眼を開いたままではいられなかったのである。世界が明るく目の前に放たれて、ひとっとびに、どこまでも飛んでいけるような気がした。〈魔法だ!〉そのくらい鮮烈に、私の視界は変わった。

歳を重ねると、遠くは見えるのに手元の焦点が合わない〈老眼〉をはじめ、水晶体が白濁することで視界がぼんやりする〈白内障〉、時には、年齢に関係なく、失明などの重大な副作用を引き起こす〈網膜剥離〉〈緑内障〉〈若年性黄斑変性症〉などの疾病に、ある日唐突に、見舞われることもある。

機序は異なるが、〈白内障〉も〈強度近視〉も、視界がぼんやりして、霞がかかっているようにみえる。例えば、私のように、幼少期の頃から〈見えないことが平常〉である場合は、ともかく、高年齢化により、徐々に視界が霞んで、視野が奪われていく白内障などの疾患では、本人の精神状態に及ぼす影響が、かなり大きいことが近年の論文で明らかになっている。

つまり、見えないことが継続することで、次第に気力がそがれ、元気がなくなることは、珍しくないということである。〈老化だから仕方がない…〉と収めてしまうのは、当事者にとっては、酷である。現に、私の知る限りでは、自分で老化を嘆くことは許しても、人から老化だと片づけられることには、かなり敏感で、抵抗を示す高齢者は、少なくないという印象である。

さらには、小学校入学前までに視力が1.0まで上がりきらない子どもの場合は、同世代の子どもに比べて、行動が緩慢であったり、集中力が乏しかったり、ボンヤリしているように見えたりすることがある。かつては、私もその子どもの1人であった。

小学校では、ロイヤルボックスと呼ばれる〈教卓前のど真ん中〉が、私の指定席。席替えのクジ引きに、はじめて参加したのは、コンタクトレンズに出会った後のこと。私が引いたのは、木漏れ日がとどく窓際、端っこの列の後ろから2番目の席。黒板も、先生の目も声も、一気に遠くなったときのことを、今でも鮮烈に覚えている。教室を見渡せる快感。誰がなにをしているか、一目瞭然でわかる。教室ってこんなに広かったんだと実感したとき、私は、自由になった。屈託なく笑えるようになって、学校が楽しくなってきたのも、この頃からかもしれない。

このように、見えないことを諦めたままでいることと、治療によって改善できる手段がみつかり、治療を受ける決断をし、見えるようになることは、全く違う。現場のスタッフいわく、視力が改善することで、表情や性格が見違えるほどに明るくなる方は、とても多いのだそう。

高校生の裸眼視力が1.0未満が7割弱、0.3未満の近視は4割弱であることが、明らかになっている現代では、裸眼視力が0.01程度の強度近視も、決して珍しいものではないかもしれない。けれど、しっかりと光が認識でき、視界がクリアな世界にいられることは、本当に、幸せなことだ。

このことを、身をもって体験した今、私は、ICL術による治療によって、開けてくる未来の可能性を、とても力強いものに感じる。仮に、手術が可能になる年齢域18歳以上(病院によっては、20歳以上)に達したときに、すぐに治療をする決断ができるとしたなら、アラフィフが近づいた私以上に、その前途は明るく、もっと可能性に満ち溢れた未来に、みえてくるのではないかしら。今世の人生は、ただ一度きりなのだから。

手術をご検討中の皆様へ、個人的な体験ではございますが、一助となりましたら嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)