こうゆづ☆の【とおまわり】

令和元年12月に、ブログタイトルを変更しました。心の動くままに、とっちらかったテーマで書いています。

トートタロットに聞いてみた★【自分を愛する】の本質とは?

寒中お見舞い申し上げます…こうゆづ☆です。ご訪問ありがとうございます。2020年1本目の記事(ルパンは除く)は、タロットカードでお届けします。年末に棚卸する予定のテーマだったのですが、新年に持ち越しという…。これもまた、私らしいといえば私らしい。そうそう、令和2年1月11日拝んだ初満月は、とても美しかった!手を伸ばして触れたくなるような、パワフルなお月さまでした。

さて、昨年、スピリチュアル的な学びの場で、よく耳にしたのが【自分を愛する】という言葉。人生の舵をとるのは自分自身。現実は自分が見たい世界、作りたい世界の反映であり、自分が望んだように世界を創造している。自分の周りで起きている現実は、全て必然だというお話。

実際には、ツッコミをいれたくなるような場面も、多々あったのだけど、こういう風に人生をとらえる生き方もあるし、人それぞれの世界があって然るべきのお話。自分がどう感じるかという個人的な気持ちを剥き出しにしても、あまり意味はないし、大した問題とはいえないな…と、その空間に居ることを体感し、多様性を楽しむことに決めた1年でした。

そこで、【自分を愛する】という意味がもつ本質をトートタロットで表現するとしたらどうなるのか…というテーマで、3枚引きしてみました。

A)顕在意識:【自分を愛する】というテーマで、私自身が気づいている本質。引いたカードは、Cups6(喜び)+ 20. Aeon(永劫)+ 21. Universe(宇宙)

B)潜在意識:【自分を愛する】というテーマで、私自身が気づいていない本質。引いたカードは、3. Empress(女帝)+ Wands10(抑圧)+ Swords3(悲しみ)

〈へぇ~、面白い!〉という声が、思わず飛び出た。A)と B)では、まるで世界観が異なるではないですか。そうして、思い当たる節もあり、図星をさされて、しばらく爆笑していました。自虐という感情は、笑いを引きだす才能があると思う。

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★トートタロットに聞いてみた!と、いなないていそうな画像でお送りしています。


 A)顕在意識のストーリー(世界観)
瞬時に感じたのは、さすが!【きれいごとが好き】な私の特質をズバリと、ついてきたな…ということ。描いた絵は、【大袈裟が過ぎるほど、無上な協調性】。

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知的財産権の関係上、トートタロットカードの画像の使用を差し控えております。ご了承ください。

  • カップの6〉には、一般的なタロットカードでは、懐古主義的に、感情の矛先が過去の喜びへ向かうような意味合いがあるが、トートタロットの立ち位置は、【今ここ】の感情を純粋に楽しむという感覚。その根源には、ハーモニーを大切にする姿勢がある。独りよがりの楽しみというよりは【Give&Take、Win-Win】的な要素の確立が存在しているかがポイントである。つまり、仲間やチームメイトと楽しみの感情を分かち合う喜びに重きがおかれるということ。もちろん、自分の立ち位置を確保するのが前提で、喜びの中心には自分自身がある。
  • 〈永劫〉には、新しい時代の流れの中にいる個人を【俯瞰】するような視点と、その時代の流れの中に身を置く個人のゆっくりとした【変化】の視点、個人の意識とは無関係に変わりゆく世界、新たな【生命が誕生】する躍動の視点がある。視線は、今ここから未来の可能性へと注がれる。立ち位置は、その時々の状況によるが、基本的には変化・変容の中にある。いかなる生物も、時間の流れには逆らえない。決められた世界標準時間、1日24時間という日々の中で、個人が変化を感じようが感じまいが、刻々と時代は変わっていく。個人が望む【理想的な状況】に追いつくためには、最低3年以上の長い時間が必要。しかし、プロセスにおいては、確実に好ましい変化・変容が起きている。
  • 〈宇宙〉のカードには、壮大な再生のエネルギーがある。完成からの出発。目標の達成。しかし、旅は、終わらない。人生をあきらめない限り、再び、始まる。個人的な感覚では【不死鳥】をイメージするカード。自分というものを最も厳しく、最も優しくみているのは、自分自身。他人の眼を逃れられても、自分の眼から逃れることは許されない。逃れた先にあるものは、バラバラに分断されてしまった肉体と精神と魂だけ。再び、戻ってこれるかどうかは、自分次第。輪廻・転生。トートタロットでは、土星】を象徴するカード。到達点と思っているものの先に、まだみぬ景色が存在することを、時間を制限したり、区画整理の如く分断したりすることで、気づかせてくれる。

大アルカナの後半、20⇒21のカード、人生の旅の中でも精神性を象徴するようなカードが出たことから、〈私どんだけきれいごと好きなんだ~!〉と感じたわけですが、まさに、自分を愛するということは、終わりのない旅のようなもの。意識の使いようで、無限にも有限にもなるわけです。なんだか、禅問答みたいだな。

人生において【理想を掲げ続ける】こと、その時間の流れを、確実に堪能できるような贅沢な喜びを、仲間と分かち合える豊かさこそが、自分を愛するということなのさ!と、3枚のカードが伝えてきているのだと思う。これが、私の顕在意識…。あからさまにカードで突き付けられると、図々しく恥ずかしい…。

 B)潜在意識のストーリー(世界観)
瞬時に感じたのは、壮絶な痛み。これは、してやられたな…【一本とられた】という感情。描いた絵は、【酸いも甘いもかみ分け、性の性(さが)を受容する】。

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  • 〈女帝〉は、いわゆる母性。狭義には、良妻賢母的な内助の功を象徴するカードである。献身的に世話を焼き、慈悲深く見守る。自分の役割を養育と繁栄であることを受容的に自覚している人。広義には、ある特定のテリトリーの中で、太っ腹に力強く、そして活き活きと活動するスーパーウーマン。チームを助けること、サポートすること、育てることに長けていて、献身的に尽くす。その結果、いつのまにかとんでもない地位に君臨していることも。ここでは、性的な役割を広く捉え、生物学的な性に特化するのではなく【性自認】による性という視点を付加したい。自分を愛するということは、自分のその時々の立ち位置で、器を広げてて役割を把握して、育む行動を行う人。そこには、何者をも恐れず、自分自身も周りの状況も受容するということに特化した誇りという潔さが存在する。行き過ぎると、過保護、過干渉、おせっかいになることも。
  • ワンドの10〉には、純粋な火のエネルギーが最終局面を迎え、くすぶり、今にも燃え尽きる状況を表わす。ワンドの9で完成したものが、行き過ぎてしまったことで、もはやパワーは残されていない。充電切れ。自分自身のキャパシティーを超えた余力のない状況(内的な限界)と、環境、時間、人間関係などの分の悪さ、過度の圧力につぶされる状況(外的な限界)の両方の意味を含む。解決策は、今ある状況をストップし、リセットすること。火のエネルギー(活力、情熱、直観、本能、創造など)をリサイクル。根源(ACE)に立ち返り、再び、果敢な挑戦を始めることで、状況は、劇的に進歩していく。疲弊が続けば、社会の歯車の中で漂流するゾンビの仲間入り。
  • 〈ソードの3〉には、過去の喪失体験からくるトラウマ、記憶を内包する悲しみ、怒り、痛みなどの意味がある。父と母(2)から子(1)が生まれて(3)になるる。つまり、生まれるという体験には【分離】という感覚が伴う。バランス(2)をとって居心地のよかった環境(子宮)から、強いストレス(陣痛)によって細く狭い道(産道)へと押し出され、無理やり母の肉体から引きはがされるような激しい痛みの体験が、今まさに【蘇る】という感覚である。天秤座の土星の要素を含むこのカードは、まさにバランスや客観性、公平、中立という感覚に優れた天秤座が、どちらか一方に傾いたり、別の方法を模索したり、探求したりすることを許していく学びのプロセスを含んでいる。今、自分がうまくいっていないという感覚を受け入れること、ネガティブな側面に目を向ける厳しさ、見た目の美しさで物事を判断したがるクセ、格好つけたがるフリをする自分の弱さに目を向ける機会を、そっと提示してくれるカードである。

潜在意識は、自分を愛するということは、A)のようなきれいごと、理想ではすまない世界であることを示唆している。愛の中に、どっぷりとつかっていくこと。それは、ある意味、経験・体感することでしか語れない世界であることを教えてくれる。

潜在意識が伝える【自分を愛する】の本質には、以下の視点が含まれている。

  • 生命エネルギーが枯渇するまで行動して、再び、パワーチャージして前進する熱量を備えること。
  • 過去に傷ついたとしても、なお、心(ハート)は、まっすぐに現在、未来へと続いていく希望につながること。
  • 生物学的に女性である自分の性を受容しつつも、男性性女性性という相反する性をあわせ持つことを自覚し、自分を、相手を、環境を豊かに育んでいくこと。

つまり、一見、ネガティブにみえる側面、傷を負い、限界に次ぐ限界であくせくし、痛みによる怒りを抱える自分を、まるごと受け容れ、抱きしめて、次世代へ幸せをつないでいく意識こそが、自分を愛することであると伝えている。ははぁ~ん。

あくまで、私の解釈であるが、A)とB)では、明らかに世界観は異なる。A)は大アルカナが2枚。対して、B)は大アルカナが1枚。A)の方がはるかにスケールが大きく、精神性が高いメッセージのように見えるが、気づきの視点は、B)の潜在意識からの訴えの方が、より実際的で、現実的で、鋭い力強さを秘めているように感じる。

またもや、トートタロットは、私に、すぐにでも行動に結びつけることが出来るような【具体性】を伴ったメッセージを、ズドーンと届けてくれました。無意識の世界を、カードを通して意識することによって、ハッとビックリするような発見につながってくる工程のひとつひとつが、とても愛おしい。そして、楽しい新年の初タロットでした。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)

LUPIN THE THIRD FIRST TV『017:罠にかかったルパン』時限爆弾の期限は24時間!果たして…

ご訪問ありがとうございます。こうゆづ☆です。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くというだけの試みの17回目。前作からオープニングテーマが〈♩ルンルンルンルパン♬〉の陽気な音楽に、クレジット表記は、高畑・宮崎コンビ要する〈Aプロダクション演出グループ〉に変更になっています。

今作は、またまた、ルパンが苦手とする一癖も二癖もある【女主人】が敵役で登場します。作画監督大塚康生さんと宮崎駿さんらしいイキイキとしたアクション、アドバルーンでの逃亡劇は、実にユニーク。また、冒頭のルパンたち3人3様の女性に対する反応も、興味深い展開に。時限爆弾解除の秘策はいかに?

それでは、本日もルパンとその仲間たちに会いにいってみよ~!

 

第十七話『罠にかかったルパン』(1972年2月13日放映 / 脚本:七條 門)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子石川五ヱ門・銭形警部・星影銀子 

冒頭、新宿のごとくネオンがきらびやかな夜の街。〈ATRANTIS〉というナイトクラブに横付けされた1台の車から、ルパン三世次元大介石川五ヱ門の3人が降りてくる。店の前で〈ようこそ皆さん、お揃いで!〉と、出迎えたのは峰不二子であった。

  1. 入店前のルパンたちのやりとりは、以下のとおり。
    • ルパン:〈おぅ、ご招待ありがとうって言いたいところだけっどもな。一体どんな魂胆があって、オレたちをこんなデラックスなところに招待したんだ?不二子ちゃん。〉
    • 不二子:〈いつもだましだまされっこばかりしてもつまらないでしょう?たまには楽しく、思いっきり遊ぼうと思って。
    • ルパン:〈あはっ、思いっきり?ふふっ、いい!イイ!さすが不二子ちゃん。〉と舞い上がる。次元は、オホンオホンと、ルパンを諫めるように咳をする。〈気にしない、気にしない、次元。そんなしかめっ面するなよ。〉
    • 次元:〈しかめっ面は、生まれつきだよ。〉そこへ、マダムの星影銀子が登場する。〈よろしく。〉と挨拶する女主人に、次元は、ルパンを押しのけるように〈あのぉ、あの…ワタクシこそよろしく!〉と、急に態度を変えて、愛想を振りまく。
    • 五ヱ門:〈くだらん。何かと思ってついて来たが、女にうつつを抜かすだけなら、俺は帰らせてもらうぞ。〉と背を向ける。
    • 次元:〈おい、五ヱ門、待てよ!〉
    • ルパン:〈よせよせ、次元。五ヱ門には通じないよ。【色気ナシ、剣一筋】ってのが、ヤツのキャッチフレーズ。それより、今日は派手に行こうぜ!グフフフ。さぁ、行きましょう、美女諸君!〉と、次元の肩を抱いてご入店。
  2. ナイトクラブに入店したルパンと次元は、ジャズの演奏が流れる中、女性たちとの会話、酒に、ダンスに、上機嫌。羽目を外して、非日常を楽しむ。酔いがまわったルパンは不二子と、次元はマダム銀子に付き添われて、別室へと移動する。用意周到と思しき【3つの椅子】に倒れ込むように、それぞれの身をゆだねるルパン&次元&不二子。その様子を〈ンフフフ…〉と不敵な笑みで眺めるマダム銀子は、3人を椅子ごと拘束する。ルパンは〈ヤイッ!一体、どういうことなんだ!〉と息巻くが、銀子の部下に、時限爆弾付きの腕時計をつけられてしまう。
  3. 時限爆弾の期限は、24時間。明日の朝5時まで猶予があると言って笑うマダム銀子。ルパンは〈一体、何が目的なんだ!理由を言え、理由を!〉とひきつった表情で、銀子に問う。銀子の目的は、お金。1人10億円、3人で30億円の身代金を要求する。そして、泥棒として一流のルパン一味には、たやすいことでしょう?と挑発し、30億円と引き換えに、時計を外すと約束する。こうして、まだ、夜が明けぬ朝もやの中、店外へ放り出された3人は、トボトボと歩き出す。
  4. 【正午12時】の時計の音がボーンボーンと、鳴り響く。アジトには、うなだれテーブルを囲む3人と、少し離れて対峙する五ヱ門の姿がある。
    • 不二子:〈ルパン、もう12時よ。〉
    • 次元:〈あと17時間で爆発か。〉
    • 不二子:〈ルパン、どうするつもりなの?〉
    • 五ヱ門:〈フンッ。女にうつつを抜かすからだよ。〉との悪態に、眼を丸くする3人。
    • ルパン:〈なぁ、五ヱ門。お前その、例えば大判小判がザックザクッて埋まってるところなんか知らないか?〉
    • 五ヱ門:〈知らんね。〉あぁ…と、ため息交じりにうつむく3人。
    • 次元:〈チッキショウッ、このクソ時計め!〉
    • 五ヱ門:〈仕方がない。手を貸すか。要するに、その時計さえなんとかすれば済むのであろう。〉とおもむろに立ち上がり、〈拙者が腕ごと斬りおとして進ぜよう。〉と斬鉄剣を抜く。そんなと慄く3人。〈なに、上手く斬れれば、さほど血は出ない。誰から行くかな…〉と剣をビュンッとふった瞬間に、五ヱ門の顔に灰皿が飛んでくる。
    • 不二子:〈野蛮!きちが~い!五ヱ門なんかもう、あっち行っちゃって!〉
    • 五ヱ門:〈失礼つかまつった。では、拙者は退散いたす。ンフフフフ、アハハハハ!〉と不敵な笑みを浮かべ、愉快そうに扉から出ていく。
  5. 時計が【14時の鐘】をうつ。
    • ルパン:立ち上がり〈仕方がない。次元、あれやるか!〉
    • 次元:〈えっ?やー、あれはいかん、あれは。まだ、計画の途中だ。〉
    • ルパン:〈しかしだな、あれ以外に30億なんて【現ナマ】を手に入れる方法はないんだぞぉ!〉
    • 次元:〈ん…〉と頬杖をつく。
    • 不二子:二人の言動を見守っていたが、立ち上がり〈ねぇ、ルパン。なーに?あれって。〉
    • ルパン:〈ルパン一家の華麗なる泥棒作戦さ!〉と、ジオラマを披露する。
    • 不二子:〈まぁ、これは!〉
    • ルパン:不二子の声にかぶせるように〈そう、経済省印刷局大東工場。まっ、つまり、なんだ。手っ取り早く言っちまえば、お札をわんさか作っているとこってわけ。〉
    • 不二子:〈それで?どうするの。〉
    • ルパン:〈なーに。オレたちの手で【30億の現ナマ】を刷り上げちまおうってわけ。〉
    • 次元:〈うまくいけば…の話だけど?大体、ルパン一家ともあろうものが、完全に仕上がっていない計画を実行に移すなんて、オレは気に入らねぇな。
    • ルパン:〈うまくいくか、いかねぇかなんて。そんなものは、やってみなきゃ分からないじゃねぇかよ。
    • 次元:〈やってみなくちゃ分からねぇか…。(ここで、一瞬、白目をむいたようにみえる次元の顔がたまらん)プロフェッショナルの言葉じゃねぇな~。〉と、時計が【15時30分】の鐘をうつ。〈ワカリマシタ。ヤリマスヨ。
  6. 暗がりに堂々と照明を放ち、ドーンとかまえた趣の印刷局がみえてくる。門の前に、車をとめるルパン。不二子は〈もう、【20時20分】。〉とつぶやく。〈やーれやれ。土曜日だっていうのに、どうして日本人ってのはこう、残業が好きなんだろうねぇ。仕方ねぇ。もう一回りしてくるか。〉と、再び、車を走らせる。〈ねぇ、ルパン?ところで、あなたたちの計画ってどこまで進んでいたの?〉と不二子。助手席に座る次元が〈ここまでさ。〉と小道具を取り出し、後部座席の不二子にみせる。不二子は訝し気に〈なーに?これ。縄梯子?〉〈そう。おととい、街の雑貨屋で買ってきたばかりなんだ。〉と次元。〈はん?〉と不二子。
  7. 再び、印刷局正面玄関。〈なんたって、時間がねぇんだ。いっちょ、行ってみるぜ!〉と、縄梯子を壁に引っ掛け登り始める。ところが、壁のてっぺんに手をかけた途端、すさまじい電流がルパンを襲い、転げ落ちる。〈ちきしょー、高圧電流が流れていやがった。〉そこへ、警報が鳴りだす。次元は用意しておいた鼠を、素早く壁の上へ放り投げる。〈おぉ!いたいた…〉と鼠に気づいた警備員。〈なんだ~、鼠の悪戯か…。まったく人騒がせだぜ。〉とあっけなく立ち去る。
  8. 腕時計は【22時】を指している。
    • 不二子:車内にて〈まったくもぅ!一体なんてザマなの!塀の上に電流が流れていることくらい分からなかったの?〉と右こぶしを突き上げ、悔しがる。
    • 次元:〈だからいったじゃねぇか。まだまだ、計画の途中だった。〉
    • 不二子:〈途中もクソもあるもんですか!そういうのは【無計画】って言うんです。〉と、ふて腐れて後部座席に横になる。
    • ルパン:バツの悪そうな表情を浮かべて〈あと、7時間…。名月よ、あと7時間なり、わが命か…。トホホホ。〉と、頼りなさげに満月を見上げるルパンの目に、大売り出しの垂れ幕を提げた【アドバルーン】が飛び込んでくる。目に輝きが戻ったルパンは〈ん…?アドバルーン!でけた!〉と叫ぶ。
    • 車を勢いよく飛び出していくルパンに続く次元と不二子。階段を駆け上り、アドバルーンの出所に辿り着く。
    • ルパン:〈ルパン三世、まだまだ天に見放されちゃ~いなかったぜ。〉と指をならす。
  9. アドバルーンに乗り込んだルパンと次元。不二子は、見張り役。アドバルーンを操作し、二人は工場の屋上に辿り着く。〈聞こえるか?ルパン。〉〈あぁ、景気のいい音だこと!〉。工場内では〈カシャーン、カシャーン〉と規則正しい音で、莫大な数のお札が刷られている。ルパンは、空調の吹き出し口に、薬液を紛れ込ませて、通気口の隙間から、スタッフ全てが寝てしまったことを確認する。防具マスクをつけたルパンと次元は、工場内に潜入し、屋外で見守る不二子へと手を振る。不二子は満足げに〈さすが、ルパン。〉と言いつつも、腕時計の針が【23時】を指すのを確認して〈あと6時間か…〉とつぶやく。出来立ての札束を手際よく、袋で待ち受けるルパンと次元。1時間で、袋の中は10億の札束でいっぱいに。〈10億で約1時間か、ということは(深夜)2時には任務完了だな。〉とルパン。
  10. その頃、1台の車が工場の表門に到着していた。不二子は車に気づくと〈あら~?今頃どうしたのかしら。〉と呟く。警備員は、夜間窓口の受話器を手に【リリリリリーン♬】と、工場内の黒電話を鳴らす。ギクリとするルパンと次元。ルパンは恐る恐る受話器に手を伸ばす。〈どうして、すぐ出ないんだ!〉と憤る警備員に、ルパンが無言〈…。〉で応じると、〈フハハ。残業疲れか?ところで、主任はいるかい?〉と話す。〈はいはい、主任さん、お電話。〉と、ルパンは受話器を次元に渡す。〈え~?〉と矛先をむけられて怯む次元。気のよい警備員は〈よぅ、こんばんは!あれ?どうしたい。いつもと声が違うな。えぇ!風邪ひいた?そりゃ、気ぃつけなあかんな。まぁ、今度、一杯やろうや。ハハハハハ。あっ、現金輸送車が到着したぜ。ところで、今夜の分できたかい。あっ、そうか。機械の調子が悪いのか。〉工場内では、次元が冷や汗をかきながら〈そうなんだよ、それでその2時間や1時間ほど遅れるんだ。〉と応じる。すると〈仕方がねぇな。よぅし、分かった。じゃ、1時間経ったらそっちへ行くぜ。〉と電話を切る。〈へぇ…〉と胸を撫でおろす次元。〈バカヤロウ!いきなり人に電話を回すヤツがあるかよ!〉と次元。〈おぅ、悪い悪い。〉と言いながら、ルパンは作業を続けている。〈それより、1時間経ったら、下の連中があがってくるんじゃないですかねぇ。〉とルパン。〈そうだ、こうしちゃいられねぇんだ。〉と急ぎ、次元も作業に戻る。早送り【2倍速】の勢いで、せっせと働くルパンと次元。
  11. 階下では、警備員たちが将棋をゆるりと、指していた。〈あぁ?おい、もうそろそろ、上に行くんじゃないのか。〉と、見あげた時計は、【深夜1時】になろうというところ。〈あぁ、時間切れか!残念。じゃぁ、ちょっと行ってくるわ。〉と腰を上げる。その頃、ルパンと次元は10億×3袋の現金を担ぎ、せっせと階段を上っていた。懐中電灯を手に警備員が扉をあけると、そこには、倒れている女性の姿が。双眼鏡で見守っていた不二子は〈成功したんだわ。あの連中。〉と、ルパンと次元が袋をアドバルーンに固定する様子を眺めている。ルパンが手を振り不二子に合図を送ったまさにその時、パトカーのサイレンの音が響いてくる。〈しまった、バレた!急げ、次元。〉と急ぎ飛び立とうとするが、思うように動かない。〈札束が重すぎるんだよ…。頼むぞ、不二子!〉とルパン。不二子は、アドバルーンの操作に手動で挑むが、リールが重すぎて動かない。
  12. 銭形警部率いるパトカーが到着し、空を見上げた銭形は〈小隊、構え。目標アドバルーン、撃て!〉と、勢いよく銃弾を放つ。すると、バルーンを銃がかすめ、ガスがもれ始める。ルパンは、瞬時に、一か八かとナイフを投げ、不二子が操作している本体に通じる縄を切る。銭形たちから遠ざかるように動き出したアドバルーン。〈くそぅ、逃がすな。撃て撃て!〉と息巻く銭形に〈あばよ、銭形さん。〉と、インクまみれの姿で手を振る。〈あの、気球を追え!遠くへは飛べないはずだ!〉と銭形。そしてパトカーに乗り込み〈気球は、市の中心部に向かっている。前線非常線を張って、道を絶て!〉と指示を飛ばす。勢いよくガスがもれ続けるアドバルーン。そうして、煙突に激突してしまう…が、ぶつかった衝撃で煙突は折れてしまい、アドバルーンは、ガスを噴射しながらも、なんとか移動を続けていた。〈チッキショウ…。どんどん、降りるようだぜ。〉とルパン。そこになおも、銭形率いるパトカーが迫ってくる。
  13. とある一軒家のアンテナにぶつかり、屋根を破壊しつつも、まだアドバルーンの勢いは止まらない。そして、とあるマンションの一室のバスルームに、バルーンから落ちて1人突っ込んでしまったルパン。顔面に桶をぶつけられながらも逃走し、再び、次元と合流する。そうして〈やるぞ、ルパン…〉と言って、次元はバルーンと30億が入った袋を固定していた縄を切る。頭から地面におちて大きなタンコブをつくったルパン。銭形は、その異変に気づかず〈よーし、もう一息だ!〉と気球を追っている。次元は〈あー、なんとかごまかしたな。〉と言うが、〈ヤツら、すぐに戻ってくるぞ!〉とルパン。だが、30億円分の札束入りの袋が重くて、うかつに移動することができない。すると、ルパンの目に古びた倉庫が飛び込んでくる。〈いよっ、あそこに隠れようぜ!〉
  14. 【午前4時】。造幣局の工場を襲った二人組のニュースが流れ、まだ犯人確保には至っていないことを伝えている。アジトでは、ウロウロと歩き回る不二子と腰を据えて座る五ヱ門が待機していた。気球が発見された模様…と報じるニュースに、一瞬、目を輝かせる不二子。だが、腕時計を眺め〈あー!あと、45分。〉と呟く。現場では、銭形が〈クソゥ、途中で降りやがったな。いいか、奴らは重い札束を抱えている。絶対、遠くには逃げられん!ここと大東工場までの間をしらみつぶしに捜索しろ!〉と部下たちに命じる。銭形は、ルパンたちが逃げ込んだはずの倉庫の前に、苦虫を噛み潰したような顔をし立っている。〈警部、ダメです。猫の仔一匹見当たりません。〉〈草の根をわけてでも探し出すんだ。〉〈そんなこと言ったって…。みりゃ分かるでしょう。〉〈バカ野郎!そんなこと分かってる!クソゥ、ルパンのヤツ。奴はともかく、札束まで消えたなんて…こりゃ。〉と銭形。
  15. アジトでは不二子が〈あー、あと30分!五ヱ門?あんた仲間たちが危ないってのに平気なの?〉と焦りを募らせていた。〈安心しろ、帰ってきたぞ。〉五ヱ門すると、扉が開き、疲れ果てたルパンと次元が〈いま、帰った。〉と姿を現す。〈ルパーン!〉と喜ぶも束の間、〈んっ?あぁ、手ぶらなの?〉と素に戻る不二子。〈フフフ…ん、まぁ、話はあとで。〉と肩で息をするルパンと次元。時計の針は【16時45分】を指している。〈とにかく、星影銀子のところへ行こうぜ。〉ナイトクラブ〈ATRANTIS〉にて。〈…というわけだ、マダム。30億は確かに確保したんだが、引き渡す時間がないんだ。〉と説明するルパン。引き渡しまで少なくとも、あと3日は必要だというルパンに、マダム銀子は、パイプの煙をフーッと吐き出し〈よろしい。では3日後の午前5時にということにしましょう。〉と、応じる。腕時計は約束の24時間、17時まで【残り3分】足らず。〈それより、あと3分しか…。〉とルパン。銀子は〈時計を外してあげなさいな。〉と部下に命じる。こうして、ルパンたちは時限爆弾の期限の17時まで【残り3秒】というところで、無事に解放される。〈ほぅっ、あぁ、助かった。〉と胸をなでおろすルパン。が、そこに〈きゃぁ~、助けて!〉と不二子の声。二人の男から銃口を突き付けられた不二子を、約束の日までの人質にとるという。不二子は〈いいの、ルパン。信じてるわ、私。〉と言い、ルパンは感無量の面持ちで〈不二子ぉ。そこまで、オレを信じてくれているのか…〉と応じる。
  16. 約束の【3日後の5時】。とある倉庫前に2台の車がやってくる。倉庫の扉を開けると、中は空っぽ。ルパンは〈えぇ、銭形のヤツも、まさか、この空っぽの倉庫に、あの大きな包みがあるとは思わなかったろうけどね。ところが、札束ってやつはねぇ、一列にズラーッと並べるとね、案外、かさばらないもんで。〉と、背後の木板の壁を肘でたたく。すると、木板がバラバラと外れて、壁一面にうず高く積まれた札束が出てくる。〈あぁ!〉と感嘆の声をあげる銀子。ルパンは、札束が崩れ落ちてくるのを背にして、愉快気に笑う。無事に取引が完了し、ルパンは〈さぁ、それじゃぁ、不二子の身柄を返してもらおうか。〉と言うが、不二子は〈あぁ…、あたしのこと、ダメよ、私。忙しいの。だって、早く帰って【分け前の勘定】しなくちゃならないんですもの。また会いましょうね、ルパン。楽しかったわ。〉と、銀子の車に乗り込み去っていくというオチ。
  17. 〈ルパン。まぁ、そう気をおとすなよ。お前の気持ちは、よく分かる。ん。〉と、ルパンの肩を抱く次元。ルパンは〈今、何時だ?次元。〉〈あー、【17時30秒前。】〉〈そうか…。不二子のヤツ、かわいそうに。〉と意味深に言うルパン。その頃、車中では、銀子と不二子が満面の笑みを浮かべていた。〈実は、夕べ。あの車に細工しといたんだよ。17時きっかりに【ガイーン】〉〈あぁ?〉すると、銀子たちの乗った車の一部が爆発する。後部座席に座った銀子と不二子の髪の毛は、散り散りに。爆発の衝撃で、札束は宙を舞う。〈あぁ、お金~!〉と、二人の美女の声が響き渡ったかと思うと、嬉々洋々として…事故の衝撃でおかしくなってしまった不二子と銀子は、宙を舞うお札をみて〈キャッキャ♬〉と声をあげ、お金をかき集めるのでした。その様子を見たルパンは、愉快そうに笑うが、次元は〈いくらなんでも、勿体ないなぁ。〉と少し浮かない表情を浮かべる。すると〈あいつは、使えないんだよ…〉とルパン。〈なに?〉〈印刷所でな、ちょっと【悪戯】しといたんだ。〉風に乗って次元の手元に舞い落ちてきた【1万円札】には、聖徳太子に成りすました【ルパンの顔】が刻印してありましたとさ。〈…ンフフフ…ンハハハハ♬…〉おしまい。

 

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◆こうゆづ的*第十七話の№1シーン

最終場面での美女二人の壊れっぷりは、ぜひ、映像で見てほしい!アニメーションならではの演出が、かなり愉快な作品です。みどころ№1シーンは、最後、ルパンの悪戯に沸き、男二人がしてやったり!と笑うシーン、あるいは、アドバルーンでの逃亡シーンでしょうか。息の合った二人の飛行ぶりは、痛快にして爽快。また、造幣局の工場でのルパンと次元の働きっぷりも、見ていて清々しい。なんだかんだ、仕事熱心な二人が健気で、可愛らしくみえてきます。わが身の命に危険が迫っている場面ですからねぇ…。当然と言えば、当然なのかもしれませんが。

上記にあげた見どころシーンは、あくまで一般論でのお話。個人的に好きな場面は、次元が絡むシーン。中でも、ナイトクラブでルパンに負けず劣らずはっちゃける場面と造幣局の工場でルパンに受話器を渡されて、難局を乗り切る場面。ルパンのムチャぶりに応じて、大役を終えた次元がホッと安堵の息をつく場面には、次元本来の生真面目さや人の良さが伝わってきて、温かい気持ちになります。

また、個人的に引っ掛かりを感じるのは、五ヱ門の登場シーンの台詞の数々でしょうか。今作での五ヱ門の立ち位置、役割をどのように捉えたらよいのか…判断が難しいところです。単に、ブラックユーモアで流せばよいのでは?…と思うものの、なんだか、しっくりこない。どことなく演出が、中途半場な気がします。

私は、五ヱ門のキャラクターに限って言えば、ルパン三世に初登場した五ヱ門の潔いほどに融通が利かず、頑固で生真面目な感じと、不二子ちゃんをガールフレンド呼ばわりする甘酸っぱさを兼ね備えた感じが好きです。

途中から演出を引き継いだ【Aプロダクショングループ】は、五ヱ門という人物に、あまり魅力を感じていないのか、はたまた、掘り下げる方向性を探っている最中なのか…。んー、五ヱ門の魅力が、十分に描き切れていないように感じるのは、私だけでしょうか。魔毛狂介が登場する【第13話】あたりが過渡期でしょうか。その頃から、五ヱ門のキャラクター設定にブレが感じられ、どことなく胸騒ぎのような、落ち着かない違和を感じます。

少し、話がそれました。さて、今回の女主人〈月影銀子〉は、宝塚歌劇団のトップスターのような華やかな名前に負けず、そのキャラクターの堂々たる演じっぷりは、お見事です。しっとりとした丁重な口調の中に込められた、かましく強かな【メッセージ】には、二面性の対比が垣間見えて、とても惹きつけられます。キャラが立っているのがよいです。以下は、月影銀子の人柄を象徴する名言集です。

  • 拘束したルパンたちを前に〈あー、本当に美味しいお酒だこと。〉とカクテルを煽る。銀子は、空になったグラスを置き、振り向きざま〈お気に召しまして?その時計は、時限爆弾が仕掛けてありますのよ?なかに…。〉
  • 私は、かねてから、あなたがたの盗みのテクニックに興味を抱いておりましたの。でも、いかにあなた方が優秀でも、その時計は外せませんわ。なぜならば…あの時計を壊したり、または、分解しようとして、余計な力をちょっとでも加えると…〉と話し、ルパンたちに、同じ型の時計を装着したモデル人形が、木っ端みじんに吹き飛ぶ映像をみせる。
  • 〈ご安心なさい。皆さんの腕時計は、あと24時間は爆発しないようになっていますから。アハハハ。そうです。【明日の朝の5時】までは。〉
  • 〈もし、あなたがたがもう一度自由を回復したいとお思いならば、あなた方はあなた方自身の【身代金】を払わなければなりませんの。身代金は1人につき、たった10億円。3人でわずか30億円ですわ。アハンッ。たやすいことでしょう?あなた方の一流のテクニックをもってすれば…。とにかく、時間は24時間。30億と引き換えに、時計は外して差し上げますわ。オホホホホホホ。〉
  • ルパンが仕事の成果を説明する場面で、パイプを片手に〈ニュースで聞きましたわ。警察でも札束が見つからなくて天手古舞しているようね。いつ、引き渡していただけるの?
  • 腕時計の時限爆弾解除直後、〈時計の代わりと言っちゃぁなんですが、約束の3日後まで不二子さんの命を預からせてもらいます。
  • 約束の日。倉庫の中をみた銀子は〈あら、伽藍洞じゃないの。30億なんて、一体どこにあるの?〉と冷たく言い放つ。
  • 不二子を返してもらおうというルパンに〈そうね。そういうお約束でしたわよね。ねぇ、不二子さん、ルパンのところへ行くの?〉と問いかける。

うーん。さすがナイトクラブの女主人!肝がすわっています。女性に寛大すぎるルパンですが、今回の対決相手は、分が悪すぎるような…。ちょっと、気の毒です。

今作は、30分という時間が、たっぷり贅沢に使われている感じがします。二転三転する展開をみていると、60分くらい鑑賞したような高揚感に包まれるから、不思議です。要所での【時間経過】を知らせる演出がとても効いています。ということで、なんだかんだ、ツッコミながらも、分かりやすく冒険が楽しめる良作に、変わりはない!

冒頭でも書きましたが、こうゆづ的には、ぜひぜひ、アニメーションで堪能してほしい作品です。本作については、もう少し、違う角度から掘り下げてみる予定だったのですが、アニメーションの演出までなぞってしまったことで…うっかりと【10,000文字】に迫る勢いに。おあとがよろしいようで…。本日は、ここまでといたします。 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)

LUPIN THE THIRD FIRST TV『016:宝石横取り作戦』争奪戦、開幕!宝石は誰の手に?

ご訪問ありがとうございます。こうゆづ☆です。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くというだけの試みの16回目。高畑・宮崎コンビ(Aプロダクション)のディレクションが主流になり、定着し始めた今作。

ルパンの愛車が前回のベンツSSKからフィアット500に変更。峰不二子の髪型もロングからショートスタイルへ。フィアットは、初回シリーズから現在も活躍中の作画監督大塚康生さんの愛車の1つなのだそう。高級車から大衆車へ…車好きなら、非常に興味深いチョイスですね。こういったアイテムへのこだわりも、体制の変更に伴う特徴を色濃く演出していくための〈自然な流れ〉なのかもしれません。

また、今作16話のためだけにアレンジされたオープニング〈♬ルパンルパンルパン~♬〉は、銭形警部の報告書という想定で、主要キャラを紹介する仕掛けになっています。銭形警部の声を担当する〈納谷悟朗さん〉のナレーションが渋くも、溌溂してイイ!惚れ惚れします。それでは、本日もルパンとその仲間たちに会いにいってみよ~!

 

第十六話『宝石横取り作戦』(1972年2月6日放映 / 脚本:七條 門)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子・銭形警部・ビーバーとその仲間 

冒頭、海岸の砂上にうつぶせになって敵情を視察するルパンと次元。〈本当に来るのかねぇ。峰不二子の持ってきた情報なんだろう? あいつの情報と天気予報くらいあてにならねぇもんはないんだから、まったく。〉と次元。双眼鏡を手に〈んー、だけどビーバー宝石店の動きが怪しいってのは本当なんだ。〉とルパン。〈ビーバーといや、超一流の宝石店だ。そいつが密輸ダイヤで荒稼ぎ。ホントなら面白れぇ。〉と次元が煙草に火をつけようとしたそのとき、ルパンは手で制し〈シッ!今、何時だ?〉〈11時だ。〉〈来たぜ、11時ジャスト。不二子の情報にしちゃ正確だ。〉とニヤリ。

  1. 一艘の密輸船が到着し、高級車が出迎える。見張りは、銃を携帯するという厳重な警戒ぶり。
    • 次元:こいつは思ったより、大げさだぜ。
    • ルパン:30億円分のダイヤだからな。
    • 次元:やるぜぇ!(腰をあげ、今にも飛び出していこうとする。)
    • ルパン:待て。今夜はこのまま引き上げよう。
    • 次元:バカ言うな。ダイヤを店に運び込まれたら、やりにくくなるだけだぞ、オイ。
    • ルパン:周りをよく見てみろよ。
    • 次元:ふーん、いつの間に。気がつかなかったぜ。
    • ルパン:(崖の上にいる人影をみて)あれだけじゃねぇ。全部で30人はいるぜ。
    • 次元:驚くことはねぇや、この擲弾筒でぶっ飛ばしてやるぜ。
    • ルパン:それにな、不二子がどうしてこんなネタをオレ達にくれたか…だ。
    • 次元:そんなことはどうでもいい。こんなダイヤを見逃す手はないんだ。
    • ルパン:とにかく、今夜はやめとこう。
    • 次元:けっ…。(と、渋々引き上げる。)
    • 不二子:(待ち合わせ場所で)ルパン、守備はどうだった?…それで、ダイアモンドの山を目の前にして、指をくわえて待っていたわけ?
    • ルパン:んー、君子危うきに近寄らずだ。
    • 不二子:なによ!せっかく、とっておきの情報をあげたのに。(と、ギアを入れ変え、思いっきりアクセルを踏み込む。)
    • ルパン:やめろよ、あぶねぇな。
    • 不二子ルパンが聞いてあきれるわ。あなたのお爺さんのアルセーヌ・ルパンだったら、目の前の獲物を見逃すなんてしなかったでしょうね。
    • 次元:まぁ、それについては、オレも同意見だ。
    • 不二子初めて会った頃のルパンは、少しムチャなところがあって、それが魅力だったわ。まっ、諦めましょう。30億円の密輸ダイヤだけど、店に運び込まれたら、ちょっと手が出せなもの。街中じゃ銭形もいるし。危なすぎるわね、仕方ないわ。ねぇ、ルパン。
    • ルパン:あったま、来た!やりゃ、イイんだろう、やりゃ!たかだか30億のダイヤだ。訳ねぇ!
  2. ところ変わって、ビーバー宝石店。入店した不二子を店主のビーバー自らが接客。560万円のエメラルドを、気品が欠けると切り捨てる不二子に〈お目が高い!ダイアモンドでしたら、新しいのがあります。当店自慢のコレクションでございます。〉と勧めるビーバー。そこへ〈こんにちは!〉と、バキュームカーのホースを手にトイレの清掃業者に変装したルパンが、表玄関から堂々と入ってくる。〈キャー、汚い…〉と、店内にいた客たちは、迷惑そうな顔をして、店の外へと出ていく。
  3. 〈トイレはどこですか。〉と、ルパン。〈裏に廻りたまえ、外からまわれ。出ていくんだ。〉というビーバーに、なおも〈トイレはどこですか。〉と構わずに突っ込んでいく。店の前に〈工事中〉の札を置いた次元も〈トイレはどこですか?〉と入店する。〈つまみだせ。出ろ!〉と言われて、〈こりゃ、とんだ粗相を…。〉と、バケツをひっくり返す。中身は、粘りのあるボンドのような液体で、店員たちは手足をとられて動くことができない。〈貴様たち、清掃局の人間じゃないな。非常ベルだ、警察を呼べ!〉というビーバーに、次元は〈騒ぐんじゃない。〉とガムテープで口をふさぐ。
  4. 〈よぉ、不二子ちゃん!ほんじゃまぁ、いらっしゃい。〉と、ルパンは掃除機の要領で、ホースから次々と宝石を吸い込んでいく。こんな金庫は、チョチョイのチョイと、金庫を破り〈おぉ、イイ眺めだこと!はい、一丁あがり。ニヒヒヒ。これで、おーしまい。〉と、密輸ダイヤを全て吸い込んだところで、不二子が〈あら。もう帰るの?〉と声をかける。〈あぁ。計画は全て完了だ。〉というルパンに〈そう。それじゃ、これは放っておくのね。ルビー・エメラルド・サファイア…。やるとなったら、とことんやるのが男じゃないこと?アルセーヌ・ルパンなら、きっとそうしたわ。〉と迫る。そこへ次元が〈ルパン、なにしてんだ。予定よりも、3分も遅れているぞ、急げ!〉と声をかける。不二子は〈銭形がなんていうかしら、ルパンのヤツ慌てて、ずいぶん残していったな。〈うるせぇ!やりゃ、イイんだろう。〉と、ムキになるルパン。
  5. 店の外では、次元が腕時計をみて〈予定より6分も遅れてる。なにしてやがるんだ。あぁ~!〉と、ビーバー宝石店に近づく二人の女性の姿が!〈あら、このお店ったら、まだ水洗じゃないのかしら。ビーバー宝石店といったら、一流なんでしょう。(と言いながら、店をのぞき込み)泥棒よ!110番。〉と、走り去っていく。〈しまった!〉と、焦る次元。【リリリーン♬】と黒電話が鳴り〈なに、白昼堂々の宝石強盗?よーし、ルパンに違いない。出動だ!〉と銭形は飛び出す。〈そーれ、そーれ。まーだまだ、ありますね。それそれ。〉と、店内の宝石を根こそぎ吸い取るルパン。〈おいっ、ルパン。ばれた、ひきあげよう。おい、どうしたんだ。予定外の行動は命取りだぞ。おいっ。〉という次元に、〈うるせぇ。ほれっ。命令はオレが出す!〉と応じるルパン。最後に、ウインドウにディスプレイされている宝石まで吸い取り〈さーて、おしまいだ。あれー?不二子ちゃんのヤツ、いつの間にいなくなっちゃったのかなぁ。まぁ、いいや。〉と、宝石店を後にする。
  6. 銭形のパトカーと、宝石店のすぐ側ですれ違ったルパンたち。〈あのバキュームカーを追え!〉と銭形。〈例によって、銭形のとっつぁんだ。次元、計画№2で行くぜ。〉とルパン。〈てやんでぇ。予定より13分遅れちゃ~、№2はダメ。〉と次元。〈じゃぁ…。計画、№ナシでいくか。そこへ、〈ルパン、神妙にお縄を受けろ。止まらんと発砲するぞ!〉と銭形。ルパンたちの車は、四つ角で〈袋の鼠だ!〉と、銭形率いるパトカー3台に前方を包囲されてしまう。が、そこは、ルパン。バキュームカーの後部から、愛車で飛び出し、爆竹を投げて逃げ切る。戦利品を手にご満悦のルパン。けれど、自宅に戻る途中で、前輪がパンクしてしまう。キョロキョロ、人影ナシ。〈狙撃されたのかと思ったぜ。〉と次元。〈もうすぐオレん家だっていうのに。ついてねぇな、あれだよ!〉と、ルパン。車の後方には、釘の入った箱が落ちている。〈へんっ、計画通りやってりゃ、こんなことにはならなかったんだよ。〉と吐き捨てる次元。
  7. そこへ1台のトラックが通りかかる。〈すまねぇ。ちょっと、スタンドまで引っ張ってってくれないかな。〉と、たのむルパン。トラックの運転手は〈助手がいないので、お客さんが自分でつないでくれないか〉という。〈まかしとけよぅ、助かるぜ。〉と、トラックに車をつなぐルパン。よーしあげろ!はいストップ。と、車をトラックに乗せた瞬間に、走り出すトラック。運転手は、不二子の変装で〈さよなら、ルパン。どうもありがとう。車はスタンドに置いておくわよ。〉と、走り去る。地団駄踏むルパンと次元。
    • 銭形:クッソゥ、ルパンめぇ~ンンン。
    • ビーバー:くっそぅ、ルパンめぇー、んん。
    • ルパン:くっそ〜、不二子め!(三人とも、同じ構図で左から右へと歩き回る演出が楽しいシーン)
    • 次元:ルパン!不二子のヤツは、3日前に飛行艇を買い込んでるぜ。(と、ドアを開け、駆け込んでくる)
    • ルパン:んー。国外逃亡か。行くぜ、次元!

  8. ルパンは、ビーバー宝石店へ電話すると、まもなく小国海岸から赤い飛行艇が飛び立つが、そこに強奪した宝石が積み込んであると情報を流す。その頃不二子は、〈さよなら、ルパン。また会う日まで…〉と、赤い飛行艇に乗り込み、自動操縦でカフェを楽しんでいた。そこへ、ビーバーの乗ったブルーの飛行艇が目の前を横切る。その空中遊泳を車から見守るルパン。〈おぉ、!やってる、やってる。しかし、時間の問題だね。そーれ、あっちだ!〉と車で追う。ビーバーは〈よーし、ここで落とせ〉と指示して、予定の場所(陸地)で、不二子の乗った飛行艇を撃ち落とす。不二子はパラシュートで脱出。〈さすが、美女!頑張るんだわ。そりゃ、あっちだ、あそこだ!〉と、車で追うルパンたち。
  9. 大型のトランクを二つ手にした不二子が木にひっかかっている。〈あはははは!イイ眺めだこと。〉と茶化すルパン。〈ルパン、お願い助けて!〉と不二子。〈あぁ、いいとも。その前にその大きなトランクを手から離しなよ。〉抵抗する不二子に、奥の手だと、UFOキャッチャーのようなアームを伸ばして、コチョコチョとくすぐるルパン。たまらず、大きなトランクをおとす不二子。なおも、助けを求める不二子に、次元は〈うるせぇ、裏切り者め、日干しになればいいんだ。〉と言う。不二子も負けじと〈なにさ。宝石を取り戻したんだから、もう、いいでしょう。おろして、ルパン。ルパン。私を置いていく気?〉とすがる。ルパンは〈悪いけどね、不二子ちゃん。これ二人乗りなの。それにビーバー一味がすぐにいらっしゃるでしょう。〉と言いながらも、木に引っかかった不二子の命綱を銃で撃ち、助ける。顔から地面へ落ちた不二子は〈ひどい~。〉と恨みがましく不満げな表情でみあげる。〈じゃーね、ほいちょ、ほいちょ、ほいちょ♩〉と、坂道を下りながら、次元と2人で助走をつける。ところが、不二子が必死の勢いで追いすがり、飛び立つ寸前て、ルパンの足をつかむ。〈これは、二人乗りなの。落っこちちゃうじゃない。〉〈私も連れてって。待ってぇ~。〉と、不二子の重みで、あっという間に、地面に崩れ落ちる。〈えへへへへ。〉と、してやったりの不二子。
  10. そこへ、ビーバー一味が現れる。今しがた下ってきた坂道を不二子は、先頭で走り出し、途中で脇道の穴に飛び込む。次元とルパンは、坂の頂上にある小屋に駆け込む。〈急げ!奴らは袋の鼠だぞ~。〉と、坂道を駆けあがっていくビーバーの部下たち。だが、ルパンに手榴弾で応戦され〈助けてくれぇ~。〉と逃げ出す。〈森まで退却だ~〉と退避するビーバーたち。時間稼ぎで、小屋に立てこもるルパンと次元。〈このままでは、埒があかん。近寄れば、狙い撃ちだし。そうだ!爆薬をもってこい。ルパン、今に吠え面かかせてやるぞ。〉とビーバー。窓の側でビーバー一味を向かい撃つ姿勢を崩さない次元は〈やけに静かだな…〉とつぶやく。ルパンは〈この間にお宝の顔を拝むとしようぜ。〉と、トランクの中身を確認する。〈うわ~、すげぇ。〉と目を輝かせるルパンと次元。
  11. 小屋の外では、不二子がビーバー一味の動向を見守っていた。ビーバーの部下たちの動きに気づいた不二子は〈小屋を爆破する気だわ。ルパン、大変よ。この小屋の下に爆薬を仕掛けているわ、谷底に宝石ごと落とそうってわけよ。〉と、ルパンたちが待機している小屋に知らせに行く。〈なんだって?ビーバーにしては上出来だ!〉とルパン。〈そんな、のんびりしているときじゃないわよ…〉と急かす不二子に、〈そんなことを言って、また騙すんだろ…〉とルパンは応じる。〈あーら、死にたいんなら、どうぞ!知らないから。あれ…?こっちに撃ってるんじゃないわ。〉と不二子。〈森にむかって撃ってるぞ!〉と次元。
  12. 森から出てきたのは、銭形警部率いる警官の装甲車。ビーバー一味は、応戦するも、あっさりと包囲されてしまう。〈銭形!まずいぜ、こりゃ。〉と次元。銭形は〈雑魚どもをさっさと連行しろ。〉と部下に指示し、〈オレの目的はルパン逮捕のみ!〉と執念を燃やす。〈ルパン!お前たちは包囲された。観念して、お縄を受けろ。さっさと出てこい、ルパン!〉すると、小屋から杭のついたロープが投げだされ、隣の峰へ固定される。〈ロープで逃げる気だな。〉と、すぐに小隊と共に、地上から追う銭形警部。〈イヒヒヒ。あばよ、とっつぁん…〉そうして、小屋の基礎部分が爆薬で破壊され、小屋本体のみがロープを伝い、滑車の要領で、隣の峰へと動いていく。〈小隊、構え。撃て~!〉と発砲した銃弾は、小屋の外観を破壊するが、ルパンたちが乗っている滑車の床板には届かない。〈あははは…〉と笑うルパンたち。が、そのとき、床板の端に載っていたトランクが傾き、すかさず〈あぁ、私の宝石が!待ってぇ。〉と、不二子がトランクの持ち手を引っ張るも、蓋が開いて〈あらぁ~。〉と、すべての宝石が落ちてしまう。〈なんだいこりゃ~。〉と、空から降ってくるダイヤモンドを見上げる銭形警部。〈わ~い!ダイヤモンド、ダイヤモンド!〉と歓喜する警官たち。〈宝石がなんだ!〉と、1人、銭形警部はダイヤモンドに目もくれず、ルパンたちが目指す峰をめがけて、〈ダイヤがなんだ!目指すは、ルパン逮捕のみ!〉と、駆け登る。
  13. その頃、ルパンたちの乗った滑車は、ロープのたるみにより中程で止まっていた。〈先を越されるぞ!〉と次元。〈負けるな!〉と必死に手動で滑車を動かすが、一足先に、銭形が山を登りきる。〈勝ったぞ、ルパン!〉と、右手で手錠をグルグルとまわし、左足で杭を踏みつけ、ギャハハハハと勝ち誇った笑いを浮かべる銭形。すると、ロープを打ち込んでいた杭が外れる。思わず、杭に手を伸ばす銭形。〈ここで逃げられては、全てが水の泡!〉と、踏ん張るが、ちょうどよい具合に橋渡しとなり、銭形警部の背中の上を通って、ルパンたちは、悠々と峰へたどり着く。〈やめろ、落ちる!もうだめだ~。〉と、踏ん張った足をこらえられなくなった銭形は〈アァー〉とばかりに、元いた峰へと逆戻り。〈お達者で~!〉と手を振るルパン。〈来週こそは、捕まえてやるぞ。〉と銭形が悔しがるというオチ。

 

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◆こうゆづ的*第十六話の№1シーン

第十六話は、なんといっても作品のテンポの良さが魅力です。わかりやすいストーリーと登場人物たちのストレートな感情表現が、イキイキとした個性を引き出しています。特に、ルパンの性格をよく熟知している不二子が、言葉巧みに揺さぶりをかけて、ルパンを【手玉にとる台詞】の数々は、痛快です。さすが不二子ちゃん!

とはいえ、今作の本命No.1は、銭形の最後のオチから始まる更なるオチへの展開。ルパンの大泥棒魂の潔さが清々しいクライマックスの調べを皆様も、ぜひどうぞ!

  • 銭形との鬼ごっこを終えたルパンたち。定員二人のハングライダーに〈ルパン・次元・不二子〉の三人が無理矢理に乗りこみ、飛び去っていく。
  • キャパオーバーで操縦席に座ることができない不二子は、座席の下にしがみつく姿勢でバランスを保ちながら〈ンもうっ、こんな格好させて。覚えてらっしゃい!〉と毒づくが、〈乗せただけでもありがたく思え。軽くするためにこっちは、裸ちゃんだぞ。〉と、パンツ一丁で操縦席に座るルパンと次元。(もちろん次元の大事な帽子と銃は、しっかりと描かれている。この細やかさが嬉しい。)
  • すると、ルパンが〈あらっ!〉と不二子の髪にキラリと光るダイヤに気づく。〈さっきの残りか…。〉と、ダイヤを手に取るルパン。〈うん。結構、でかいぜ。〉と次元。〈返してよぉ~〉と欲しがる不二子。
  • ルパンは〈こんなしけたダイヤを捕ったとあっては、ルパンの名折れだ、バイバイ!〉と、不二子の頭に光る一粒のダイヤを、地上へと放る。ピカピカと輝きながら、落ちていくダイヤモンド。空には、一粒のダイヤモンドより、ずっと高い輝度の煌めきを放つ三日月が、のほほんと優雅に輝いておりました。おしまい。

 

いやー、イイ!ルパンの大泥棒としてのポリシー、気高さにウットリとする瞬間です。生きててよかったー。不二子は一粒のダイヤにも、それなりに執着を示しますが、次元は口で言うほどには、成果に拘らない性質のようで、サラリと流します。ルパンの有能な相棒である次元は、ルパンの決断にグチをこぼすことはあっても、表立って反発することは滅多にありません。それだけ、ルパンの誇りを信じているのでしょうし、諦めてもいるのでしょう。ホントにルパンは、仲間に恵まれています。

ルパンのアイデアとやる気をとことん引き出す美魔女【峰不二子】、援護射撃が頼もしいクールなガンマンにしてタイムキーパーの【次元大介】、ここ一番の腕が冴え渡るカンの鋭い【石川五ヱ門】。そして、ルパンをどこまでも追いかけ、ルパンを心から愛する執念の男【銭形警部】。ルパン三世は、銭形のとっつぁんという味方にして最大のライバル、好敵手がいるからこそ【神出鬼没の大泥棒】という偉業が許されるのでしょう。そんなことを改めて実感する第十六話でありました。

さて、次回は、まーたまた〈鼻の下を長く〉して、ヒドイ目にあってしまうルパンのお話です。2019年のブログの更新は、本日で最後となります。おつき合いいただいた皆様、本当にありがとうございます。来年は、オリンピックイヤー、閏年ですね。皆さまにとって輝かしい、健やかな1年でありますように!よいお年をお迎えくださいませ。

2020年は、1月13日0時にルパンシリーズ第17話を更新予定です。その前にルパン以外の四方山話をお届けできる予定です。引き続き、遊びに来ていただけると喜びます。今後とも、よろしくお願いいたします!

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)

ルパン三世 FIRST TV『015:ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう!』勝つのはルパンかとっつぁんか?

ご訪問ありがとうございます。こうゆづ☆です。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くというだけの試みの15回目。クレジット表記に変更はないけれど、大隅・大塚コンビから高畑・宮崎コンビ(Aプロダクション)のディレクションへと交代していく流れになっています。

今作は、ルパンと銭形警部の鬼ごっこの回。ストーリーのシンプルな展開、明快さが心地よい作品です。そして、とっつぁんの上司、警視総監がはじめて登場します。第14話の乗船名簿で、銭形警部のフルネームは〈銭形平次〉しかも、〈7代目〉であることが判明。由緒正しき血筋のサラブレッド警部であったわけです。◯代目…同士の駆け引き、なにやら因縁めいたものを感じます。それでは、本日もルパンとその仲間たちに会いにいってみよ~!

 

第十五話『ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう』(1972年1月30日放映 / 脚本:松岡 清治)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子・銭形警部とその部下・金満・警視総監

あらすじ(1~13)

冒頭、警視総監に呼び出された銭形警部が登場。ヨーロッパで開催される世界警察会議、欧米の一流警官との研究交換会への出席を命じられる。しかし、銭形はルパンの予告状が気になる様子。ルパンの狙うお宝は、金満邸にある時価3億円の黄金に輝く【胸像】。他の者に、ルパン逮捕の指揮をとらせるという総監に〈ダメです!総監は恐らく、ルパン逮捕の指揮を他の者にやらせたいようですが、私は交代しませんよ。断固、交代しません。〉と話す。〈ヨーロッパの会議はどうするんじゃ?〉という総監に〈それも私が行きます。ルパンを捕まえた後に、私が行かせてもらいます。〉と日本を発つ前に、ルパンを必ず逮捕すると意気込む。そのやり取りを双眼鏡で見物していたルパンと次元。〈銭形のヤツ、えらくハッスルしてるな。何をしゃべってるんだ。〉と次元。〈ヤツの唇を読んだところでは、【ルパンを捕まえてヨーロッパに行きたい。】〉とルパン。〈こいつは、おもしれぇ。〉と笑う。 

  1. 【シュポッ。】葉巻に火をつける金満。ライターは、自画像をかたどってある。〈頼んますぞ、銭形さん。あの胸像は、ワシの名が万国紳士録に載った記念につくらせた大事なモンですからな。〉〈ご安心ください。いいか、今夜こそルパンを捕まえるんだ。ぬかるなよ。〉と、部下に指示を出す銭形警部。金満邸に忍び込んだルパン・次元・不二子・五ヱ門の4人は、土蔵の中のマントルピース上にある胸像を目指す。切り込み隊長【おとり】は、次元。すぐさまライトで照らされ、警官に追われる。その間に他の3人は散らばり、それぞれの場所から忍び込む。ルパンは、爆弾装置を壁にとりつけ爆破するが、壁は爆弾よけの【特殊金属板】に阻まれ侵入することができない。〈こんにゃろめー〉と金属板を蹴るルパン。しかし、そこには【高圧電流】が流れていた。不二子は小型ナイフ、五ヱ門は斬鉄剣を突き立て、侵入経路を作ろうとするが【防弾ガラス】に阻まれて突破できない。〈いまだ!つかまえろ!〉と銭形の声。ルパンは電流が流れる靴を脱いで、裸足で逃げ出す。塀を乗り越えた瞬間、消えてしまったルパン。降りた場所には穴が開いていた。〈掴まれ、ルパン。〉と、次元に救い出されて、這々の体で逃走する。
  2. 〈あぁ、ヤバかったなぁ。〉とルパン。次元は〈どういうことなんだ、これは。前もってちゃんと調査したのか!〉と声を荒げる。〈そりゃ、つまり銭形がオレの手口をよく研究してたってこったよ。残念ながら…。〉というルパンに、なおも〈違う!お前の作戦が強引過ぎたんだ。つまり、銭形を侮りすぎた!〉と迫る。〈わかったよ。そうイジメるなって。おぉ、いてぇっ〉と、膝を抱えるルパン。一方、ルパンを万全な体制で迎えいれながら、まんまと逃げられてしまった銭形は〈バカもん!なんというふがいなさだ。なんというだらしなさか、あそこまでして、取り逃がすとは!〉と憤る。〈わっしの胸像は無事でしたかの!あぁー、えがった。〉と安心する金満に、〈よくありません!本当によかったといえるのは、ルパンを逮捕した後のことです。〉と応じる銭形。
  3. 【リリリーン♬】と、金満邸の電話が鳴る。〈どうした、ルパンは捕まえたか?〉と警視総監。〈それが惜しいところで逃げられてしまいまして…(モジモジと)まったくもう、【ほんのちょい、ほんのちょい】というところで、失敗したのでありまして…〉と報告する銭形。〈何が【ちょいちょい】だ。ワシはもうこれ以上待てんぞ!〉という総監に〈そこをなんとか、もう一晩だけ。いえ、それがもしダメだったときには、そのときこそ…はい、はい…〉と、冷汗を浮かべて電話を切る。金満は〈ルパンはホントに、明日の夜もくるじゃろか。〉と声をかける。〈来ます!はっきり予告しているんです。〉〈でも、明晩はお休みして、明後日の晩に来るとか。〉という金満に〈いやぁ、明日の晩、必ず来ます。そんなヤツだ。ルパンというヤツは…〉と銭形は即答する。
  4. 金満邸上空をヘリから偵察するルパンと不二子。〈バカめ、何度偵察しても同じことだ。この屋敷の周りには、アリの這い入る穴ひとつないわ。〉とそこへ、部下が〈警部、塀の外に穴が開いています。〉と報告にやってくる。そこには、昨夜ルパンが逃走するときに落ちた穴が。金満によると、この穴は、戦争中に掘った防空壕のひとつで、胸像が置いてあるマントルピースの下まで伸びているという。〈アッチャー〉とすぐさま走り出す銭形。そして、自ら、マントルピース下から穴の中を駆けて、抜け穴の確認をする。〈イヒャハハハハハハ。こいつはいいや!〉と笑う銭形。
  5. 一方、アジトでは、4人そろって、改めて作戦を練っていた。しかし、ヘリ上空から撮影した写真には、超厳重な警戒体制が映し出されるばかり。唯一、突破できそうな【抜け穴】を見つけるが、罠ではないかと、お手上げ状態のルパンたち。そこへ、不二子が、厳重警戒を解く一つだけいい方法があると提案する。それは、ルパンが逮捕されること。その案に、いいアイデアだと乗っかりながら、ルパンは〈まぁ、しばらく様子見ようぜ…〉と、仲間3人をアジトに残して出かけていく。
  6. 金満邸では、銭形警部が〈逮捕or逃がす、逮捕or逃がす、逮捕・逮捕・逮捕・逮捕!〉と花びらをちぎりながら〈来るなら来い!ンンン…〉とルパンの侵入を、待ちわびていた。そこへ部下が〈警部、あのぅ~。〉とやってくる。〈ルパンか!〉と目を輝かせる銭形。金満邸の塀の外にやってくると、【酔っぱらいの男】が、なにやら暴れて居座っている。〈【へべれけ】です。手が付けられないのであります。〉と報告する部下に〈この忙しいときに。連れていけ!酔いが醒めるまでぶち込んでおけ!〉と銭形。〈酔いが醒めたら出してやるよ!〉と檻に入れられた【酔っぱらい】ことルパン。そして、檻の柵に【ある仕掛け】を施す。
  7. 再び、アジト。〈もう夕方だってのに、ルパンのヤツはどこにいっちまたんだ。〉と次元。そこへ、敵の状態を探ってきたと、ルパンが戻ってくる。調べたところ、抜け穴は、罠ではなさそうだという。やはり突破口は【穴】。ここから侵入することを告げ、準備をして待ち構えていた次元を、トラック運転手に任命、作戦に出る。

    次元は、大型トラックを運転し、金満邸の塀の外で止まる。〈そんなところに停めちゃダメじゃないか。〉と警官。〈なに言ってるんですよ。困るのはこっちですよ。みてください、これを。なんでこんな【穴ぼこ】ほっとくんですかい。〉と次元。〈まずいな。おいっ、手伝ってやれ。〉と、警官たちは協力して、脱輪したトラックを引き上げる。〈これでいいだろう、さぁ、早くあっち行ってくれ。〉ところが、今度は、エンジンがかからない。〈困るな、ここに停められちゃ困るんだ。〉という警官に、〈そんじゃ、その先のところまで押してくれませんか。〉と頼む。

    次元が警官を引きつけている間に、茂みから飛び出したルパンは、防空壕の穴へ忍び込む。月夜の晩、穴から空を見上げて〈イイお月様〉と呟くルパン。木の上から、不二子が見守っている。

    トラックのエンジンがかかるまで、警官たちは力を合わせて、次元の乗ったトラックを押し続ける。〈もっと強くだってよ~〉と、そのとき〈…あぁ、かかった…〉と、動き出したトラック。だが、今度は、勢い余って金満邸の【門】に突っ込んでしまう。

  8. 金満邸では、銭形が〈遅い!〉と時計をみつめ、ヤキモキしている。ウトウトしていた金満は目を開けて〈遅いですな。今晩は、やっぱりお休みするんじゃねぇんすか。〉と応じる。〈いや、もうひょっとしたら、足元まで来てるかもしれません。〉と、意味深に微笑む銭形。その声にルパンは〈ギクリ〉と首をすくめる。そこへ〈大変です、警部!大型トラックが【門】に衝突したんです。〉とやってくる。〈なんですと!〉と立ち上がる金満。〈バカ!こんな大事なときに一体、何をやっているんだ。早く処理しろ。〉と部下に指示する銭形。ところが、金満は〈あの【門】は、1千万円もかけた【門】ですぞ!〉と部屋を飛び出していく。〈あぁ、なんてこったい…〉と、銭形もその後を追う。誰もいなくなった部屋で、ルパンは1人マントルピースから顔を出し、〈ギヒヒ〉と笑う。
  9. 〈ありゃぁ~、ワシの大事な門が…〉と頭を抱える金満。一部始終を観察していた不二子は、木の傍に走っている電線を切断。一瞬にして、金満邸は【暗闇】に包まれる。〈いまだ!〉と、ルパンは飛び出し〈嫌な面だが、時価三億円のシロもんだ〉と、胸像を台座からはずした瞬間に、照明が点灯する。〈自家発電?それも、考えなかったわけじゃない〉とルパン。銭形は【門の前】でニヤリと笑う。〈胸像が盗まれた~!〉と、屋敷にむかって走り出す金満。銭形は、笑った顔を崩さずに、その後に続く。その様子を運転席からみていた次元は〈あぁ~?なんだか雲行きが怪しくなってきたぜ…〉と呟く。
  10. 金満像を背負って、穴の中を進むルパン。満月を望み〈さぁ、出口に着いたぜ、おっさんよ。〉と黄金像に話しかけ、出口に向かって登り始めた瞬間に、柵状の蓋がカシャンとおりる。その蓋の上には、満面の笑みを浮かべた銭形の姿が…〈クソゥ~!〉と、悔しがるルパン。

    〈見事に、引っ掛かってくれたなルパン。フハハハハハ。ンンハハハハハ、ウワッハハハハハ〉と、地面をたたいたり、飛びはねたり、歓びを爆発させる銭形。【ルパンを捕まえてヨーロッパに行こう!】と、視聴者目線で話す。

    次元は〈チェッ。やばいぜ、こりゃ。〉と、すかさずトラックのエンジンをかけ走り去る。

  11. ルパンを檻に放り込み〈これで、オレの実力が分かったろう!あの穴を埋めずにおいたところが、オレの頭のいいところさ。〉と胸を張る銭形。〈クソゥ~!〉とルパン。〈じゃーね、次はヨーロッパ!(よぅろっツバ…とを飛ばす)〉と、上機嫌の銭形は、嬉しさが止まらないまま、出ていく。〈だせ、出せ、出しやがれ~(ダジャレ~とも聞こえる)。だしてくれ~。おーい、出してくれよ!フンッ。ちょっと困った顔をすると、すぐ【アレ】だい。こっちの方が数倍頭がイイってことを忘れやがってぇ。〉とルパン。そうして、あらかじめ、檻の柵に仕込んでおいた【仕掛け】を外す。

    警察内は、ルパン逮捕に沸いていた。銭形警部を拍手をもって迎える警官たち。意気揚々と、花道を歩く銭形。警視総監室を訪れ〈ご報告いたします!銭形警部、お約束通り、ルパンを逮捕いたしました!〉と敬礼する。

    〈おぉ、出かしたぞ!銭形君、本当にご苦労じゃった〉と、警視総監は銭形の手をとり喜ぶ。〈いやぁ~、よくやった、よくやってくれた。君は警視庁の誇りじゃよ。ホィッ、銭形君〉とそこには、【銭形君、ルパン逮捕おめでとう。敢闘を祝す。内閣総理大臣】というお言葉が!そこへ、テレビ・報道関係の記者がなだれ込んでくる。ルパン逮捕の知らせは、すぐに新聞に掲載され、感涙にむせぶ銭形。

  12. その頃、アジトではルパンが逮捕され、計画は頓挫。3人は途方に暮れていた。すると扉が開き、ルパンが余裕しゃくしゃくの表情で戻ってくる。次なる目的地は【空港】。銭形を見送りに行くという。

     【JAPAN DROP AIR LINE】空港で警視総監はじめとする仲間たちに祝福され、見送られる銭形。〈いやぁ、よかったな銭形君。ルパンを逮捕できて。ゆっくりヨーロッパ美人を眺めてくるんだぞ。金満邸の方は、警備を解いたようだが、大丈夫だろうな。〉と警視総監。銭形は〈はいっ。次の手はうってありますから…。胸像は、警視庁の金庫に保管することにしました〉と応じる。その様子を双眼鏡で眺めていたルパンたち〈おかげで、また仕事の手間が省けちゃった〉と、笑う。

  13. 感慨深げに、飛行機の窓から外を眺める銭形。銭形の似顔絵に【万才!】と描かれたカードを手に、部下たちが整列し見送っている。その部下たちの1mほど先には、ルパン一味の姿が。銭形は目を閉じ、リラックスの体制に入ろうとして…再び、窓に顔をつけて外を見る。すると、目に映ったのはルパンたち!

    〈とめろ、とめろ!〉と、シートベルトを外す銭形。〈飛行機をとめろ~、俺は降りるぞ!〉と騒ぐ。〈お客様、離陸中ですのでお席におつき下さい。〉とCA。再び〈お席におつき下さい。〉と促され、〈クソゥ、もう頼まん、俺は降りるぞ。〉と入った先はトイレ。〈ルパンめぇ~。クソゥ、この敵はきっと取ってやるぞ!【EMPLOY / 使用中】〉

    こうして、銭形警部を見送ったルパンたち。警官と警護車に扮装した後、金満邸へ向かい、堂々と黄金の胸像を手に入れると、愛車【ベンツSSK】で悠々と走り去っていくのでした。空には…航空機が…遠く、遠くへと…飛び立っていくのでありました。おしまい。 

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こうゆづ的*第十五話の№1シーン

ルパン一味(ルパン・次元・不二子・五ヱ門)の4人全員VS銭形警部という分かりやすい構図で、勝負に挑む本作品。なんといっても台詞の掛け合いが魅力的です。今回の№1は、特定のシーンではなく、キャラクターの個性が光る【会話】のやり取りそのものを、マルッと推したいと思います。銭形警部のルパン逮捕にかける熱烈な想いも、十分すぎるほどに伝わってくる本作。また、今回の銭形警部は、やり手。かなり周到に、厳重警戒で準備を固めていきます。

ルパンたちの計画が【ルパン生贄】作戦であったとはいえ、銭形は宣言どおり、見事にルパンを拘束します。【穴】への目のつけどころも楽しい。銭形は、野生的な直感が非常に優れている人物。けれど、その直感をなかなか実践で活用できないもどかしさがあり、一視聴者である私は、ハラハラします。そして、いつも、やっぱり詰めが甘い。

今作では、厳重警戒が功を奏して、銭形の予測どおりに、事がうまく運び過ぎました。普段は【ルパンの変装】に対し、警戒心むき出しの姿勢で挑むのに、今回は完全にスルー、手薄になってしまいました。肝心なところで抜けてしまう感じが、銭形警部の良さでもあるのですが…ねぇ…。

また、意外にも、ルパンたちにとって、銭形警部は【手強い敏腕警部】であることがうかがえる台詞を、随所に見いだすことができます。作戦を練る段階で、ポロリともらす本音がユニークな作品です。以下に、ルパンたちの会話をまとめてみました。たっぷり、お楽しみくださいませ。

ヘリで金満邸を偵察した直後に、アジトで作戦を練る場面

  • 次元:〈なんだいこりゃ。えぇ?警官だらけじゃねぇか。〉
  • 五ヱ門:〈フンッ。銭形流人海戦術だな。〉
  • 不二子:〈おまけに、防弾ガラスと鋼鉄板で家中が囲われているわ。〉
  • ルパン:〈そして高圧電流でビリビリって、よくできてるねぇ。〉
  • 次元:〈どうするんだ、ルパン。〉
  • ルパン:〈いや、それを今、考えているのよ。〉
  • 次元:〈一度、ケチがついた仕事だ。この際やめるか?〉
  • ルパン:〈やめちゃうか~。バカ~!このルパン様、予告した仕事を一度もやめたことはねぇ。〉
  • 次元:〈でもな、それもやれる裏付けがあってのことだろう。〉
  • ルパン:〈時価数億円の金の塊だ!と騒いだのはどこのどいつだっけ?あきらめんのかい、次元ちゃん。〉
  • 次元:〈チッ、銭形。あいつさえいなければ!こんなバカなマネするヤツは、いやしねぇんだ!カ~ッ。〉と、舌をペロリと出して写ったカメラ目線の銭形の写真を、机に叩きつける。
  • 不二子:〈ルパン、銭形を追い払う手がひとつだけあるわ。あなたが捕まるのよ、銭形に。〉と提案する。
  • 次元:〈そりゃイイ。おめぇが捕まれば、銭形はヨーロッパに行ってしまうぜ。〉
  • ルパン:〈なるほどね、オレ一人を抜け者にしようっていうわけ。悪くない考えだ!しかし、これ見てよ。〉
  • 次元:〈さっきの写真じゃねぇか。(ルパンが昨夜、落ちた穴から点状に、屋敷内に線が伸びているのをみて)現像のミスでできたシミじゃないか?〉だが、他の写真にも点状の線が【磁気カメラ】で撮った写真にだけ、映し出されている。
  • 五ヱ門:〈抜け穴…。〉
  • ルパン:〈ズバリだ!オレもそう睨んだ。(電流にも、金属板にもぶち当たらずに…胸像の下まで行けるかもしれない。)だが、こいつはやめといた方がいいな。罠だよ、銭形の眼だって節穴じゃないぜ。こんなでっかいボロ、見逃がすはずがねぇ。〉
  • 次元:〈でもよ。弘法も筆の誤り、猿も木から落ちるとか。〉
  • ルパン:〈まぁ、焦ることはねぇや。もう少し様子を見ようぜ。〉と出ていく。

酔っぱらいに変装したルパンが敵情視察後、アジトで作戦を話す場面 

  • ルパン:〈敵の状態、探ってきたよ。今晩この穴から潜入する。〉
  • 次元:〈やるか、やっぱり!(と嬉しそう)〉
  • 不二子:〈でもその穴は…。ルパン?〉
  • 五ヱ門:〈敵の罠と知ってか。〉
  • ルパン:〈罠じゃねぇんだよ。それを確かめてきたのさ。だけど…〉
  • 次元:〈そーれ、みろ。俺の言う通りだ。そんなことだろうと用意しといたんだ。(と、照明付きのヘルメットをかぶり)見ろ、掘削機。トンネル掘りの道具ひと揃いだ。〉
  • ルパン:〈手回しイイね。しかし、おれの計画じゃ、お前はトラックを運転するんだ。〉
  • 次元:〈なに、やっぱりそう…。〉と、一瞬うなだれる次元。だが、ヘルメットの下には、業者のキャップを被っていた。そして、ニヤリと笑う。
  • 不二子:〈ルパン、銭形は甘くないわよ。〉
  • ルパン:〈万に一にも可能性があるなら、実行するってのがオレたちの主義じゃねぇのか、不二子ちゃん。〉
  • 五ヱ門:〈虎穴に入らずんば虎子を得ずか…〉
  • 不二子:〈わかったわ、やりましょう。〉

逮捕されたはずのルパンが脱獄し、アジトに戻ってくる場面

  • 次元:〈だから、いわないこっちゃないんだよ。あれほどオレが罠だからやめとけって念をおしたのに。ルパンのヤツは。〉
  • ルパン:〈そうだったかしらー。〉と、扉をあけて入ってくる。
  • 不二子:〈ルパン!〉
  • 次元:〈ルパン、お前一体どうやって!〉
  • ルパン:〈ハハァ。俺だってバカじゃないさ、開けてみな。〉
  • 次元:〈おぅ、これは!〉
  • ルパン:〈オレが苦心の作、脱獄用7つ道具さ。〉
  • 次元:〈じゃ、お前は…はじめから銭形に捕まるつもりで。〉
  • ルパン:〈不二子がヒントをくれたのさ。そうすれば、銭形がいなくなるってな。(と、不二子の肩を引き寄せる。)さぁ、行こうぜ!〉
  • 次元:〈おい、どこへ!〉
  • ルパン:〈決まってるわな。空港へ銭形のお見送り。〉

最後の会話のシーンでは、まさかの五ヱ門の台詞がないという…どんだけ寡黙なんだ!ルパンたち4人の関係は【ルパンが主導権を握り、次元が合いの手を入れる】というパターンが通常運行のようです。ここで取り上げたアジトでの会話以外に【あらすじ2】で、次元がルパンの作戦を咎めるシーンがあります。

個人的には、この時の次元の仕事に対する真剣さというか、生真面目ぶりというか…、まっすぐな感情表現、ちょっと小姑っぽい非難めいた口調に萌えます。あえて決めるとしたならば、この次元の台詞がこうゆづ的№1です。

今回のお宝である黄金の胸像は、金満の所有物です。金満本人も度々登場していますが、顔面の存在感のわりに、性格は非常に穏やかで、のんびりしている印象。胸像やライターに、自己愛・自己顕示欲的なものをみてとれますが、敵役としては、稀に見る【人の良さ】があり、方言も手伝って、ほのぼのしてしまいます。やはり、今回の敵は銭形警部であって【泥棒VS警官】の駆け引きを純粋に楽しむ作品である、といえそうです。

おわりに

最後に、お宝を手にして【ベンツSSK】が走り去る場面は、作画枚数をたっぷり割いた制作側のこだわりのシーンだそうです。車に疎い私には、正直、よく分からないのですが、ルパンたち登場人物が愛用するものには、古き良き時代の〈持ちものを大切にする〉信条と夢がたっぷり詰まっている。所有物、小物遣いの細やかさが嬉しい作品の1つです。

ちなみに、【愛着】といえば…ルパン三世のシリーズ中で、最も驚いたのは、次元の【帽子】にこめられた秘密…です。厄介な【オーダー品】であったというまさかの事実。五ヱ門の斬鉄剣に引けをとらない次元の拘りをみて、静かな笑いがこみあげてきたのを、今でもよく覚えています。Secondシリーズ第152話『次元と帽子と拳銃と』です。今なら、YouTubeで公式ページが無料です。検索して、ぜひ、視聴してみてください。

それにしても、今回の五ヱ門。ビックリするほど【存在感】なかったなぁ。会話の中で、物事の本質を突く故事を挟んでくるところは、さすがは五ヱ門。無駄口を叩かない寡黙キャラを端的に、表現してはいるものの、4人全員が集合した仕事だったのに、どうなんでしょうか。斬鉄剣が活躍する場面もなく、無念なり…と、五ヱ門の声が聞こえてきそうな作品です。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)

LUPIN THE THIRD FIRST TV『014:エメラルドの秘密』新旧♡不二子の華麗なる共演!

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzuです。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くというだけの試みの14回目。クレジット表記に変更はないけれど、大隅・大塚コンビから高畑・宮崎コンビ(Aプロダクション)のディレクションへと交代していく流れになっています。

今作は、まさに二重三重と仕掛けられた罠が高畑・宮崎コンビの遊び心とリンクしているような痛快なコミカルタッチが楽しい演出になっています。また、宮崎駿さんが演出だけでなく原画も担当したという贅沢な回。それでは、本日もルパンとその仲間たちに会いにいってみよ~!

 

第十四話『エメラルドの秘密』(1972年1月23日放映 / 脚本:宮田 雪)

〈登場人物〉ルパン(NIPLU男爵)・峰不二子(マーガレット)・銭形警部・キャサリン・ベル(猫)・レイモンド・次元大介石川五ヱ門 

冒頭、20億もの巨費を投じてつくられた豪華客船では、億万長者レイモンドと世界的女優と名高いハリウッドの女王キャサリンの結婚パーティーが行われようとしていた。ルパンのお目当ては、キャサリンの胸元に輝く大粒のエメラルド「ナイルの瞳」。銭形警部は厳戒態勢で待ち構える。

  1. 豪華客船では、ナイルの瞳を巡る予告状の話題で持ち切りになっていた。届いた手紙によると【伝説のエメラルド「ナイルの瞳」を必ずちょうだいにあがります。いかなる警備も無駄だということをお忘れなく…ルパン三世】とある。ルパンといえども、海上の船に忍び込むのは難しいだろうと皆が騒ぐ中、人々の合い間をぬって近づいてきたのは、キャサリンの愛猫ベル。銭形警部は〈この銭形が警備をしている以上、どうかご安心の上、パーティーをお続けください。〉と胸を張る。キャサリンは、猫を抱き〈心配はしてしてないわ。〉と一言。〈なんですと。ルパンを甘く見てはいけません。〉という銭形に〈だって、あなたがいらっしゃいますもの。ンフッ、ねぇ、警部。〉と微笑む。キャサリンの侍女に扮したマーガレットこと峰不二子は、《そう簡単にいくかしら、ルパンはきっとこの船にやってくるわ。》と心でつぶやく。
  2. 船に運び込まれたウエディングケーキ。シェフはもちろん、次元と五ヱ門。ウエディングケーキの中に隠れたルパンを二人は桟橋から見送る。〈ンフフ…まぁ、みてなって。「ナイルの瞳」は必ずこのルパン様がちょうだいするさっ〉て。とそのとき〈待て!そのケーキ待った〉と、銭形が走ってくる。ケーキであっても、船に持ち込まれるものは調べるという。〈すこし大げさすぎやしませんか、たかが怪盗一匹に。〉というスタッフに〈たかがだと?予告した獲物は、必ず盗み出す男だ。〉と意気込み、おもむろに、ケーキへナイフをズブズブと突き刺す。すんでのところでナイフを逃れる?ルパン。〈よし、運べ!こう警戒が厳重ではルパンは手も足も出まい…〉と、満足気にナイフについた生クリームをぺろりとなめる銭形。
  3. 控室では、キャサリンがウエディングドレスに着替えていた。侍女のマーガレット(以下、不二子)は〈キャサリン様にお使いしてこんなに嬉しいことはありません。どうか、あちらでお姿ご覧になってくださいな。〉と、全身姿見の前へと移動を促す。猫を抱いて〈ねぇ、本当にわたくし美しいと思う?〉とキャサリン。〈えぇ、もちろん。世界一お美しいですわ。キラキラと光り輝いていらっしゃいます。〉と言いながら、不二子が「ナイルの瞳」をすり替えようとしたそのとき、銭形警部が入ってくる。〈何ごとですか!キャサリン様の着替え中にノックもしないで失礼な。〉と不二子。〈これは、失礼。宝石が心配で…〉という銭形に〈大丈夫ですわ、警部さん。「ナイルの瞳」は誰の手にも渡さないわ。ねぇ。〉と、猫のベルに頬をよせるキャサリン。〈くれぐれも油断せんように…では〉と銭形は去っていく。〈ご自分でおつけになりますか?〉とキャサリンに、すり替えたニセの「ナイルの瞳」を持っていく不二子。《先手必勝。悪く思わないでね、ルパン。》と、心の声。
  4. 披露宴会場の扉がひらき、新郎新婦のレイモンドとキャサリンが入ってくる。その真正面には、ルパンが潜んだウエディングケーキが置いてある。ケーキに細工した穴から外の様子を伺うルパン。〈さすがハリウッドの女王。顔もスタイルも最高級の女王様だ…〉と、そのとき、侍女に成りすました不二子の存在に気づく。〈あンニャロー、また出し抜いて。〉とルパン。ケーキ入刀。キャサリンがケーキに近づいたそのとき、キャサリンの胸元に光る「ナイルの瞳」をめがけ、クレーンゲームの要領で小型のアームを伸ばす。〈とれた!〉と思った瞬間、アームの先からポトリと「ナイルの瞳」が落ちてしまう。慌てたルパン。思わずケーキを突いて、素早く手でキャッチする。ケーキから伸びるルパンの手に気づいた不二子は《ご苦労さん、偽物をつかまされたとも知らずに。》と、ほくそ笑む。付着したクリームをキレイに舐めて、キラキラと輝く「ナイルの瞳」を手に、したり顔のルパン。
  5. 〈キャー!〉突如、参列者の1人が叫ぶ。「ナイルの瞳」が胸元にないことに気づき、キャサリンは立ちくらむ。銭形は〈全員そのまま動くな。変装の名人であるルパンは必ずこの中に潜んでいるはず、会場にいる全員の身体検査を行う。〉と告げる。ところが、キャサリンは異を唱える。お祝いに集まった方々に失礼にあたる、あんな宝石の1つや2つのせいで最初の結婚パーティーを中止できない。〉という。なおも、銭形に向かって〈外は海で、ルパンがここにいたとしても逃げられない。ルパンは袋の鼠。優秀な銭形警部が必ず「ナイルの瞳」を取り返してくれる…。〉と告げる。〈パーティーは続行する、よろしいですわね…〉と銭形に念をおすキャサリン。〈被害者のあなたがそういうのなら…〉と、渋々承諾する銭形(銭形の目玉は、左右相反する形で目まぐるしく動き、納得できない本音をグッとのみこむ)。
  6. 会場から人々が去り、ウエディングケーキから抜け出たルパン。〈全くこう簡単に事が進んじゃうんじゃ、手ごたえがなくていけねぇ…。まぁ、それもこれもオレ様という天才のなせる業だ。〉と、ロマンスグレーの髭をはやした紳士に変装する。そこへ不二子が〈お気の毒サマ、一足遅かったわね。〉と現れ、一足先にガラス玉にすり替えておいたと告げる。そこへ、扉をあけて、猫のベルが現れる。〈クッソゥ、脅かしやがって…〉と憤るルパン。と、ウエディングケーキに向かって飛びかかってきたベルに、驚いた不二子は持っていた「ナイルの瞳」を落としてしまう。粉砕した欠片を手に〈「ナイルの瞳」が割れるなんて…。おかしいわ。〉と、がっかりする不二子。〈こいつはいいや!お前も偽物をつかまされていたとはな。〉と大笑いするルパン。不二子は〈そんなはずはない、キャサリンの宝石箱から直接盗んだものだ。〉と主張する。〈なんだと?クソゥ!あの女めぇ~!〉とルパン。最初から偽物にすり替えられていたことに気づいた二人は、本物捜しの【共同戦線】を張ることに。〈まったく、気味の悪い仔猫ちゃん…〉と不二子がつぶやいたとき、ケーキを舐める【ベルの瞳】がキラリと光る。
  7. ルパンは、船内の捜索を開始する…と、早速、銭形警部が現れる。〈どうもクサイなぁ…どうもどっかでお目にかかったことが…失礼ですが…〉と、ルパンを呼び止める。〈ニップル伯爵ですわ。〉と不二子が合いの手を入れ、キャサリン様と古い友達だという。〈刑事さんご存知ないのね、ハイソサエティーの方は…〉と、ニップル伯爵ことルパンを会場へと誘導する。〈確かにルパンのようでもあるし、違うようでもあるし…〉とつぶやく銭形。パーティー会場に辿り着いたルパン。早速、キャサリンに近づき〈ワタクシめとダンスを一曲!〉と願いでる。踊るルパンとキャサリンをみて、〈鬼の居ぬ間になんとやら、早く捜しださなきゃ。〉と会場を出る不二子。ところが、お目当ての部屋の前には、銭形の姿が。〈本当に邪魔なヤツ。〉とつぶやく不二子。侍女に気づいた銭形は〈パーティーの前に、キャサリンの前をうろついていた男性がいなかったか?〉と聞くが、不二子は〈二人いたわ。銭形警部ともちろん新郎のレイモンド。〉と応じる。〈君は本官を愚弄する気か!〉と憤る銭形に〈ダンディーな警部さん、私と踊ってくださらないこと?〉と言い〈ご冗談でしょう。私は西洋踊りなんぞは…〉と職務中で尻込みする銭形の手を取り〈アン・ドゥ・トロワ〉と言いながら、強引に階下のパーティー会場へ誘導する。そして〈ダンスというもの…なかなかよいもんですな。〉とまんざらでもない銭形に〈キャサリン様に踊りを申し込んでみては?〉と焚きつける。〈キャサリンがこちらを見ているわ。〉と言われて、真っ赤になる銭形。〈ひぃ・ふう・みーぃー〉と、リズムをとりキャサリンと踊りだす。
  8. 船内を物色するルパンと不二子。〈ちっくしょう。どこに隠しやがったんだ。〉そこへ〈この部屋で一体何を!〉と、銭形が現れる。〈お部屋を片付けていましたのよ。キャサリン様は、お散らかしがお好きなようですのよ。〉という侍女の受け答えを〈まるで、泥棒に入られたようだ…〉と訝しがる銭形。また、ニップル伯爵の姿をみつけ〈伯爵、こんなところでなにをなさっているのです?〉と、キャサリンの居間の方向からやってきた伯爵に声をかける。〈ポーカーの約束をしましてな…堅物な警部に社交的なエレガントな付き合いはわからんでしょうな…〉と、出ていく伯爵。〈エレガントな付き合いだと!クソゥ〉と銭形。ルパンは、キャサリンに直接探りをいれるよう不二子に伝え、宝石を模った盗聴マイクを渡す。一方、銭形はニップル伯爵が怪しいと踏み、乗船名簿を確認。伯爵がルパンの変装であることを確信する。〈間違いない!やつはルパンだ!〉
  9. 控室で、キャサリンから〈盗まれた宝石は偽物である〉と聞かされた不二子。このことを警部に伝えなければ…という不二子に、キャサリンは、冷たい視線を投げて〈いいのよ、どうせ、パーティーの余興なんだから。とんまな泥棒も警察もせいぜい偽物の宝石のために、無駄骨をおるがいいわ。ねぇ、ベル。〉と愛猫をみつめる。〈クソゥ。勝手なことをぬかしやがって。〉と、盗聴器を手に悔しがるルパン。そこへ再び控室へ銭形が現れる。ニップル伯爵が怪しいことを伝えるが、すかさず不二子が〈フランス貴族のベスト10にも入る方…〉と説明する。その不二子のニセ情報に、キャサリンはにっこり微笑み〈そのとおりですわ。ニップル伯爵は古くからの私のお友達ですの。ねぇ、マーガレット?〉と同意をもとめる。怯みながら〈えぇ、もちろん。〉と応える不二子。〈それより「ナイルの瞳」の行方は分かりました?警部さん。〉とキャサリン。〈ウゥー。断じて日本警察のメンツにかけてもこのワタクシが…失礼…〉と、出ていく。扉越しでフゥーッと息を吐き〈妙だ。乗船名簿に載ってないのに、ヤツを友達扱いするとは…クソゥ。必ず、化けの皮を剥がしてやる!〉と銭形。
  10. 引き続き、キャサリンと不二子の会話を盗聴するルパン。〈本物はどこに隠してあるのか〉と尋ねる不二子に、キャサリン〈本物のナイルの瞳は、マストのてっぺん。なんてところじゃなくて、本物のナイルの瞳は、プールの中。なんてところじゃなくて、本物のナイルの瞳はねぇ、ワタクシの髪の中。〉と、ルパンを手玉にとって楽しむ。不二子と合流し〈まったく、今度ばかりは手も足も出ねぇ。〉と弱気になるルパン。そこへ猫のニャーという鳴き声が。〈ヒャァ!ルパン。あの猫よ。〉と不二子はルパンに抱きつき〈居眠りしてるのに、片目を開けてるなんて。あぁ、気味が悪い…〉という。〈わかったよ、不二子。お前の猫嫌いは…〉と、窓越しにキャサリンの膝の上に眠るベルを眺めるルパン。〈おぉ!〉と閃き〈そうかあの猫。オレの作戦にいっちょ乗るか、不二子?〉と作戦を練る。
  11. 甲板で腕時計を気にするルパン。そこへベルを抱いたキャサリンが現れる。〈探し物は見つかりまして?とうとう、みつからなかったようですわね。ニップル伯爵…いいえ、ルパン三世。知らないとでも思っていたの?ンフフフ。〉ヒェ~と驚くルパンをよそに〈最初から気が付いていたのよ。あなたも、侍女のマーガレットも。〉と笑う。〈知っていて、楽しんでいたのか?〉とルパン。〈そう。おかげで退屈なパーティーも楽しかったわ。そろそろゲームも終わりね。幕切れにふさわしいお迎えが来るわ。〉〈銭形…〉と、ルパンは後ろを振りむく。通路をゆっくりと銭形が近づいてくる。再び、腕時計に目を落とし【じゅう・きゅう・はち・しち…】とカウントダウンを始めたルパン。【…いち!】まで数え、ニヤリと笑った瞬間、照明がパタンと落ちて、辺り一面、暗闇に包まれる。〈あーぁ!〉と悲鳴をあげるキャサリン。〈「ナイルの瞳」は、いただいたぜ。〉とルパン。〈どこ?どこなの。明かりをつけて、明かりをつけて!ベル、どこにいるの!〉と慌てて探すキャサリン。そうして、曲がり角にベルの姿をみつけて〈おいで…〉と声をかけ、ホッとしたも束の間、角から歩いてきたのは右眼に眼帯をつけたベル。〈あぁ~〉と失神するキャサリンを銭形が後ろから支える。
  • 銭形:〈どうしたんです?〉
  • キャサリン:〈ルパンよ、ルパンが私のナイルの瞳を盗んだのよ。〉
  • 銭形:〈あぁ、ですから私がこうして捜査を。〉
  • キャサリン:〈違うのよ、ルパンがたった今、盗んだのよ。〉
  • 銭形:〈なんですと?〉と、窓から空を見上げる銭形。ルパンと不二子が手を振っている。
  • 銭形:〈クソゥ、ルパンめ!〉と銃をうつが、むろん届くはずもなく。
  • キャサリン:〈わたしの、私の「ナイルの瞳」を返して。〉の声もむなしく。
  • ルパン:〈あーばよ。キャサリンちゃん。楽しい仮装パーティーだったぜ。〉ルパンと不二子は空の彼方へ。スカイダイビングを楽しむのでした。おしまい。

今回は二転三転しながらも、最終的には正攻法なオチで決着しました。この作品は、猫のベルの描写【緑の瞳】に、いち早く気づけるかどうかが鍵ですが、かなり、分かりやすく描かれていますね。オッドアイやブルーの瞳をした猫はたまに見かけますが、エメラルドグリーンの瞳の色をした猫には、出会ったことがないような気がします。

ですから、緑の瞳に少しでも違和を感じることができれば、〈緑⇒エメラルドグリーン⇒ナイルの瞳〉と連想できますし、そもそも、宝石の通称が「ナイルの【ヒトミ】」ですからね。【瞳】との関連が伺えるようなヒントは、予め、視聴者に与えられているわけです。

冒頭から、猫のベルの登場シーンは、堂々たるもの。キャサリンやルパン、不二子との絡みの場面も多く、猫が重要な存在であることを印象づけています。今作のルパンの仕事には、天性のヒラメキ以外の知性も理性もあまり感じない…。ドタバタ喜劇度MAXです。こういった演出は、やはり前任の大隅監督とは全く異なる路線です。視聴者に、わかりやすく面白さが届く親切な作品に仕上がっていると思います。

 

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 ◆こうゆづ的*第十四話の№1シーン

毎回迷いますが、今回の№1は、なんといっても、峰不二子役の声優陣の共演ではないでしょうか。 ファーストシリーズは、二階堂有希子さん。セカンドシリーズからは、増山江威子さん。そして、シーズンⅣから現在は、沢城みゆきさんが担当しています。

ルパン三世のテレビシリーズが始まった70年代からルパン三世のファンである方は、峰不二子といえば【増山さんの声】に、安定した懐かしさを感じるのではないでしょうか。その増山さんが、キャサリン役を演じているという。偶然なのか意図があるのか、いずれにしても、ファンサービスにしびれます。心憎い演出。

キャサリンとマーガレットが会話するシーンは、いわば、新旧♡不二子の声優同士がさしで向き合いガチンコ勝負するという、期せずして、面白い仕掛けになっています。【旧/峰不二子VS新/峰不二子】の声優の華麗なる共演。作中で、度々、キャサリン峰不二子なの?と、錯覚してしまうスリルと高揚感がたまりません。

さらに、銭形警部が確認した乗船名簿に、モンキー・パンチチャーリー・コーセイの名前が載っているのは、お気づきでしょうか。不二子が咄嗟に名乗ったルパン扮するニップル伯爵という名前は、NIPLU⇔LUPIN(ルパン)を文字ったもの。このように、細かな遊び心が光ります。間違い探しのような仕掛けが、とても楽しい。 

また、峰不二子と銭形警部という、かなりミスマッチな二人が踊りだすという、まさか!が飛び出すユニークさ。私は、銭形が【ひぃ・ふう・みぃ~】とリズムをとるシーンで、毎回クスッと笑ってしまいます。それに、今作は、銭形の勘が冴えわたり、なかなかカッコイイ。また【Society・Elegant】などの言葉に、過剰反応する庶民的な銭形警部の人柄も可愛らしい。詰めが甘いとっつぁんは、ルパン逮捕には至りませんが、それでも、目の付けどころは的確でした。

一方、ルパンは不調だったのかしら…と思えるほどに、今回の仕事の過程は【む・の・う】。最終結果だけを取り出せば、「ナイルの瞳」を手に入れるという目的を見事に果たしたわけですが、あまりにも、間抜けな仕事ぶりに〈天下の大泥棒の名が泣くぜ〉と、喝を入れたくなります。

いずれにしても、ルパンは、【対女性相手】の仕事には、めっぽう弱いという共通点がありそうです。今回の【キャサリンの台詞】にも、ルパンを軽視している発言が散りばめられていますが、第10話のニセ札づくりの作中に出てくる女主人【銀狐】にも、坊や扱いされ、行動を読まれていました。最後は、キャサリンの足元をすくう形で、ようやく鼻を明かしますが、中盤までの展開では、まったくキャサリンに太刀打ちできません。それにしても、キャサリンは、かなりの毒舌家、辛辣です。キレイな花には棘があるように、美しい女性には毒があるようです。

ルパンという人物は、次元や五ヱ門のサポートがあってこそ、持ち味の軽やかにして大胆な【行動力】、キザで衝動的で誇り高い【精神力】、発明のアイデアや閃きなどの【直観力】などの個性が、仕事で十分に活かされるのだと、改めて感じる第14話でありました。

 

最後に…3DCGの映画記念と称して、公式にYouTubeで無料視聴できるルパンの動画がたくさんあがってますね。過去に見損なったルパン三世の作品に触れられる機会が広がるのは嬉しい限り。好みの作品は繰り返し見ていますが、中には、ストーリーが思い出せない作品もあり、とても楽しいです。皆さまも、この千載一遇のチャンスをお見逃しなく!

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)

LUPIN THE THIRD FIRST TV『013:タイムマシンに気をつけろ!』ルパンが消えるってよ!

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzu(こうゆづ☆)です。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くという試みの13回目。Secondシーズンに向け、テコ入れがはじまった10作目。そうして、クレジット表記はそのままに…13作目より、大隅・大塚コンビから高畑・宮崎コンビ(Aプロダクション)のディレクションが主流になっていきます。演出の違いをぜひ、お楽しみください。

個人的には、ハードボイルド小説のような渋い味わいの大隅正秋監督の創作は、大好物なのだけど、世間はユニークで痛快なアイデアがひかるコミカル路線を望んだようです。アニメーションには、世相を色濃く反映する作品がたくさん並んでいますね。ルパン三世がアニメになって登場した1970年代…高度経済の成長期のピークを抜けたとはいえ、まだまだ日本が明るい世相を求め、一丸となって盛り上がることを潔しとした時代なのでしょう。

今回のあらすじ…というより、もはやテープ起こし…過去最長です。見どころシーンに重要な会話が多いので、できるだけ忠実に書き起こしています。それでは、本日もルパンとその仲間たちに会いにいってみよ~!

 

第十三話『タイムマシンに気をつけろ!』(1972年1月16日放映 / 脚本:宮田 雪)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子・銭形警部・魔毛狂介 

 

あらすじ(書き起こし・1~13) 

冒頭、赤い車(№.P38-X974)で、山中を1人走行中のルパン。運転の最中、煙草に火をつけたそのとき【キーン】という音が鳴り響き、ルパンの目にライトが飛び込んでくる。思わず、ハンドルをとられるルパン。危機一髪、事故を回避し車をとめる。すると、光の中心にマントを着た人影が。「えぇ?」すぐに車を出て、銃を構えるルパン。「誰だ、お前は!」『魔毛狂介。』「マモウキョウスケ?」『そう。お前に予言を与えにやってきたのだ。』「予言だ?」『ルパン三世、おまえは【4日後】にこの世から消える運命にある。』「あぁ?」『ンフフフフ…忘れるな、あと4日だ。あと4日で、お前の前から森羅万象、ありとあらゆるものが忽然と消え失せる。ウアハハハハ』と笑い、姿を消す。「あぁー?」と、狐につままれた表情のルパン。

  1. とある街の橋で時計を眺め、ため息をつく次元。〈おい遅いぞ、ルパン。予定より10分オーバーだ。何かあったのか?〉車の中でルパンは、次元に【予言】のことを話す。〈なに?4日後にお前が消されるって。〉と次元。〈まったく、よくある話さ。また、どこぞのどっかのシンジケートが、殺し屋を雇ったっていうお粗末よ。全く俺はどうしてこうモテんのかねぇ。ンフフフ…ところで、次元よ。今日の手筈は間違いねぇだろうな。〉〈あぁ、完全だ、間違いねぇ。〉と次元。
    ーーーーー♬ルパンルパンルパンルパンルパンルパン!ーーーーー
  2. 白髪の初老の男が椅子に座っている。その前をせわし気に歩く銭形警部。〈来やせん!〉と、痺れをきらしたように男が叫ぶと〈失礼ですが、ヤツを知らんようですな。ヤツは来ると言ったら必ず来る。一度狙った獲物を途中であきらめたことは絶対にない!〉と銭形。【カランコロン】と時計の振り子が音をたてている。突如、【カシャン!】と音が響きわたる。〈みんな、持ち場を離れるな〉と指示して、銃を片手に駆け出していく銭形警部。そこには、お茶をこぼした女中の姿が。なんだ…という表情をして〈5分すぎた。遅いな、あの野郎…ひょっとして。いやー、そんなはずはない。〉と持ち場に戻る銭形。その後ろ姿を女中が〈ルパンなら、もうとっくにお前さんの前に現れているのよ…〉と見送る。再び、初老の男の前を行ったり来たり落ち着かない銭形警部〈予告しておいて、現れないなんて、そんな馬鹿なことはない。〉と、ブツブツ呟いている。
    • 初老の男:少しは落ち着いたらどうかね、警部。
    • 銭形警部:こいつが落ち着いていられるか!ルパンの野郎、勝手に約束を破りやがって。
    • 初老の男:そんなに残念かね、ルパンが現れないことが。
    • 銭形警部:当たり前だ!俺とルパンは宿命のライバルだ。そいつを忘れてルパンのやつ、オレをコケにしやがった。許せん!絶対にゆるせーん!
    • 初老の男:フン。ではもし、このワシがルパンだったら満足かな。
    • 銭形警部:あ?フヒャヒャヒャヒャヒャヒャアハハハハ。(と、あり得ないといった表情で大笑い。)
    • 初老の男:さっき君が廊下に出たスキに本当の【黄金像】と入れ替わっていたとしたら?ここにいる警官も、全員オレの手下だとしたら?(と、男の声色がルパンの声と変わっていく)
    • 銭形警部:ルパーン!(と同時に、煙幕に包まれる)ルパン、ルパン!
  3. 古城の前に車をとめたルパン。次元と大笑いしながら、黄金像を手に歓喜する。
    • ルパン:ヨォーホホホホ、ウハハハハ。愉快だったな、次元。あの銭形のびっくりした面。お前の【女中姿】も、なかなかイカしたぜぃ。
    • 次元:あぁー、案外べっぴんさんだぜ、この黄金像はよぅ。フハハハハ。(すると、ケースに入った黄金像が目の前から忽然と消える。)おっ、おいルパン!き・き、消えた、消えたよ。
    • ルパン:(ゆっくりと振り返り)えぇっ?なに?消えるなんて、そんな馬鹿なことがあるかい。よく探せぇ次元、きっと、転がったんだよ。(と、車の下をのぞきこむ)
    • 次元:でも、ないぜ。
    • ルパン:ないってことはない。あるよ、あるよ。探せよ、探せぃ。

    そこへ【キーン】という音が響き、例の男〈マモウキョウスケ〉が、光とともに、古城の塔に現れる。同時に、男を振り仰ぐ〈ルパンと次元〉。

    • 魔毛:みたか、ルパン!あらゆるものがお前の目の前から消えてゆく。
    • ルパン:マモウキョウスケ…。
    • 魔毛:これは、ほんの小手調べ。摩毛一族のルパン一族に対する復讐の前奏曲だ。
    • ルパン:復讐?
    • 魔毛:そう、我が魔毛一族が【ルパン13世】によって、滅ぼされたことに対する復讐だよ。
    • ルパン:あぁ、うちの13世がお前さんの一族をね。(と、指折り数える。)13世、13世、13世。なんだ、13世?
    • 魔毛:【2874年3月31日】のことだ。
    • ルパン:【2874年…?】バカ・マヌケ・キチガイウヒョヒョヒョ。おい、次元、ひきあげよう!オレたちはキチガイに構っているほど、ヒマじゃねぇんだよなっ。ウヒョヒョヒョ。
    • 魔毛:信じられんようだな、ルパン。
    • ルパン:当たり前だぃ。ルパン家はな、13代はおろかどころか、4代目だってこのオレが種も仕込んじゃいねぇんだよ。イイ加減にしやがれ。
    • 魔毛:フンッ。魔毛一族の恨み…そのうち、否が応でも知らせてやるぞ。さて、また時間の旅を続けるか。

    しばらく、車を走らせて、ルパンは〈いけねぇ、黄金像のことすっかり忘れてたぜぇ。おい、どうした次元。〉次元は顔をあげて記憶を辿るように〈マモウ、マモウ…。どっかで聞いたことがあるぜぃ。〉と呟く。

  4. アジトに戻ると、片っ端から本をひっくり返す次元。そんな次元にルパンは〈おい、次元、イイ加減にしねぇか。あんなキチガイのことは忘れて、えぇ?〉と言うが、次元は探すのをやめない。〈チェッ、しかたねぇや。今度の仕事はな、お前を外して五ヱ門と二人でやるぜ。おい、五ヱ門、五ヱ門!〉と、部屋をでていく。〈なんだ?〉と返事が聞こえてきたのは書斎。五ヱ門も本を片手に調べている。〈あら、五ヱ門…〉とルパン。〈俺も、確か…マモウキョウスケというのは聞いたことがある。〉と五ヱ門。再び、書斎を出たルパン。〈冗談じゃねぇ。マモウ、マモウって。〉と、リビングの椅子にふんぞり返り〈ルパン13世だの、2千何百年だの、けっ。平成の漫画じゃあるまいし。〉と、眠り込んでしまう。

    『お答えしよう、ルパン。わたしはね、四次元を征服した男なんだよ。見たまえ。このタイムマシンで、過去でも未来でも、わたしは旅行することができるんだ。ンハハハハハハハ。そして見たんだよ。わたしの子孫が君の子孫に殺されるのをね。約900年先の未来だな。信じられんかね。ついでだが言っておこう。わたしの生年月日は、【1932年11月18日】…。』

    〈あぁ…〉と眠りから覚め【1932年11月18日】と、立ち上がったルパン。〈けっ、嫌な夢みたもんだぜ。〉そのとき次元が〈おい、ルパン。みつけたぞ。いいか、よく聞けよ。あぁ魔毛狂介。科学者、集合賞受賞、SF作家、四次元。特に時間と空間の研究に熱中し、1966年発狂。その後を五ヱ門が引き継ぎ〈その後、向精神病院において、地球壊滅の危機を唱え、ノアの方舟のつもりで【タイムマシン】を制作。現在、過去および未来を旅行中。〉と伝える。

    〈で、やつの生年月日は?〉と、ルパン。〈生年月日?うん。出ている。【1932年11月18日】だ。〉と五ヱ門。〈味わいあるじゃねぇか、魔毛狂介さんよ。〉と、ニヤリと笑うルパン。

  5. ルパンは部屋を飛び出し、愛車を走らせ黄金像が消えた【古城】の前で停車する。 

    • ルパン:魔毛狂介、出てこい。ルパン三世がたった今、相手をしてやる。こい!オレは、逃げも隠れもしねぇぜ。出てこい、魔毛!出てこーい!
    • 摩毛:ウアハハハハハハ。なにを焦っているのかね、ルパン君。
    • ルパン:へぇ?オレは別に焦っちゃいないよ。ただな、せっかく挑戦してきたあんたを待たしちゃ悪いと思ってよ。
    • 魔毛:わたしは、君と闘うつもりはない。そんなことは無駄なことだ。考えても見たまえ。わたしが過去へ旅をし君の【祖先を殺す】だけで、君も、君の子孫も、全てがこの地球上から完全に消えるんだ。ウハハッハハハハッ
    • ルパン:オレの【祖先を殺る】だと?
    • 魔毛:そうだ。気の毒だが、君も【3日後】には跡形もなく消える。ンフフフフハハハ(と、タイムマシンへ乗り込む。)

    ルパンは懐から銃を取り出し、タイムマシンに向け発砲するが、無論、あたらない。消えるマシン、魔毛狂介の声だけが響く。

    ンフフ、ンハハハハハ。消えるのだ、ルパン。消えるのだ。この古城のようにな。ンハハハハハ。(すると、目の前の古城が消える。)なぜ、消えたか分かるかね、ルパン。簡単さ。ちょっと過去へ戻ってこの城を作った男を殺したからだよ。フハハハハハ。あと、3日だ。あと、3日だよ。ンハハハ、フハハハハハ。

  6. 再び、アジトのリビングへ。【水槽】の魚がノンビリと泳いでいる。その奥に、五ヱ門、次元、ルパン3人の姿。〈ンフフフフ、ンハハハ。ンフフフ。それでオレの目の前からな、ドロンパーッと、古城が消えちゃったってわけだよ。ギャハハハハ。昔に戻ってな、その城を作ったやつを殺してきたからだとよ。ンフフフフフ。それでね、貴様の祖先を殺してくる。そうすればルパン、貴様はもうこの世に存在しないのだ。グハハハハ。俺の命あと3日だと。ヨホホホホ。まったく、とんだでたらめ野郎だぜ。あの魔毛狂介って野郎は。アハハアヒヒッ。全く昼寝でもしてた方がマシよ。ンフフ…〉と、扉から出ていく。 〈あぁ、だいぶ深刻だな、ルパンのヤツは。〉〈いかんな。〉と次元と五ヱ門。冷や汗を浮かべて、1人、ベッドに手をつきうなだれるルパン。ベットに横たわり、頭を抱える。〈冗談じゃねぇ。アハ、アハハハ。〉と、寝室の扉がふいに開く。すかさず、ナイフを投げるルパン。不二子は、ハッと息をのみ、いつもと様子の違うルパンに気づく。次元と五ヱ門が、魔毛狂介の出現で、ルパンが参っているのだと伝えると、ルパンは怖がってなんかいない!と拗ねる。そうして、不二子を連れて出かけてしまう。

  7. 不二子とやってきたのは競馬場。〈よーし、いいぞ!一気に出ろ!〉すると、ルパンが応援していた6番の馬が、視界から消える。振り向くと、一番後ろの列に魔毛狂介の姿が!冷や汗を浮かべ、恐怖の面持ちのルパン。〈ねぇ、一体どうしたの!さっきまであんなにはしゃいでたクセに。なんかあった?〉と訝しがる不二子。ルパンは、アクセルを踏み込み【スピード100㎞超】で走行する。

    そこへ、前方からトラックが突っ込んでくる。〈あっ!〉と急ぎハンドルを切るルパン。危機一髪、衝突を逃れるが、トラックはガードレールにぶつかり破損。車をとめたルパンは、〈このやろう!なんだって、反対車線に突っ込んできやがったんだ!〉と、トラックに駆け寄る。すると、頭をぶつけ怪我をした男が〈やぁ、知らねぇんですよ。運転してたの、相棒の方なんで。〉と運転席をみる。〈相棒だとふざけるな!この車にはおめぇしか乗っていないじゃないかよ〉とルパン。〈それが、あんたの車と出会うちょっと前に、急に消えちまった。〉という。【キーン】という音と魔毛狂介の笑い声がルパンの脳裏をよぎる。

  8. 教会の前に広がる墓地の横で、膝を抱え込んで座るルパン。木陰から不二子が、心配そうに声をかける。ルパンは〈今度ばかりは、どうしようもないらしい…命は後3日。不二子、結婚してくれ!〉と懇願する。不二子は驚くが、必死のルパンをみて【OK】する。大喜びするルパン。〈このまま教会の牧師に話をつけて、結婚してしまおう〉と、手筈を調える。互いに誓いの言葉をかわし、口づけしようとルパンが不二子を引き寄せた瞬間、ルパンの目の前から不二子が消える。そこには、魔毛狂介の姿が!『甘いぞ、ルパン。峰不二子はうまく騙せても私はそうはいかん。不二子と式をあげれば、なんとかルパンの名前はあの女が継いでくれると考えたんだろうがな。甘い、甘い。』〈クソゥ、もう少しだったのにな。〉と悔しがるルパン。『あの女(コ)は、しばらく過去の世界にいってもらうよ。あと3日、おまえたちルパン一族がこの地上の歴史から消え失せるときまでな。』と魔毛。
  9. 再び、アジトのリビング。【水槽】の魚は、相変わらず元気に泳いでいる。ルパンは、次元と五ヱ門を前に、愛用の【ワルサーP38】を差し出し、形見として託す。顔を見合わせる次元と五ヱ門。〈今頃、魔毛は、タイムマシンで過去に遡り、祖先を殺しに現れる頃だ、もうオレもおしまいだ〉と、水槽の前まで歩いていく。と、突如、ルパンの姿が消える。驚愕する次元と五ヱ門。そして、悲しみにくれる次元。五ヱ門は〈泣くな、次元、俺が必ず敵をとる〉と励ます。すると、消えたはずのルパンが再び次元と五ヱ門の前に現れる。誰が悲しんでくれるか試したくて、隠れてみたという。そして〈二人の会話にヒントを得て、名案を思いついた〉と、ニヤリと笑う。
  10. 教会の鐘ふたたび。リンゴンリンゴン。

    「主よ、私の願いを聞いてください、私はまもなく主のもとにいかねばならぬ身でございます。その前にどうか、魔毛狂介めに今一度会わせてくださいませ。主よ…」と、周りの気配を伺いながら、十字架に向かって祈りを捧げるルパン。すると背後から、魔毛狂介が現れる。

    『おぅ、ルパン。お前がこれほど真面目なクリスチャンとは知らなかったぜ。』ペロリと舌を出すルパン。祈りの姿勢はまだ崩さずに、願いを二つだけ聞いてくれと頼む。そうして、①自分と顔立ちが似てたという祖先【川向こうの治郎吉(アルセーヌルパンの爺さんだった人)】と一緒に消えたい、②もう一度、不二子と会いたいと、懇願する。ルパンが観念したと気をよくした魔毛は『わかったよ。未練な野郎だ。待ってろ、いま連れてくる。』と、タイムマシンに乗り込む。「ンフフフ。バカなやつ。おいっ、次元、五ヱ門。早く!」

  11. 再び、タイムマシンで戻ってきた魔毛は『さぁ、ルパン。女を連れてきてやったぞ。アッ?』 と、目の前には、お城と畑が広がり、百姓が畑を耕している。(♬三味線の音)時代を間違えたと勘違いした魔毛は百姓に『おぅ、ちょっと尋ねたいが、今は一体いつ頃だろうか。』と聞く。百姓の答えは【寛永3年8月】とのこと。そのとき、別の百姓Jが〈おーい、川向こうの治郎吉よ!飯にしよう〉と声をかける。『お前が川向こうの治郎吉というのか?』と確かめる魔毛。百姓は〈オレのことだ。ミレイユ・ルパンって言うめんこい女(こ)と、祝言をあげるので忙しいのだ〉と応える。ルパン一族の祖先だと確信した魔毛は、『かわいそうだが、死んでもらう。』と銃を向ける。そこへ〈どうしたんだ?〉と百姓Jが近づき〈ほぉ、珍しい飛び道具でござるな。〉と、旅人が通りかかる。

  12. 右手に鎌を構えた【治郎吉】と鋤を構えた【百姓J】が、同時に襲い掛かる。そこに、旅人に扮した五ヱ門の【斬鉄剣】がひかり、すれ違いざま、魔毛の銃と衣服を切り裂く。『今は、本当に寛永3年か?』とたずねる魔毛。〈バカこくでねぇ。今は昭和47年でござる〉と、五ヱ門が笠を投げ、同時に変装していたルパンと次元も鬘を脱ぐ。『あぁ、お前たちは!』〈ンフフフ、お揃い。〉と、ルパンはニヤリと笑い、次元と共に、タイムマシンをめがけて走り出す。魔毛は『やめてくれぇ』と後ろから追うが、二人がタイムマシンに乗り込んだのを確認すると、五ヱ門は、外からタイムマシンに一太刀、グルリと一周して真っ二つにする。ルパンと五ヱ門は、鍬でタイムマシンを〈ソレソレ〉と、破壊する。『やめてくれ、やめてくれ、たのむよ。やめ、やめてぇ』と、耳をふさぎ怯える魔毛。その声に振り向き〈魔毛退治じゃ~〉とルパンが発し、一目散に逃げていく魔毛。その姿をルパン・次元・五ヱ門の3人は、肩を組んで笑いながら見送る。

  13. 〈あらー?〉と、目を覚ました不二子。教会の鐘の音が【カランコロン】と聞こえてくる。ウエディングドレスに身を包んだ不二子は〈あたしを愛してるっていったでしょうに〉と、ルパンを引っ張り教会の中へ。〈オイッ、勘弁してくれよ。あれ、冗談、冗談!〉次元は〈あきらめな、ルパン。こいつばかりは魔毛狂介より難しいぞ!〉とちゃかし、五ヱ門と一緒に教会に背を向け歩き出す。〈そんな冷たいこといわないでぇ~〉と、ルパンは、不二子の腕をはらって教会の扉から飛び出してくる。〈オレは、まだ一人でいたいんだ。魔毛狂介消してくれぇ!消して~〉というオチ。おしまい。

 

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◆こうゆづ的*第十三話の№1シーン

第十三話…【13】という数字は、タロットカードでいう死神(ななし)のカードに相当。13話に、ルパンが【消える】と予言するエピソードが登場するのは、偶然なのでしょうか。一族の血を守るために【タイムマシン】を開発し、時空間を自在に行き来するマシンを操る【狂気】を隠そうとしない魔毛という不気味な人物。

魔毛自身が、一族を死へと誘い破滅をもたらす死神なのか。それとも、見事に一族を救い再生を果たす救世主となるのか…果たして?制作側に【13】という数字に対する思い入れや意図がなかったとしても、なんて偶然にして贅沢な展開なのでしょう。冒頭から、一瞬にして様々な妄想を読み手に想起させる仕掛けは、見事!一気に物語の中に引きこまれていきます。

見どころ満載シーンの中で、№1に輝いたのは【次元の男泣き】の場面。それでは、そのシーンから、じっくりどうぞ!

ワルサーP38を形見分けするシーン

  • 五ヱ門:なに?おぬしの形見?
  • ルパン:(銃を差し出し)オレの愛用したワルサーP38 だ。どうか、オレが消えた後も、オレのことは忘れないでくれよな。(顔を見合わせる次元と五ヱ門)ヤツのタイムマシンは、今頃、オレの【ひいひいひいひいひいひい爺さま】のぐらいっとこに現れてるってよ。ンアー、今日で俺もおしまいか!(と、水槽の前まで歩いていくと、ルパンが忽然と消える。)
  • 次元&五ヱ門:あっ!消えた!
  • 次元:オイッ、五ヱ門。おめぇなんだって助けてやらなかったんだよ。(と、五ヱ門の胸ぐらを掴む。)
  • 五ヱ門:お前だって、一体何をしてやったというのだ。
  • 次元:あぁ、ルパン、ルパンよ。(と、テーブルを両手で叩き、突っ伏す。)
  • 五ヱ門:次元、泣くな。この敵はきっと俺がとってやる!
  • 次元:ばかやろう!相手は四次元だぞ!29世紀だぞ。せいぜい江戸時代のおめぇになにができるってんだ。江戸時代で始末がつくなら、ルパンだって自分でなんとかしてたよ。(と、泣く)
  • ルパン:なるほど江戸時代か…へぇ。(と、ルパンの姿が。)イイこと言ってくれるぜ、お二人さん。おかげでオレは名案を思いついちゃった。
  • (驚愕した表情を浮かべて)ルパン…。(次元の頬を涙が伝う。)
  • ルパン:エヘヘヘ。いや、なにね。オレが死んだら誰が悲しんでくれるか、心配だったもんでな。ちょっとそのぉ、隠れてみた。ンフフフフ。
  • 次元:(あっけにとられた表情から一転)このぉ、ルパン!

いかがでしょう。何度みても、次元と五ヱ門のルパンに対する友情に、ジーンと胸が熱くなります。特に、次元の感情表現は、実にストレートです。次元がこんなに泣くなんて、誰が予想したでしょう。ルパンとの相思相愛ぶりに気づいてはいたものの、次元が泣くとは驚きです。とっつぁんにも、引けをとらない男泣き。

さて、次元と五ヱ門、ルパンを失ってしまった直後の反応は【真逆】です。次元は【外から内】へ、五ヱ門は【内から外】へと感情が向かいます。

次元の行動は素直で〈ハチャメチャ〉です。やり場のない想いを、自分の行動棚上げで五ヱ門にぶつけていきます。そして、泣く。自分の感情に浸っていきます。一方、五ヱ門の心は静かです。しかし、悲しむ次元をみて、自分が敵をとる!と、ばかりに感情は比較的ゆっくりと動き出し、次のアクションでは、標的が魔毛という人物そのものに向かいます。とても興味深いシーンです。

ここで、注目したいのは2人の性質です。次元は、やはり風主体の性質をもつ人。今作では、黄金像を盗み出すための下調べを完全に行ったり、魔毛狂介の正体を調べたりするシーンに、次元の性質がわかりやすく現れている。そして、水の性質も併せ持つ。この感情豊かな部分も、今回の男泣きのシーンで再確認できたと思います。外(風)から内(水)へという表現は、納得です。

次は五ヱ門です。私は、以前、五ヱ門の性質を土がメインで水の性質を併せ持つ人と考えました。水も土も受容性が高いという特徴があります。五ヱ門の心の動きは、次元に比べると冷静で出遅れた感じがあります。もちろん、ルパンが消えて、驚愕、無念といった様々な感情が五ヱ門の中には交錯していることでしょう。ですが、次元の主体性に対して、受容の姿勢が顕著で、表現は慎重です。そして、次になにをなすべきか、自分が具体的にできるアクション、〈敵討ち〉という行動に気持ちが向かいます。土主体というのは変わらない。けれど、もしかしたら、水よりも火の性質が強いかなーと思うシーンも、無きにしも非ず。今のところ、保留中。要検討です。

次元は、他の作品で、眼に見える現物、〈形あるもの〉じゃないとしっくりこない…とか、目の前に積み上げられた〈お金〉に強い意識が向かうときがあり、土の資質を彷彿させるようなシーンもみられます。次元が執着するもの、頑なに守ろうとするものが、何なのか…この辺りを、今後も検証していこうと思います。

ルパンの〈誰が悲しんでくれるか、隠れてみた…〉という行動は、4元素全ての想いが表出された結果、実行されたアクションであると感じます。次元の理屈【江戸時代】が相手ならルパンも自分でどうにかできていた!という台詞も実に面白い。そして、まさかの【江戸時代】が決着の肝になっていくのですから、ワクワクします。自分の中の想いやアイデアを即実行できる人は、多くないと思うのですが、この辺りの〈茶目っ気〉たっぷりの行動力が【ルパン三世】の真骨頂を発揮する世界観に通じているのではないでしょうか。 

 

不二子と一緒に出かけるシーン

  • ルパン:なんだ、不二子ちゃんか。
  • 不二子:(ナイフを投げ返して)なんだとはご挨拶ね、ルパン。あたしがせっかく会いに来てあげたっていうのに。
  • ルパン:あんがと。
  • 不二子:なんか変ね、いつものルパンじゃないわ。
  • 次元:そっとしといてやんな、不二子。ルパンもな、今度ばかりは、ちっと真剣なんだ。
  • 五ヱ門:【四次元空間】を飛び回る男が相手ではな。魔毛狂介だ。俺たちだって怖い。

と、ルパンは、扉に立っている次元と五ヱ門に向かって、ナイフを投げつける。

  • ルパン:オレがいつ【怖がった】っていうんだ、冗談じゃねぇ。(と、次元と五ヱ門に近づき)あんなキチガイの脅しにのるとでも思ってんのかよ!と、地団駄を踏む。不二子ちゃんおいで!(と、愛車で出かける。)
  • 次元:どうするね、五ヱ門。
  • 五ヱ門:んー。

不二子は、さすがです。すぐにルパンの不調を見抜きます。そして、次元と五ヱ門の【ルパンの不調】を説明する言葉はユニークです。次元は、軽やかに。五ヱ門は、慎重に。ですが、慎重に発したはずの五ヱ門の言葉の【怖い】というワードに、ルパンは過剰に反応します。核心をつかれて、子どものようにダダをこねるルパン。次元や五ヱ門の前では、自分の感情を隠そうとしても隠しきれないことを知っているので、こういう態度がとれるのだと感じます。

人間臭さが全開のルパン。気晴らしには、デート一択。不二子に甘えて癒してもらうのか…と思ったのですが、ここには、ルパンの直観的ヒラメキと目的を達成するための意図がありました。こういうところにゾクッとします。目的を達成するためには、手段を択ばない姿勢、ルパンの怖さがよく表現されている。そして、そのルパンの【意図】は、教会前でのシーンにつながり、魔毛の言葉の中で明かされていきます。

 

教会の前で、不二子に求婚するシーン

  • 不二子:(いたわるように)ルパン…。
  • ルパン:悔しいけど、どうしようもないらしいや…ん。(と、うなだれて不二子の方に歩み寄る。)不二子よ~。(と、座り込んだまま、不二子の腰に手をまわして頭をうずめる。そのとき、教会の鐘がカラ―ンと鳴りだす。)不二子、オレと結婚してくれ。
  • 不二子:えぇ~!
  • ルパン:オレの命、あと3日しかない。最後の頼みだ。(と、不二子の二の腕を両手で掴む。)なぁ、たのむ。式だけ挙げてくれ。たのむよ、不二子。お願い。(と、不二子に向かって手を合わせる。)
  • 不二子:そんなに、私を愛してたの?
  • ルパン:(不二子の髪に触れながら)あぁ!
  • 不二子:わかったわ、OK!
  • ルパン:(ルパンは口角をあげて)イヨッ!ほんとか!(と、自信にあふれたいつものルパンの顔を取り戻す。)よーし!善は急げだ。そこの教会でやろうぜ!オレ、牧師に話しつけてくるわ。ウフフフ。(と、教会へと駆け出していく。)ヤッホー!(その後ろ姿を複雑な表情で見守る不二子。)よーぅ!不二子、話はつけたぜ!と、陽気に手をあげるルパン。
  • 不二子:あの人、本当に私を愛しているのかしら。(と、つぶやく。)

不二子はさすがです。ルパンの【結婚の意図】には気づいていませんが、ルパンの行動の違和を素早く察知しています。この辺りの敏感な反応に〈風〉の性質、自己を取り巻く環境の変化を直観的にキャッチする、という本質がみてとれると思います。

この後、不二子を連れ出した最終的な意図は、魔毛の台詞によって明かされます。『甘いぞ、ルパン。峰不二子はうまく騙せても私はそうはいかん。不二子と式をあげれば、なんとかルパンの名前はあの女が継いでくれると考えたんだろうがな。甘い、甘い。』まさか、こんなことまで考えていたとは…!〈名実両方〉手に入れたい欲張りなルパン。さすがです。自分の代でルパン一族の血筋が途絶えてしまうことも、プライドが許さないのでしょう。

ひとつひとつ順を追って、検証したい内容が満載の本作品。〈あらすじ2〉の場面では、銭形警部がルパンに対する熱い想いを詳細に明かしてくれます。今までの作品でも、ルパンを追うことが銭形の生きがいであることは見て取れましたが、宿敵(初老の男に変装したルパン)の前で、その本音が堂々と明かされる。こういう場面は、これまでの大隅作品では、みられなかったかもしれません。

ルパンが第4話で、銭形に捕まり刑務所に監獄されたとき、銭形のルパンに対する想いは明確に描かれていますが、あのときは、銭形警部がひとり苦悩する姿が印象的でした。ルパンと銭形警部の関係性を【宿敵】として描いた場合の例をひとつとってみても、これだけ表現は変わるのですよね。今作には、制作側の描き方の対比が見え隠れするシーンを探す面白さがあり、個人的に、非常に興味深い作品です。敵役として登場する魔毛狂介の自信に満ち溢れた登場シーンと、圧倒的にひと皮むけてかわいらしく逃げていく最後のシーンの対比も、痛快で楽しい。 

さらには、13話の特徴に【笑い】の効果が隅々まで行き届いている場面が顕著に登場するということがあると思います。これまでも、敵役がニヒルに笑うシーンは、たくさん登場していますが、〈あらすじ6〉のルパンの台詞に見られるように、1つのシーンでこれだけ笑いを演じ分けるという演出はなかったのではないでしょうか。ルパンの余裕のなさ、焦りを笑いによって表現する。ルパン三世というキャラクターが持つ明るさの本質を崩すことなく、笑いの変化によって、より切実な感情を表現する。素晴らしい演出だと思います。

私に語彙のセンスがないので、笑いのバリエーションが限られているように思えるかもしれませんが、実際に、今作で笑いがもたらす陰影の効果は、とても深いものがあります。ですから、笑いの表記をあえて残すことにしました。ご了承くださいませ。

というわけで、驚くほどに長くなってしまった第13話。次回からは、もっとサクサクとまとめて、進みたいと思います。14話も思いがけない演出が隠されています!お楽しみに。

 

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以前の記事で、火・風・水・土の4元素の特徴について、触れました。ザックリまとめると以下のとおり。今後も、登場人物の特徴をタロットカードに当てはめながら、遊んでみたいと思いますので、よかったら、参考にしてください。

 ◆4元素図(火・風・水・土)

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

Kohyuzu(こうゆづ☆)

LUPIN THE THIRD FIRST TV『012:誰が最後に笑ったか』黄金の姉妹像は誰の手に?

ご訪問ありがとうございます。Kohyuzuです。ルパン三世のテレビシリーズを第一話から見直して、ただ感想を書くというだけの試みの12回目。10作目より、Secondシーズンに向けて〈徐々にテコ入れがはじまったよ…〉というエピソードが登場。第12話は、緑ジャケのFIRSTシーズンを手掛けた【大隅正秋監督の世界観】が色濃く残る最後の作品ともいわれています。名残惜しさを味わい尽くして、楽しんでくださいませ。それでは、ルパンの元へいってみよ~!

 

第十ニ話『誰が最後に笑ったか』(1972年1月9日放映 / 脚本:鶴見 和一)

〈登場人物〉ルパン・次元大介峰不二子・ハヤテ・クマゾウ・スミト 

冒頭、荒れ狂う風、吹雪舞う白銀のとある集落。爺さんが柱に括りつけられている。シンジケートの一味である【ハヤテ】は〈早い者勝ちとはよくいったもんだ。悪いがタダでもらっていく〉と、村の唯一の財産である【姉妹像】を爺さんから略奪する。

  1. 〈そろそろ、ひきあげるか…〉と、そのときハヤテの背中越しでカタッと音がする。そこには【峰不二子】の後ろ姿があった。〈追え!追うんだ。〉とばかりに、追っ手は、スノーモービルで逃走する不二子を包囲するが、一瞬のスキをつかれて、対になっている姉妹像の片方をまんまと持ち去られてしまう。〈失敗だと?スミト、女を取り逃がしたというのか。ちきしょう。あの女さえいなければルパンを出し抜けたのに。〉と、悔しがるハヤト。爺さんこと【長老】は、その様子をみて大笑い、ハヤテにパコッと殴られる。雪原を踏みしめ歩く不二子。コンパスを頼りになんとか塒の洞窟へ到着する。そこには、温かい焚き火とルパンが待っていた。〈こんなところで会うなんて、ついてるよな不二子。〉と迎えるルパン。
  2. その頃、像の1つを奪われたハヤテは組織に指示を仰いでいた。今回の仕事の目的は、組織の財政難を解消すること。本部から〈君を選んだのは、実力ナンバーワンと思えばこそ、その期待を裏切らんでくれ。〉と言われ〈よくわかっています。しかし、現実の問題として作戦実行上、人数が足りません〉と増員を依頼するハヤテ。連絡を終えると、振り向きざまに斧を投げて〈失敗したものは自分の死をもって償う。それが組織の掟なんだ。〉と、敵を取り逃がしたスミトを殺す。フハハハハと笑う長老。ハヤテは〈それほど、おれの失敗が面白いか〉と、再び長老を殴る。そして〈像の1つや2つををめぐって殺し合うのがくだらん…〉と笑った長老に、作戦に協力するよう迫る。像を狙ってやってくるルパンたちを待ち伏せする作戦だ。部下のクマゾウに〈周囲に罠をかけて、やつらの動きをみはる。失敗は許さんぞ。いいな。〉と指示する。
  3. 吹雪の中、双眼鏡を片手に敵陣を偵察する次元。増員がやってきたのを見届けると〈あー、奴らが絡んできたとなると、今度の仕事も面倒くせぇことになるな。ハヤテは、直情型のバカだから。なにをしでかすかやら。〉と敵を撒きつつ、洞窟へ戻る。洞窟では、ルパンが横たわっていた。その姿をみて〈やれやれ。不二子、貴様やったな。〉と次元。〈冗談じゃないわ。勝手に寝てるだけよ。大事なパートナーをやるわけないじゃない。〉と不二子。訝し気に〈パートナー?おいっ、ルパン、起きるんだ。おいっ、ルパン。〉と、ルパンの頬をペチペチ叩く。次元は、ルパンの目くばせに気づき、ニヤリと笑うと、不二子の銃をけ飛ばす。〈悪く思うなよ。〉と不二子を縄で縛り、裏口から出ようと歩き始めたところに〈あらっ?〉と、そこには手榴弾が…。〈ヒェ〜、逃げろ!〉と駆けだす。〈あいつらをイぶりだすんだ!〉と、息巻くクマゾウは、次々と手榴弾を投げ込む。
  4. 翌朝、ルパンは1人、村へと向かう。次元は、敵の見張を倒しながら〈言わんこっちゃない。おいおいと1人でヤツのところに行こうなんて。自信過剰だよ、ルパン。〉と呟く。なおも、袋を背負ってゆるゆる歩くルパンを眺めて〈おい、完全に包囲されちまってるぜ、ルパン。なにをグズグズしてるんだ。早いとこ、盗めばよかったのに。〉と独りごちながら、ツッコミを入れる次元。

    ーーー次元の脳内回想シーンーーー『ルパンともあろう大泥棒がいつも盗んでばかりいちゃつまんねぇ。相手は売りたいって言ってるんだ。ご期待にこたえて、買ってやろうじゃねぇか。』〈イイ格好のしすぎだぜ、ルパン。〉と呟きつつ、言葉とは裏腹に楽し気な表情で、木の上からルパンを見守る次元。
  5. 長老の家に辿り着いたルパン。キセルをふかしている長老を前にして、札束を積み、交渉していく。だが、長老は、なかなか首を縦に振らない。ルパンは、〈これ以上、びた一文も出せない〉というところまで追いつめられたうえ、身ぐるみも剥がれる。ーーーそうだ、もっとルパンの奴からはぎとってやれ…と、扉越しに様子をうかがうハヤテ。部下は、なにやらルパンのスノーモービルに細工をしている。交渉成立し、とうとう姉妹像を手にしたルパン。長老が〈あぁ、これが姉妹像でな。後の一対は…〉と言ったところで、ルパンが袋から取り出したのは、不二子と対の姉妹像。〈これで揃ったわけだ。〉とルパン。不二子は、縄をほどいて〈騙したのねぇ私を。悔しい〉と外に駆け出すが、ジタバタしても外は大雪。〈そういうこと。洞窟で待っていたのも、すべて計算済み。最初から立てた計画だったのだ。フハハハハハ。〉とルパン。調子に乗って不二子を寝間に誘うが、いつものパターンでフラれる。
  6. 翌朝、寝過ごしたルパン。小屋には、柱にくくられた長老の姿があった。〈女は逃げおった。ワシをこんなにしおって。〉〈じいさん、すまんが、この服は返してもらうぜ。〉〈あぁ、いいとも。スノーモビルは物置じゃ。〉スノーモービルで立ち去るルパン。ここまでは全てハヤテの作戦通り。ハヤテに〈あの男にこんな小細工はきかんぞ。〉と長老。〈おまえには関係のないことさ。これは全て計算してあるんだ。こいつらを縛りつけろ〉と、再び、柱に括りつけられる長老と不二子。〈上手くいきました。ルパンは足跡を追って、天国へと直行ですよ。〉と報告するクマゾウ。〈よーし。これでルパンは確実に死ぬ。像二つ揃って組織のモノになる。ルパンの持ってきた大金となぁ。オレは組織の英雄になるという訳だ。フフフフ、ハハハハ。〉と、ご機嫌のハヤテ。一方のルパンは…爆破現場にいた。〈やることは派手だよな。なるほど、華麗なるルパン三世。〉と次元。〈メタボロ。〉と、ルパン。華麗なるルパンは、スノーモビルごと吹っ飛ばされても、木の枝にひっかかった洗濯物の程度の手負いで済むのである。
  7. 爆発を見届けたハヤテは〈ルパンは仕掛けといた爆弾で、木っ端みじんさ。なにかご不満でもあるのかい、不二子さんよ。〉と言い、不二子は〈気にならない?ルパンがそんなにあっさりやられるかしら。〉と応える。そのとき、外で爆発音が!ルパンの反撃の狼煙があがった。

    • 次元:(双眼鏡を覗きながら)ハヤテめぇ、だいぶ慌ててるぜ。
    • ルパン:不二子と長老は大丈夫だろうな。
    • 次元:いやー、心配ないって。ちゃんと外して攻撃してるんだ。ルパン、次はどういく?
    • ルパン:先の御礼をこってりと返してやらなきゃ。
    • 次元:よーし、集中砲火といこう!
      ♬ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパンルパンルパン♬

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • クマゾウ:やられた、こいつは全滅だ、全滅ですよ。
    • ハヤテ:こうなったら、こちらにも考えがある。
    • クマゾウ:ヘンッ。あんたの計画どおりやったら、このザマだ。一体どうするってんです。
    • ハヤテ:いいか、ルパンたちはせいぜい2、3人だ。こっちは残った連中集めて、スノーモービルや雪上車で、別々の方向に脱出するんだ。ルパンは手出しできないこと、間違いはねぇ。
    • クマゾウ:出来ますかい?
    • ハヤテ:できるとも、できるとも!出来なきゃ…責任をとるぜ。

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • 不二子:ルパンったら、長老さんがここにいるから狙いを外しているらしいわ。おかげで命拾いしたようね。
    • 長老:すまんが、ワシの縄もほどいてもらえんかな、お嬢さん。
    • 不二子:あらー、ごめんなさい。(と、縄をほどく。)
    • 長老:あんたの狙う像は、ハヤテがもっておるんじゃが、どうやってとるんじゃい。
    • 不二子:別にあの像は必要ないの。私の欲しいものはちゃんと抜き取ってあるから。(と、2枚の紙切れみせる。)
    • 長老:手早いのぅ。

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • 次元:どうやら、やつら強行突破の構えだぜぇ、ルパン。
    • ルパン:あぁー、違えねぇな、次元。それじゃ、徹底的に村からいぶりだしてやるか。出やすいようにな。
    • 次元:やー、そりゃいい。
      ♬ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパン・ルパンルパンルパンルパン・ルパンルパンルパンルパン・ルンルンルンルパン♬

      ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    • ハヤテ:地雷まであるとは…。
    • クマゾウ:ハヤテ、作戦は失敗したぜ。どう責任をとるんだい。スミトみたいに死ぬかい。
    • ハヤテ:ルパン、出てこい。俺と勝負しろ。この像は、絶対お前たちには渡さん。ちきしょう。最後の最後までオレをバカにしやがって。出てこい。
    • ルパン:ここにいるぜぃ。
    • ハヤテ:はっ…ルパン。
    • 次元:よさねぇか、ハヤテ。(背後で銃を構えて)なにも、そういきり立つことはねぇだろう。逃がしてやるぜ、ハヤテ。どこなりと行きな。
    • ハヤテ:クソ~~!!!!!
    • クマゾウ:失敗したものは、どうするんだい。えぇ?
    • ハヤテ:失敗したものは、自分の死をもって償う。それが掟だ。(と、姉妹像を持って、自ら炎の中に身を投じる。)

  8. 渋面でポケットに手を突っ込み、肩を落として雪原を歩くルパンと次元。〈いやぁ、ついてねぇな。とうとう黄金の像はバラバラ。隠し金山の場所も永遠に行方不明になっちまった。〉と次元。〈全くムダ骨な。〉とルパン。〈ちげぇねえ。〉そこへ、峰不二子スノーモービルが近づいてくる。〈不二子!そうだ、あいつがいたんだ。〉とルパン。〈ご苦労さまでした、ルパン。やはり、持つべきものは良きパートナーですね。おかげで金山の地図が手に入って私は大金持ちだわ。じゃーね!〉と不二子。〈このやろう!〉と次元。〈まった、だましやがって!〉とルパン。走り去る不二子のスノーモービルにロープををひっかけ、〈俺は決してこの手を放さんぞ。〉〈そうだとも!〉とルパンと次元。〈いつまでもつか試してあげる〉と、速度をあげる不二子。〈もう、やめろ。やめてくれ、不二子ちゃーん。あらぁ、あれぇー〉と、ロープごと宙に舞うルパンと次元。-----その様子を、一部始終眺めていた長老の手には、金山の【地図】と【大枚の入った袋】が…。地図は、あらかじめ本物とすり替えてあったというオチ。長老の乗ったソリから、〈リンリンリン♬〉と軽やかな鈴の音が響いてくるのでありました。おしまい。

  

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◆こうゆづ的*第十ニ話の№1シーン

一部始終を眺めていた長老の最後の一言に決めました。〈やっぱり、最後に笑うのはワシじゃったな。金山の地図は、前もって偽物とすり替えていたし、金もそっくり手に入って。まぁ、これからは、老後をのんびりと暮らすか。それっ〉と、ソリを走らせる。【すべてお見通し】と言わんばかりの長老がまとう飄々とした雰囲気が、なんともいえないイイ味を出している!〈おぬし、策士じゃな…〉と思わずツッコミたくなる。私は、年の功の【知恵】と手堅い【狡猾さ】が冴えるこの作品のオチが好きです。

冒頭から、長老には【タダ者ではない】雰囲気が漂っています。物語は〈ルパンたちVSハヤテ率いる組織〉という構図で【姉妹像と金山の夢】を追いかけ進んでいきます。ところが実際には、若者たちが知恵をひねって、くりだす作戦は、おしなべて長老の手のひらにヒョヒョイと吸収されて、ただ、転がされているような感じにみえてきます。

『あれれ?結局は、長老が仕掛けた罠だったのか!』という具合に、いつの間にか、目の前の景色が変わっていくのです。この路線は、やはり高畑&宮崎コンビのコミカルタッチが細部にひかる演出のなせる業だといえるでしょう。バックコーラスのようなルパンルパンルパン♬の挿入も、テンポよく楽しい。

一方で、敵対役のハヤテの生き様は、とても対照的です。命をかけて組織に尽くし、散っていくという【神風特攻隊】のような最期。この辺りは、大隅監督の芯を貫く【男たるもの!】という、ハードボイルド的な演出がみえてきます。まさに、大隅監督自身の境遇を投影したような渾身の演出ではないでしょうか。なぜなら、テレビアニメのスタートから、自分が手掛けてきた我が子のような『ルパン三世』を、高畑&宮崎コンビに引き継ぐという現実が目の前にあるからです。ハヤテの最期と大隅監督の心中が重なって、なんとも複雑な感情が溢れだす。心にグッと迫りくるものがあります。

この作品を最後に、大隅監督らしい演出は徐々に影を潜めていきます。私は、大隅監督の演出の切れ味は、特に【次元大介】というキャラクターを通じて、体現されていたように感じます。お人好しで、器用貧乏で、笑いを忘れないユーモアを併せ持つ次元という男。もちろん、原作はモンキー・パンチ先生ですし、テレビアニメのための脚本家がいます。ですから、監督は、ある程度決められた枠の中で自分の色を打ち出す演出を出掛けていくことになります。

2019年の今もなお、次元というキャラクターの雰囲気が、少しもブレずに確立されていることに、ルパン三世というアニメーションのスタートを手掛けた大隅監督の【情熱と志】を強く感じて、温かい気持ちになるのです。声優の【小林清志さん】が次元に惚れ込んで、86歳の今も現役で演じていることにも、なにかとても運命めいた絆を感じます。考えすぎでしょうかね。ウフッ。妄想は自由ですものン。

それでは、最後に、大隅監督と高畑監督、新旧の対比が鮮烈な【ハヤテVS長老】の台詞をいくつか記してみます。

◆不二子を取り逃がしたスミトを殺すシーン

  • 長老:(ハハハ…と大笑い)

    別に面白いわけじゃないが、くだらんことだと思っておるよ。たかが、像の1つや2つをめぐって殺し合うとわな。

  • ハヤテ:そういうお前はなんだ。像を買いたいという俺たちの足元をみやがって、2倍3倍と値を吊り上げやがった。
  • 長老:姉妹像は、この村に残ったたった一つの財産じゃ。できるだけ高く買ってもらわんと、割りにあわん。それがこうして盗られたんじゃ、元も子もなくなるでな。
  • ハヤテ:ケッ。口のへらねぇ、じじいだぜ。いいか、クマゾウ。像はふたつないと意味をなさん。長老さんよ、芝居は、まだこれからだな。えー?【最後に笑うのは誰かな。】
  • 長老:【ワシじゃないかな。】(と笑い、またもハヤテに殴られ)いてっ。

 

◆ルパンを待ち伏せ、罠にかける作戦に協力したシーン

  • 長老:約束が違う!
  • ハヤテ:手伝えといったが、助けてやるとは言ってねぇんだ。あいにくとな。

◆作戦通りにルパンをやったと喜ぶハヤテに、不二子が異を唱えるシーン

  • 不二子:気にならない?ルパンがそんなに、あっさりやられるかしら。
  • ハヤテ:このオレのやり方にケチをつけるのか。
  • 長老:別にそういうわけじゃないじゃろう。(助け舟をだすと)
  • ハヤテ:やかましいやい、長老さんよ。あんたは口数が多いんだ。(と三度、殴られる長老。)いいかい。姉妹像も金も全部もっていくから、そのつもりでな。
  • 長老:そ、そんな。話が違う。ワシにも協力したら【分け前をくれる】といったじゃないか。
  • ハヤテ:それがダメになったのさ。俺はバカにされるのが一番気に入らねぇんだ。
  • 長老:年寄りを騙すとロクなことはないぞ。


 【長老とハヤテ】、二人の男の生き様を対比させることで、登場人物たちの個性はイキイキと輝きを増しています。キャラクターの持ち味を生かしつつ、諸行無常的な人生の末路、一獲千金的なロマンの希望と儚さをしっかりと描きだし、そのどちらもが狙い通りに成功しているように感じるのです。

そして、タイトルになっている台詞【最後に笑うのは誰かな】は、ハヤテが長老に投げかけ、最終的なオチで長老が見事に回収していきます。作品の裏側にあるメッセージ性を読み手に意識させるような演出の仕掛けが効いていて、味わい深い作品だと思います。妄想は尽きることがありませんが、本日はこの辺で。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。 

Kohyuzu(こうゆづ☆)